『ベアトリス、お前は廃墟の鍵を持つ王女』(仲村つばき/集英社オレンジ文庫)

集英社オレンジ文庫

鞭展開度:★★★☆☆
女王覚醒度:★★★★★
隙のある笑顔:★★★★★

【あらすじ】

私は嵐になる。この国を血で染めないために。

王族による共同統治が行われる国イルバス。王女ベアトリスは王宮を離れ、辺境で工業生産に明け暮れていた。尊大な兄アルバートと狡猾な弟サミュエルに挟まれ、二人の対立を回避するために引きこもっていたのだ。だが周辺国の情勢が悪化し、ベアトリスは政治的決断を迫られる。彼女の手には、賢帝と名高い祖母から受け継いだとある「切り札」が握られていた……。

『神童マノリト~』を読んで、初期のベアトリスを思い出して感慨深くなったので読み返しとりました(笑)

以前読んでるのでサクッと感想にする予定だけど普通に最初から最後まで読んだから長くなるんかな……www

改めて読み返すと未来のエピソードとつながってますます面白かったです(。-_-。)

 

以下ネタバレあり(ここまで刊行されている廃墟シリーズ(~『神童マノリト』)までのネタバレも含みます)↓

 

 

 

『神童マノリト』でのベアトリスは既に女王として定まっていて、まだまだ未熟な王杖エスメからしたら理想の女性像。

……そんなベアトリスを見ていたら、「初期はもっと揺らいでいたよなぁ……」と感慨深くなり読み返しておりました(笑)。中間子という微妙な立場に立たされるベアトリスの苦悩は読み返していて「懐かしい……!!!」という感じで。

 

祖父から託された廃墟の鍵がもたらすものに怯え、兄と弟の争いが激化することを恐れていたベアトリスが、アルバートを前に感情をあらわにし、サミュエルに本心を伝えることで女王としての意志を固めるのが印象的だったなぁ。。。どっちか片方とそうしたやり取りをしただけでは、ベアトリス女王はここまで定まらなかったんだと思う。

それでいて、王族同士ならではの醜い争いばかりかと思いきや、サミュエルは愛情の示し方が分からなくて突っかかっているだとか、アルバートは自分の支配下に置くことが彼なりの愛情だったりとか、ただ自分が唯一の王になりたいワケじゃないのがものすごくグッとくる。

でも多分、人の根底にあるのってそんなささやかな願いに過ぎなかったりするんだろうなぁ。。。自覚がない場合がきっとほとんどで。寂しいからだとか、褒められたいとか、本当にそんな小さなこと。

 

けれどそれだけじゃ済まないのが王族でありイルバスの兄弟共同統治のやり方なワケで。

ベアトリスがサミュエルに投げかけた「愛すべき敵」という言葉が印象的だった。共同統治という変わった統治をするイルバスで、この3人の兄弟だからこその言葉なんだと思う。

家族モノに弱い+王族としての覚悟みたいなのにも弱いから刺さりまくりでした……最高かよ廃墟シリーズ……(とはいえアデール世代のピリピリした姉妹の感じも嫌いではなかったり)。

 

ギャレットやサミュエルにとっても成長というか、鳥かごから飛び立つ展開なのも好き過ぎた。

廃墟シリーズって、どの主人公も悩んで、立ち止まって、そして他人という外の世界の者に触発されて覚醒していくって感じで本当に好き。トリガーが他者への愛情なのもすごく格好いい。初めから覚悟が備わるなんてことはなく臆病なところが人間くさくて。でも覚悟を決めたからには誇りをもって立ち向かう。どちらの面も大好きです。

その点アルバートは異端児だよなぁ~(笑)。最初から覚悟が決まっててそれだけ肝も据わってて。男なのに勘が働くとかスゴ過ぎん!?!?www だからこそ後々クローディアに拒否られて動揺するところがめっちゃ効くっていうか……!!!

 

自分の中の意志が定まる瞬間、覚悟が決まる瞬間の言葉が廃墟シリーズは特に好きです。ものすごくシンプルに胸にストンと落ちてくるというか。それでいて胸の奥底にまで響いて、これからを読むのがもっと楽しみになる。

世界は自分の手でしか作れない。鎖をひきちぎり、進んでゆくほかないのだ。

『ベアトリス~』だとコレが特に好きだなぁ。他にもいっぱいあるんだけどキリがないからカットで(笑)

 

私がこの話を読んでいる時点で『王杖よ~』が発売されていて、そっちのあらすじも読んでいたワケなんだけど。

ベアトリス編でのサミュエルが思ってたんと違くてかなりビックリした(笑)。

ルークが爪先にキスしてきたのを蹴り上げてケラケラ笑ってんの普通に怖過ぎ……そしてサミュエルが本当に姉を愛していて未熟な王子で人間くさい弱さを知った後はルークがこっわ過ぎて……_:(´ཀ`」 ∠):

どうやら次の話でエスメがサミュエルの王杖になるんだろうけどじゃあ今いるルークは一体……? と思ってたらまさかサミュエルの手で殺されるなんて誰が思おうか。

……いやぁ……アデール編みたく露骨な暗殺だとか長尺使っての戦争シーンがあったワケじゃないけど、これはこれで何か生々しいものを感じたわ……。そしてそんな怖さも含めて面白かった。

 

あと個人的に大好きなシーンはベアトリスがピアス子爵から「あなたの笑顔には隙がない」と指摘されるシーンですね(笑)

正直これは女である私にとっても目から鱗だったなぁ。仲村先生、女性なのに何でそんなことが分かるの⁉ ……と訊きたいぐらいww

可愛らしく笑顔で返しているつもりだと主張するベアトリスに「あ、そうだったんですか」と返すギャレットが最高過ぎるwwwww 「もういいからお前は黙れ」もいいなーwww

ギャレットの前では隙のある笑顔でいられるって後から知るのまで含めて最高ですね(。-_-。)

 

……で、明らかにサクッとしなくなってきたのでそろそろ締めようかな⁉www

後はそうだなー……ベアトリスの専門は工学なワケなんだけど工学系女子が主人公の作品ってもしやコレが初めてなのではとか。ジルダのその後がチラッと知れてテンション上がった!とか。やっぱりニカヤとは切っても切れぬ運命なんだな~とか。表紙のベアトリスイラストがかわい過ぎるとか。ウィルはこの時からウィルなんだよなーとか……( ̄▽ ̄)

果たしてウィルは胸の大きい黒髪美女と結婚できるのか⁉ それを楽しみに今後の廃墟シリーズも追っていきたい所存(※違う)。

 

余談。
地味に缶詰製作してるシーンがめっちゃ好きでした👍

 

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