鞭展開度:★★★★★
お狐様の人間くささ:★★★★★
雪緒の人間くささ:★☆☆☆☆
【あらすじ】
「俺の懐にいれば、誰にも奪われずにすむ……」
もののけたちの世界で薬屋を営む雪緒の元夫は、郷を治める白狐・白月。彼の望みを叶えるため恋の成就をあきらめ尽くす雪緒だったけれど、恋心を自覚した白月は雪緒を己の狐里に連れ込んで引きこもってしまう。そんな中、囲われた雪緒のもとをある客人が訪れてーー。
狐の胎の内におさめられてしまった元嫁と、恋狂った大妖の攻防の行方は? お狐様との異類婚姻ラブ第7弾!
待ちに待ったお狐様最新刊。どんどん恋が笑えない展開になってまいりましたぁ……( ̄▽ ̄;)
でありつつ、今回も異世界らしい摩訶不思議さ、人外らしい残酷さ、などなど読み応え満点でございました。次回もどうなるのか、楽しみ過ぎる!!!
以下ネタバレあり↓
やっぱどんどんお狐様が主人公に移行していってるな? というのが今回の印象。
私の中で、「糸森環作品は主人公の恋心が砕け散ってからが本番」という認識があるのですが、それは雪緒じゃなくて白月なのでは。。。
よくよく考えたら、タイトルも『お狐様の異類婚姻譚』って、雪緒視点じゃなくて白月視点なんですよね。
そんなワケで、白月がこれから粉々に砕け散った恋の上を裸足で踏みしめながらがんばるんだと思います。……がんばれ、白月。
にしても白月の自業自得とはいえこんなにもかわいそうになってくるとは。。。雪緒の傀儡の死体を前にした時の白月の動揺ぶりが本当に見ていて辛かったです。そして雪緒が自分を殺したのが白月だと思い受け入れていることも。
いや殺ったの藁成りって言えばいいのにィ!!!!!!(汗)(汗)(汗)
……などと単純な私は思ってしまうのですが、彼のことを明かすワケにはいかなかったのか本当に動揺していてそんな選択肢が浮かばなかったのか雪緒が信じてくれないと確信したが故の絶望なのか。
雪緒だったらアレが白月じゃないと気付けると思ったのですが、……何かやっぱり……凍りついた恋心がそうした冷静な判断をも狂わせるのかな……。どこかでそうした一文があったハズ。
何だかどんどん白月が人間くさく、雪緒が人間くささから遠ざかっていってるような気がします。糸森先生の描くこうした傷付き揺れる心の描き方が、苦しくも強烈な魅力であふれているなぁと。
さてそんな人間くさくなくなってきた雪緒、白月への恋故に他者からの恋を利用する狡猾さを見せ始めます。
……狡猾さ、と容赦ない言葉を使わせてもらいましたが、雪緒はそのずるさを分かっていて、ためらいや罪悪感も生じるけれどもうこの道に決めたから使わせてもらう、というように、彼女なりの良心が残っていたり聡かったり最後の最後で潔いみたいな描き方がいいなと思っています。
自分に向けられる好意に気付かないフリをするとか、気付かないくらい鈍感だという描き方をしないところも新鮮かつ好感を覚えたりします。その一方でそりゃあお狐様の恋心に期待しなくなればそのあたりの判断も鈍るよなぁと納得もしたり。コミカライズで生き生きと白月への恋心を輝かせる雪緒を見ていると「(原作)遠いところまで来てしまったんだなぁ。。。」としみじみしてきます。
……その一方でコミカライズの雪緒の今後のすり減らし様がどんな風に表現されるのかも楽しみなところだったり(笑)。
糸森先生からは「恋に生首はつきもの」という新たな名言もいただきました(真顔)。by.一迅社文庫アイリスさん公式ツイッターからの糸森先生コメント。。。
さすが糸森先生、胸に深く刻んでおきます(`・ω・´)← ……な一方、何か……生首とか生きたまま貪り食われるとか骨や内臓が見えるほど体が抉れるとかそういう展開に慣れてきた自分もいるなぁ……(しみじみ)。どうやら遠いところまで来てしまったのは雪緒だけではないようです( ̄▽ ̄)
今回もいろいろ怖かったね!!!(汗)
古蜜が生きたまま貪り食われたのがもうもうもう……_:(´ཀ`」 ∠): 雪緒が助かったのはあの謎の麻布男に慈悲を見せたから。それが彼女自身の優しさというよりは薬師としての本能的なものであるのがまた納得みがすごい。
あと、子狐達も本格的にこわさを見せ始めたというか。。。前半で白月かわいそうというようなことを書きましたが彼や子狐がしっかり怪としてのこわさを見せつけてくれたからそりゃあ雪緒はもっと恋心を凍らせるよなぁと。
雪緒は恋する相手に期待しない、白月は本気で恋をしてしまったが故にこんなにも苦しい。これはもう由良さんしか癒しがいない(真顔)。
確かに恨み祟りを募らせているんだけど、それもめちゃくちゃまっとうな理由だしね!!! そりゃ狐一族全員憎みたくもなる。
あのあまりにも男らしいというかスパッとしているというか清々しいというか、口はめちゃくちゃ悪いけどとにかく雪緒や読者という我々人間が惚れずにおらりょうか(笑)。
耶花さんと由良さんは実は結構悪くない組み合わせなのでは? と前巻思いましたが、耶花さん!!!! この結婚、不服ではないんですね!!!!!/////
久々の甘酸っぱい流れにニマニマしちゃいました(。-_-。) ……もう雪緒と白月の恋に浮かれられなくなってきましたからね……(遠い目)。
しかし耶花もまた鬼ですし、由良は怪。このまま甘酸っぱいままとも思えず油断できない状態です。……やっぱり私も遠くまで来たなぁ……(苦笑)。
正直この巻で雪緒が白桜ヶ里の長としてスタートするんだと思っていたんですが、どうやらそれは次巻になる模様。しかし『お狐様』は毎巻思ってもみない方向に急ハンドル切るから本当にそういう始まりになるかも分からんしなぁ……( ̄▽ ̄;)
「藁成りが殺ったと言えばいいのに」と前述しましたが、それをいつ知るかが雪緒に新たな変化を持たせる鍵になるような気もしています。ますます隔たっていく人の子とお狐様の恋がどうなっていくのか見守りたい所存です。
あと新たな美丈夫(笑)・絹平が意味ありげなこと大分言ってたなぁ。。。ちなみにキャラデザめっちゃ好きです(`・ω・´) 糸森先生の文章を凪先生が絵で具現化するこの感じ大変楽しい(。-_-。)
糸森先生の描く和風ファンタジーのネーミングがとても好きです。今回”古蜜”や”藁成り”が結構好きでした。響きとか人間の名前っぽくなさそう感が。
次巻もひぃひぃ言いつつ、楽しんでいくんだろうなぁ……(笑)。……がんばれ、白月様。
余談。
あとがきでの「実はこうしてたらバッドエンドでした」秘話が結構楽しみになってきてる( ̄▽ ̄)