『お狐様の異類婚姻譚 元旦那様は元嫁様を盗むところです』(糸森環/一迅社文庫アイリス)

一迅社文庫アイリス

鞭展開度:★★★★☆
欺くは誰そ:★★★★★
死に絶える恋:★★★★★

【あらすじ】
「どうして、俺はいまも満たされぬままでいる?」
幼い日に神隠しにあい、もののけたちの世界で薬屋を営む雪緒の元夫は八尾の狐・白月。何かと復縁求めてくる彼の目的が別にあることに気付いた雪緒は、恋の成就はあきらめ白月に尽くすことを決心する。思い通りになったはずなのに、別里の長となり彼と距離を置こうとした雪緒に、白月は憤り詰め寄ってきて……!? 恋とは無縁のはずの大妖が恋狂い、元嫁を追い詰める? お狐様との異類婚姻ラブ第6弾!

待望の糸森環作品新刊ということでワクワクしながら読んでたんだけど……いやぁもう感情ぐっちゃぐちゃよ……www

様々な心の在り処に心臓かきむしられて、導き出される真実に肺を圧迫されて。……本当に、糸森環先生は無数にこうしたものを生み出してくれる。

「楽しかった」と軽々しくは言えない、けれど間違いなく読んでよかった作品。本当にありがとう。苦しいけれど、どうしようもなく面白かった。

 

以下ネタバレあり↓

 

 

 

本当に、ここまで降り積もらせてきた雪緒の恋心の使い方が上手いというか……www

こうも裏切る形ですべてが返ってくるのかと最早笑うしかなく。本当に、感服せずにはいられない。

 

表紙イラストがこれまたすべてを物語っていますよねぇ。。。

今までは、白月のことで表情を何かしら浮かべる雪緒だったり白月を見ている雪緒だったり。しかし今回は完全に白月を見ておらず白月がどこか苦しげに見ていることにも気付かず白月に触れられていることにすら無関心のような。ただ一心に、手にある花だけに視線を落とす。愛しげと言えればよかったんだけど、というよりは穏やかに心が壊れているような。

読む前からこの花、きっと雪緒の恋なんだろうなぁとは思っていたけれど、いざ読んでみるとそのことがさらに重みを増して迫り来るといいますか………………………………。

 

何だかもうすっかり悟りを開いていて白月にひとかけらも恋を期待しなくなっている雪緒に最初は「ホント白月様、日頃の行い……www」なんて笑えていたんだけど。

……ちょっとこれは雪緒の献身が過ぎる。

本当に白月の為に生きて白月の為に死ぬつもりでいる。まっさらな心でそれを決めている。それがあまりにも恐ろしい。

 

それに途中から雪緒が偽物になっていたなんて誰が思おうか………………………………。

結構そういうのは見破れるようになってきたと思ってたんだけどなぁ~(苦笑)。雪緒の夢に渡ってきた三雲が白月であることには気付けたつもりでいたけど、花を浮かべた川の夢は本物の三雲だったらしいし。禍月毘は絶対雪緒が知っている怪!→鈴音なのでは⁉ って思ってたら安曇の方だったし。……ここに来て安曇さんってのもしてやられた!って感じ。

私は読む前に挿絵をパラパラ全部見てしまうタイプなんだけど、まさかの涙する宵丸の挿絵に「これは恋狂うお狐様なのでは」って思ってたんよ。……そしたらこっちは本当の本当に宵丸さんだったし!!!!!!

何だかもう、本当に、一生敵わないなぁって、それが悔しいようなうれしいような。本当に、複雑な気持ちにさせてくれる。いやぁもう、糸森環作品には恋狂う一方ですよ(笑)。

 

各キャラクターにいろいろと思うところはあるんだけれど、最後の宵丸の吐露に全部持ってかれたところあるよなぁ。。。宵丸さん、本当に雪緒に恋をしていたんだね。それもずっと前から。

そして雪緒から恋を拒絶された宵丸の出す答えがあまりにも人外めいている。それは、苦しくはないのか。狂ってしまうのではないか。……いやもう既に狂っているのか。

多分お狐様4巻の感想記事で「雪緒はいずれ人をやめるのでは?」って予想してたんだけど、ピンポイントでそこを真っ向から否定されたな……www 果たしてこれは呪詛なのか。雪緒が天神になることは避けられる?? そんな考え方は甘い???

 

今回は本当に、各キャラクターの狂うかのような恋がふんだんに使われ、グッツグツに煮込んで煮詰めたような回だったなぁ。。。それこそ釜の中で。

雪緒が埋めた恋があまりにも苦し過ぎる。信心を差し出す様が痛々しく、不気味にも映り。頼むからもう傀儡なんて作らないで。一途に白月の駒であろうとしないで。

何というか、4巻のあの衝撃のラストあたりから白月目線でめちゃくちゃ読みたくなるよなぁ。。。今回白月目線で凄まじく胸が締めつけられた。主人公が白月に移ったように私は感じた。

三雲の恋が1番キラキラしてるんだよなぁ………………………………………………………………。どこかあどけなく、やわらかく。しかし彼も人の理では推し量れないこわさがあり。雪緒が傷付くのを恐れるクセに祟ってくるのスゴイな……( ̄▽ ̄;)

宵丸は、3巻で感じたこわさまでもを憐れまずにはいられない。あと宵丸に対する雪緒の答えは今まで糸森環作品読んできた中で珍しいパターンだなと個人的に思ってたり。

 

それと今回、シーンの切り方が妙ーーーーーにスパッとしてる印象が強かったかなぁ。。。

……いや、今までもそうでしたよって言われたらホントそれまでなんだけど……www 自分でもそんな気してるし、私自身忘れてること多しだし( ̄▽ ̄;)

特にだからどうということでもないんだけど、そのスパッと感に惹きつけるだけ惹きつけて素っ気なく手放されるような感覚を味わったので印象に残った話。そんな『お狐様』が嫌いでない(`・ω・´)

 

耶花さんが由良さんを覚えていておやって思ったけど、だからってこの婿入りは果たしてよかったのか………………………………………………………………。

雪緒にキラキラとした星を抱く三雲でさえも雪緒を祟っている。星を知らない、鬼である耶花が由良さんをどうするのかが分からな過ぎて怖い。

 

……んだけど、今回耶花さんかわいかったんだよなー!!!www

雪緒の料理おかわりしてるのかわいい。ていうかめっちゃよくお食べになられる。さすが鬼。

意外と実態が知れていない三雲も正直かわいかった。……くそう、人外のこわさに漏れなくかわいさも描く糸森先生が憎い……!!!www

ちまちま折り紙折ってたのは何だったんだろうね??? あれも何かの術なのではって警戒してたんだけど、特には触れられず。

あと雪緒の料理の味は……白月の黄金の駒になると定めたから味もおいしくなった……?

 

今回、雪緒の努力というか身を削った尽力により問題が解決したと思っていたら、思わぬ思惑がアレコレと絡み合って綾槿ヶ里ではなく白桜ヶ里の長におさまりそうな雪緒。いやもうホントぐっちゃぐちゃよ。

でも何か本当、今回の思惑に絡んだキャラクター目線全員書いてるんじゃないかってぐらい納得もでき。相変わらずお見事。

白月目線に胸を引き絞られるような思いがした一方、彼は正しく御館なんだな、とも思ったり。

怪らしい自分本位な願い、雪緒へのどうしようもないほどの恋だけでなく。もっと自分の激情に従うのが彼らだと思っていたから、潰れた雪緒(傀儡ではあったんだけど……)を前にあれほど御館たる態度を貫き通した白月は正直見直した……って言い方で合ってるのかな。一目置いたというか何というか。

 

それと今回、思いがけず白月と宵丸それぞれの正体が分かったのがかなりのビックリ。……怪だとしか認識してなくて正体が別にあるなんて考えもしなかったので。

そしてそして、白月が何故それほど高みを目指すのかも知るところとなり。これがまた人間くさいならぬ人外くさい。

まさか鈴音が頂点に立つべきだったなんて思いもしなかったよ……!!! しかしここで1巻での鈴音の執着により一層合点がいくところも。

……ヤバイ、ちょっと前巻の鈴音ルートが恋しくなってきた……www

 

何だかシリアスにばかり目を向けた感想が続いたので、もう少し軽めのことについて感想をば。

 

今回読んでてようやっと気が付いたけど、神隠しで怪達の生きる異世で生きる雪緒、その更に異界によく行くよな……www 何ともややこしい( ̄▽ ̄)

挿絵は、白月がふてくされて雪緒に膝枕してもらい、雪緒が何やら悟り笑顔で鬼達に説明しているらしきイラストがめちゃくちゃ面白かったwww 三雲と耶花の冷めた目がまたいい。あと左の鬼は多分土潭だなぁ!?!?www 凪先生の貴重なギャグ顔にウハウハでした(`・ω・´)

今回の新キャラ六六はキャラが濃いなー!!!www しかしかなり気に入りました(。-_-。) 雪緒は綾槿ヶ里を去ることになったから、しばらく会えないかなぁ……? 是非是非キャラデザが見たい。

井蕗さんは今回もかわいいなぁ!!!(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾

 

4巻で「挿絵が1ヶ所右になってた問題」を上げたんだけど、今回も2ヶ所あったんだよなぁ……!!! 最初に挿絵見ててピャッてなっちゃった(笑)

……まぁこれに意図があるかは分からんのだけどね( ̄▽ ̄;) どうも『お狐様』を読んでると懐疑心が膨らむ膨らむ。。。ちなみにどっちの挿絵も白月の恋を表したようなものでしたね。

 

この尊い新刊を私はコミカライズ4巻発売日に買って、そっちを先に読んでから原作の方を読んだワケなんだけど、この順番は正解だったなぁ!!!www 結構コミカライズ4巻(原作では2巻)の内容でおさらいしておいたのが原作6巻で役に立ち。。。完全に「あっコレ〇研ゼミでやった!」状態であります( ̄▽ ̄)

コミカライズの雪緒はまだ恋心がキラキラしていてまぶしいなぁ。。。(遠い目)是非いなる先生の表現する恋を埋めた雪緒を見たい。

 

それと今回実は設楽の翁がいたってのが本当に衝撃的でしたね………………………………。心臓めっちゃドクドクしたよ。

雪緒を潰した神ではなさそうなのがまだ救いだけど。。。

 

次回、さらにどうなるか分からなくなってきた『お狐様』。だからこそ本当に楽しみでもあり……!!!

狂いゆく恋の行方を最後まで見守りたいと改めて思った新刊でした。

 

余談。
恋奈利祭でちょっと『花神遊戯伝』思い出してニヤッとした(笑)

 

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