鞭展開度:★★★★★
王の在り方:★★★★★
民の在り方:★★★★★
【あらすじ】
王冠を捨てた王女、カミラがイルバスに帰ってきた。〈赤の王冠〉の黒幕を突き止めるべく独自に動く彼女とは対照的に、三人の王は分断され身動きが取れない。アルバートは前線で行方不明、ベアトリスはニカヤに留め置かれ、サミュエルは毒に倒れる状況の中、成長を遂げた王杖エスメもまたイルバスに帰還する。集結する王家と〈赤の王冠〉、ついに全面対決!
とうとう迎えた廃墟シリーズ最終巻。アデール編よりかはまだ平和だったベアトリス達の治世でしたが、とうとう国をかけた戦争へと。。。
思ってもみない悲劇に精神的打撃を受けながらも、最後までページをめくる手が止まりませんでした。アデール編の時にはなかった新たな変化もまた感慨深く。終幕にふさわしい激動の物語でした。
以下ネタバレあり↓(※今までの廃墟シリーズの話も含みます。。。)
まさかエスメが殺されてしまうとは思わなかった……!!!(泣)
本当にショックでした。アデール編でもアデールの大事な人がたくさん亡くなったので、この巻でも誰かが亡くなることは覚悟していました。でもまさかそれがエスメになるなんて…………………………………。
戦場に出るアルバートあたりが亡くなってしまわないかと考えていたんです。まさか戦場にすら出ていないエスメになるなんて。まだ若かったのに。サミュエルと気持ちが通じ合ったばかりなのに。ニカヤでたくさんのことを学んできたのに。これから、たくさんのことを成せる子だったのに。
エスメ自身が、あまりそういった死のイメージを抱かせない明るく前向きな子だったから、というのもあります。
いつぞやかのラノベ投票で好きなキャラを男女3人ずつ投票できたのですが、そこでエスメとサミュエルを投票したくらい、この2人のことが大好きだったのに。。。王と王杖としても、恋という意味でも楽しみな2人でした。
奇跡的に助かるなんてことはなく。エスメの最期の言葉を聞くのは大事な人ではなく、ジュストで。
そこからのそれぞれの悲しみにまた胸を抉られる………………………………。
特にベンジャミンの描写が刺さりました。いつも落ち着いて赤の陣営や緑の陣営を支えてくれていた彼のこれほど感情的なところを初めて見ました。そしてそれだけ彼にとってもエスメは大事な存在だったのだと。。。
本を閉じていても、黒いページがエスメの死を思い知らせてくるのがまた何とも悲しく、辛い。
しかしただ打ちのめされるばかりでないのがベルトラムの王たちなのです。
サミュエルのダメージは相当なものだったけど。。。そんな彼に対してベアトリスは厳しく接していて、『廃墟の鍵』の頃を思うと感慨深いものがありました。エタン似の彼に甘いところがあったので。
すっかり正気を失ってしまったサミュエルもまた、現実逃避ばかりではなくて本当に大きくなったなぁと。。。それはもちろんエスメがもたらした力でもあるけれど、サミュエル自身がここまで変わってきたからこそ、幻のエスメができることをやらないとって言うんだと思います。
そしてエスメの最期の言葉はサミュエルにしっかりと届いていた。
エスメとのお別れの儀式が、まだ彼女の遺体がきれいな状態の埋葬の時ではなくて、その後の腐敗が進んでいる時というのが印象的でした。サミュエルの人間くささというか。
ベアトリスは、埋葬の日取りを即決し、サミュエルがエスメの墓を掘り起こす時は好きにさせる。王としての厳しさだったり理解だったりがこれまた印象的でした。そしてエスメの死を戦争で利用しつつ彼女の死を悼み、「エスメのお陰」なんて思わないし、言わない。
アルバートは生きていてくれたけれどその負傷ぶりは凄まじく。。。
それが結構ショックだったんだけれど、あの魔女達の強烈さに全部持ってかれたような気がするな……www アルバートが腕と脚を失ってもまったく気概を損なっていなかったことも大きいな。
女を道具とする男の考え方はムカつくなーと思うところはあったのですが、その真逆もそれはそれで強烈なんだなぁ……( ̄▽ ̄;) クローディア同様絶句しておりました。「だいたいでいい、だいたいで」が名言過ぎるwww
ただ、そこでのことをきっかけに夫婦仲が上手くいったのは結果オーライだったのかなとwww
ウィルの咳払いが好き過ぎるんだわ( ̄▽ ̄)
にしても、イルバスの兄弟共同統治はあまりにも異質なのにいざベアトリスのみが王として立つとなると心細いなんてものではなかったですね。『廃墟の鍵』ではあんなに3兄弟で王をやることの厄介さを痛感していたのに。
……そしてそうやって考えてみると、カスティアの侵略をただ1人の王として退けたアデールって本当にスゴイ。エタンがそばにいてくれたとはいえ。
3兄弟生きて王として揃ったのは本当に心強かったです。……王杖も勢ぞろいできればよかったな。
そして王位を棄てた眷恋の元王女・カミラ。
……いや~、前巻から確信していましたがめっちゃ好きなキャラですね‼‼www 自分の恋に正直過ぎていっそ清々しい。ブリジットとライナスも優秀過ぎて好き( ̄▽ ̄)
そしてスコットあたりへの態度を見る感じ、そうやっていろんな人をオトして自分の傘下に加えてきたのかなーと……www カリスマがすんごいのかも。
サミュエルとカミラの「男が話しているのかと思った」「ハスキーボイスって言いなさいよ」は最高でしたwww
ライナスが結構新鮮な感じでしたね。人妻に仕える忠実な男性配下、最高です(笑)。
私が今まで読んできた中だと男女の主従は恋に落ちるものが多かったので、「夫の次に好きよ」と言う女主人カミラとそれを最上の褒め言葉として受け取るライナスの関係が面白い。
カミラとブリジットとライナスの出会いとか日常とかめっちゃ気になるな……www あとブリジット・ライナスはキャラビジュが見たい、オーウェンも見たい(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾ カミラのキャラビジュ最高でした(。-_-。)
話は戻って最終決戦。敵の総大将・ジュストを捕えたのがサミュエルというのが何とも印象深く。。。その場で殺さなかったのは本当に、本当に偉かった。
そしてエスメの言葉が本当にサミュエルに届いていたというのがね……!!!
処刑はあまりにあっけないものでした。
……にしても死刑を命じ見送る側の主人公というのが初体験でそこも新鮮でした……私なら絶対直視できない光景だけれど……_:(´ཀ`」 ∠):
そうしてジュストとの戦いの幕を閉じたワケだけれど、民の在り方がアデール編とは大きく違いましたね……!!! 民たちは自分で考え、動き、ただ国に寄りかかるばかりではなくなった。ベアトリス達は民と共に戦った。
アデールたち3姉妹が革命で家族を失ったことやアデールが最後に女王として立ち上がったことを思うと感慨深いですね。。。
そして民主主義へと移行しようというのがこれまたビックリ!!!(笑)
めちゃくちゃ思い切った方向転換。もちろん今すぐ王たち全員がクビというワケではないけれど(笑)、イルバスはまた新たな形へと変わっていくんですね。まさに最終巻にふさわしい結論と言えるでしょう。
それから10何年も経った未来で、ベアトリス、アルバート、サミュエルがエスメのお墓に来たところで終わるのがまた……(泣)。エスメの命日には必ず3人でエスメに会いに行くというのが胸にしみます。
ベアトリスは、まさかギャレットとの子どもができるまでこんなに時間がかかるとは思っていませんでした(笑)。でもおめでとう!! 母子共に健康でありますように。
アルバートとクローディアが子だくさんなのは割と予想してたな……www アルバートが軍事学校の理事長なの、心強過ぎる……!!! ぶっちゃけそういう学校にワクワクするのでどういった授業や学校生活なのか気になる(。-_-。)
サミュエルは……、本当に王杖も妻もエスメだけなんだね。この先また誰かを愛したっていいと私は思っているけれど、どうやらベアトリス曰く彼は「孤独を楽しんでいる」らしく。……うーん、いい言葉だ(笑)。
カミラさん、相変わらずご活躍されている……?ww
エスメの死を起点に感想を書いてきたので書きそびれていましたが、フレデリックやクリスが『王杖よ~』から大成長を遂げていて、それがまた感慨深いやらうれしいやら。
エスメとフレデリックが肩を並べて協力し合ったり、軽口を叩き合ったりしているのも本当にうれしかったんです。もっと長く共にサミュエルを支えていてほしかった。
けれど、エスメがサミュエルからもらった指輪を何としても敵に気付かれないようにしていたことにちゃんと気付いていたり、エスメの遺体に指輪はつけたままがいいんじゃないかと進言したりと、フレデリックのエスメへの仲間だって気持ちがたくさん伝わってきて、それもまたうれしかった。
クリスも本当によくがんばってくれた!!!!!!(泣)
エスメが亡くなってもう解毒の研究もできなくなるんじゃないかと思ったけれど、あんなにげっぷばかりで怯えていた子が……やり遂げましたよ……T ^ T そしてげっぷ再び……( ̄▽ ̄)
あんなに飲んだくれてダメだこりゃだったお父さんがエスメの死で酒が抜けるというのはもの悲しかった。。。けれど確かにイルバスを前に進める言葉をくれて。
……というワケで濃かった廃墟シリーズ、最後まで立ち合うことができました。
本当に面白かった。何度も心を揺さぶられた。悲しく辛い思いもたくさんしたけれど、それはそれだけみんなのことが愛おしくなっていたからで。間違いなく出会ってよかった作品のひとつです。この作品に携わったすべての方に感謝を。
また廃墟シリーズを書き上げた仲村つばき先生が次にどんな新作を生み出してくれるのか、楽しみに待っていたいと思います(笑)。
余談①。
サミュエルとエスメが再会した時、サミュエルの顔腫れ上がってなくてよかったなーと思った。
余談②。
この巻読み終えてからオレンジ文庫HPで読める書き下ろしSS見に行ったら『舞踏会の思惑』読めてなくてその時初めて読んだんだけど無事感情がぐちゃぐちゃになりました(真顔)。