『ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒』(菊石まれほ/電撃文庫)

電撃文庫

鞭展開度:★★★☆☆
凸凹バディ度:★★★★★
人外度:★★★★★

【あらすじ】
孤独な天才捜査官。初めての「壊れない」相棒は、ロボットだった。

★第27回電撃小説大賞《大賞》受賞作!!★
最強の凸凹バディが贈る、SFクライムドラマが堂々開幕!!

 脳の縫い糸〈ユア・フォルマ〉――ウイルス性脳炎の流行から人々を救った医療技術は、日常に不可欠な情報端末へと進化をとげた。
 縫い糸は全てを記録する。見たもの、聴いたこと、そして感情までも。そんな記録にダイブし、重大事件解決の糸口を探るのが、電索官・エチカの仕事だ。
 電索能力が釣り合わない同僚の脳を焼き切っては、病院送りにしてばかりのエチカにあてがわれた新しい相棒ハロルドは、ヒト型ロボット〈アミクス〉だった。
 過去のトラウマからアミクスを嫌うエチカと、構わず距離を詰めるハロルド。稀代の凸凹バディが、世界を襲う電子犯罪に挑む! 
 第27回電撃大賞《大賞》受賞のバディクライムドラマ、堂々開幕‼

 

めちゃくちゃ面白かったー!!!(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾

少女小説ばかりであまりラノベに手を出していなかった私ですが、ツイッターで流れてきたPVを観てめちゃくちゃ面白そうだったので読みました。そのPVがこちら↓

近未来モノにあまり縁がなかったのですが、めちゃくちゃ読みやすく説明も分かりやすかったです。

そして私が求めてた人外×人の在り方がここに……!!!(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾

凸凹バディモノって最高ですよね。

 

以下ネタバレあり↓

 

 

誰もが脳の縫い糸ーー《ユア・フォルマ》を頭に有する近未来。

所有者の見聞きしたもの、感情までもをすべて記録している機憶。

その機憶にダイブして閲覧し、事件解決の糸口を見つける電索官と電索補助官。

 

先程書いたことをもう1回書くことになるんですが、めちゃくちゃ読みやすかったし説明も分かりやすかったです。

 

私はどちらかといえば昔の時代を思わせる世界観の方が好きなタチなので、近未来モノは敬遠していた節があると思います。

触れたことがあるのは乙女ゲのシャレマニぐらいですかね?(コレはコレでめちゃくちゃ面白かった)

私個人が、主人公達がSNSにふり回されないのが好ましいというか。単純に昔の不便ながらも魅力的な世界観が好きというのもあり。

 

そんなワケで、PVを観て「面白そう!」とはなってすぐ購入には至ったものの、「近未来モノを読み慣れていない私には難しいのでは……?」と不安があったのも事実。

 

しかしそんな心配はまったく不要だった。

 

何だコレめっちゃ読みやすい。説明も分かりやすい。心情描写から専門的知識まで何もかもがすんなり入ってくる。

近未来モノの小説は恐らくコレが初。……だったワケなんですが、近未来初心者(※とは)にはめちゃくちゃちょうどいい話だったと思います。そんなワケで2巻も発売してすぐ購入に至りました、菊石先生の文章力に心底感謝(`・ω・´)

 

「機憶」とか「電索」とかワクワクするオリジナル専門用語がたくさんでめちゃくちゃアガったしなー!!!www

エチカが記録にダイブしていく描写なんか特に大好き。これアニメになったらめちゃくちゃ見応えあるんだろうなー、見たいなぁーーーーー(デカイ声)。という主張はさておき。

 

近未来らしく、「電子犯罪」に立ち向かうというストーリーなのがこれまた面白かった。サスペンスモノを読んだことは何度かあるけれど、またそれとは違った面白さ。より得体が知れなくてドキドキワクワクしながらページをめくっていました。

ユア・フォルマを介して感染するウイルス。吹雪の幻覚を見せ、低体温症に陥れる。

電子犯罪と言いつつそれこそ病に直結しているから馴染みやすかったところはあるのかも。そしておもしろ!!! となりました。

そんな事件の調査に乗り出すのが、優秀で機械じみた人間の電索官エチカと、人間らしくユーモアに溢れたアミクスロボットの電索補助官ハロルドなワケで。

 

この2人の組み合わせがホントに最高なんだよなー!!!!!!(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾

バディモノ最高(。-_-。) 相性サイアクなのがこれまたイイんだよなー……ふふ……ふふふ……ふ……(暗黒微笑)。

 

会話のテンポがめちゃくちゃ好きだったwww エレガントに茶化すハロルドとうるさいかかわりたくない全開な絶対零度のエチカ。

……いや、絶対零度ではないんだよな。いつもは感情を廃することに努めているように見えるエチカが、ハロルドとの対話ではすごく人間っぽくてそこがいいんよな。

ハロルドのセリフは海外ドラマのセリフ感あって何かオシャレなんだよなー!!それをエチカがマンガっぽい塩ツッコミ、いやむしろそこまでいくと熱心なのでは???というツッコミで返し、それにまたハロルドがにこやかに応じる……この応酬が何度見ても飽きない。

 

PVを観て何故『ユア・フォルマ』を買おうと思ったかといえば、天才で人間らしい面を見せないエチカが、人間ではない、アミクスであるハロルドと一緒に過ごす内に人間らしさを取り戻す話、もしくは自分の中の人間くささを認める話だと思ったからなんですよね。

私、人間の弱さを描いた作品が特に大好きでして……www そういう人間くささって、物語という『嘘』の中でひどく『本当』に近い要素だと思ってて。アイナナシナリオライター都志見文太先生のお言葉を借りるなら『傷付く物語』が心底好きといったところ。

人間とアミクスの、そういう隔たりを超えた先に絆がある物語だと思っていた。当時の私は。

 

しかしそうではなかったという衝撃の事実。

 

アミクスにだって心があるとかそんな生やさしいものじゃなかった。家族同然の人間への愛情を得たハロルドが、家族同然の人間を惨殺した人間への復讐へのルートを緻密に構築していく一環に過ぎなかった。

ビガやアンに対する“友好的な”素振りはまだ何か意図があってのことだろうと思えた。観察眼が鋭く、人間の心理というものを把握しているハロルドであれば、エチカ達には見えていないものにいち早く気付いて、根回ししていてもおかしくないと。

しかしエチカに対する何もかもまでもが計算だとまで誰が思う。

ハロルドの本性が見えているように見えたエチカでさえも、ハロルドの本性を見抜けていなかったなんて。

 

この、機械じみたエチカと人間めいたハロルドの見え方が綺麗に逆転する流れが見ていて鳥肌が立った。

 

隠し続けていた、誰にも覗かれたくなかったものを暴かれるエチカ。

「目の前の事件を解決する」というただひとつの目的の為に、何もかもを――それこそ、相手の心までを――計算していたハロルド。

 

まるで盤上の駒を動かすような、いや、それよりもっと緻密に計算立てて事を進めていたハロルドが、犯人の前で推理を披露する探偵のごとくエチカを追い詰めていく展開が面白かった。犯人ではない主人公。しかし犯人のように逃げ場を奪われていく主人公。あまりにも新鮮だ。

 

そしてエチカがずっとよすがとしていたものが量産型AIだったというのがまた……。

いや、間違いなくたった1人の姉だった。もうあの日死んでしまった姉の残滓を必死に握りしめていたエチカは誰よりも人間らしかった。

今までの彼女を機械たらしめようとする、でも読者でエチカの内側が見えてしまう私からすれば充分人間くさい要素が全部つながって、ここでの葛藤はひどく彼女を魅力的にしていたと思う。

父の愛情が欲しくて何が悪い。そんなの当たり前の感情だ。

 

対するハロルドの過去には凄惨な事件が……。

エチカとハロルドのあたってる事件が殺人ではなかったからホッとしてたんだけど、ここで急に痛まし過ぎるバックボーンが来て震え上がった……_:(´ཀ`」 ∠):

冷徹にソゾンを殺した犯人への報復を口にするハロルドこそが本当のハロルドで、復讐なんて人間くさいぐらいのことの筈なのに、それとは何か違うと直感させる不安。得体の知れない何か。心と呼んでいいのか分からない、イレギュラーな思考回路。

 

人とは異なる思想を当然に持っている人外が描かれた作品が大好きな身としては、その中でも群を抜いてぞわぞわさせられて、そしてその分惹きつけられました。

私が今まで読んできたやつって、妖とか悪魔とか妖精とかっていう、いわゆる空想上の『生き物』だったんですよね。

でもアミクスは機械で、生き物なんかじゃない。余計に得体の知れない存在で、もっと理解し難い存在。

でもこれも間違いなく人外×人のひとつの在り方だ……!!! と興奮冷めやらず(笑)
新たな人外×人が私の中にインプットされてめちゃくちゃテンション上がっておりました👍

 

 

しかもそんな人とは見えない何かが確実に異なる存在であるハロルドも『照れ』を覚えたりするのかと!!!!!!

 

あのハロルドにも計算外の事態があって……それがエチカで……って何ですかそれもうきゃーーーーーってなりますよ(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾

自分の落ち着かない気持ちが何なのか分からんくて戸惑ってるハロルドの描写がマジたまらんかった。短い文章でしっかり伝わってくる。たまらん。たまらんのよコレが。

 

「本当だよ、あれは『照れ』だ。きみはわたしに、思わぬことでお礼を言われて気恥ずかしくなった。ついでに多少プライドにも障った。以上、それだけ。簡単なことだ」

「……………………いいえ違います」

 

もうニマニマが止まらーーーーーんッ(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾

 

 

 

電撃小説大賞大賞受賞作で電撃文庫さんが猛プッシュしてるだけあって、事件のメカニズム的にも心理描写的にもめちゃくちゃ大満足な作品でした。

2巻ももう読み終わってるんだけど、それから1巻読み返してみると結構震えるものがあった……_:(´ཀ`」 ∠): エチカの歩む道は想像以上に険しくなるようで。

今はコミカライズも連載中なんだよな〜! コミック1巻出たら買うつもりー(。-_-。)
配信(?)されてるの読んだらビガと出会うあたりだったんだけど、ハロルドがあまりにも魅力的に口説いててそりゃビガもオチるよなってなった……!!!www
想像以上に表情豊かなハロルドとそれを死んだ目やドン引きした目で見るエチカの温度差がたまんないwwww

ビガのことも結構嫌いじゃありません( ̄▽ ̄)
そのあたりのことは2巻感想で触れたい所存👍

 

吹雪の幻覚を見せる謎のウイルスは、まるでエチカの心とリンクしているようで。その吹雪が止んだ先で、エチカが新たな相棒とどんな物語を歩んでいくのか見届けていきたい。

例えその先に吹雪よりも暗澹たる何かが待ち構えていたとしても……。

 

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