鞭展開度:★★★★★
ボロ泣き度:★★★★★
愛してる:★★★★★
【あらすじ】
『自動手記人形(オート・メモリーズ・ドール)』その名が騒がれたのはもう随分前のこと。
オーランド博士が肉声の言葉を書き記す機械を作った。
当初は愛する妻のためだけに作られた機械だったが、いつしか世界に普及し、それを貸し出し提供する機関も出来た。
「お客様がお望みならどこでも駆けつけます。自動手記人形サービス、ヴァイオレット・エヴァーガーデンです」
物語から飛び出してきたような格好の金髪碧眼の女は無機質な美しさのまま玲瓏な声でそう言った。
とうとう原作が読めたぞー!!!(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
アニメは全話観ていたんだけど原作は読んでいないままここまで来ていた私であります。
ついこないだ金ローでヴァイオレットがやってたのを観て再熱してとうとう原作を全巻揃えました(`・ω・´) 再販してくれたアニメイトさん、ありがとう……✨T ^ T✨
『春夏秋冬代行者』の時点で分かっていたことではありますがやはり暁佳奈先生の魔力には抗えない……!!!
以下ネタバレあり(アニメの話も込み)↓
まず読んでみて思ったこと。
アニメと描かれる時系列が違う!!!!!!∑(゚Д゚)
まさか最初に作家さんのお話が来るとは思わなんだ。最初の方ではなかったよねアレ?
『作家と自動手記人形』
そしてそしての、ヴァイオレットがこちらだと料理上手だったりまさかの作家先生がヴァイオレットを本物の人形だと勘違いしていたり!!!www
その話はアニメだとアンだったのに!!本気で機械だと思ってるオスカーかわいいな!!!
このエピソードはアニメでも号泣した話だったんだけど(というかほぼ泣いてた)、いざ文章で読んでもやっぱり泣いてしまったなぁぁぁぁ……(T ^ T)
家で読んでて本当によかった。ボロッボロに泣きました。本で泣いたの久方ぶりであります。
何となく、暁先生の文章は『声』で気持ちを伝えてくるものだよなぁと思っていて。
悲しいとか辛いとか、そんな気持ちをどんな風に苦しくて痛いのか説明するというよりも(そういうのも私は大好きです)、このオスカーの話であったら挿絵の前後あたりかな?
「君は知らないだろう。あと何千回だって僕は君に呼ばれたかったんだよ」とか。
「まぼろしでも、会えて嬉しいよ」とか。
「ずっと、会いたかった。もう一度、可愛い君に」とか。
心の声がふとした瞬間に芽生えて、花開く。溢れ出る。満たしていく。
それが暁先生の書く物語の、痛みと共に愛しさを感じずにはいられない魔力なのかなと。
意外とそれ以外の文章は男性っぽい印象があって、確かにコレは少女小説ではなくラノベだなぁと思った次第。戦闘描写なんかが特に。
あ、でもふとした時にドキリとする切り込みを語りの中でも入れてくるよね!!そういうのもたまらんくらい好きであります(。-_-。)
それが私にとっては『学者と自動手記人形』であったワケで……、
『学者と自動手記人形』
すんませんかなり飛ばしてこちらのエピソードを先にwww 私がドキリとした切り込みがこちらであります↓
まるで対岸で怒鳴り合っているように、人間同士、話が通じないことがある。
それはとても悲しいことなのだが、悲しいことだという事実すら気がつかない人が多い。
……何だろうなぁ、この気持ち。
『マギ』のアニメを観ていた時に、アリババが他人との違いを素直に「悲しい」と言って泣いた時を思い出すような。
私はどっちかというと「人それぞれ違う」を受け入れている方で、流されることができず、話の通じないと思った人とは即刻距離を取る生き方をしてきたワケなんだけど。
……本当に違いを受け入れていたのか?
切り捨てるようなことをしてきたけど、その根本にある感情は何だった?
そんなことを、考えさせられたワケで。
それでいて、こうした「話が通じない」を「悲しい」と素直に受け取れる人は、強い人だなと。思ったりもしていました。
だって「悲しい」って認める方が辛い。ムッとして、怒って、もう知らないってしてた方が、まだ傷付かないで済む。
私から言わせれば、この言葉が出てきたシーンはレファレンスの男性職員のくだらないやっかみに過ぎないものだった。要は美人なヴァイオレットと四六時中一緒にいれるリオンに嫉妬して、孤児であるという彼らにとっての汚点を都合良くあげつらっているだけの。
そんなシーンで動じないヴァイオレットは正に見えた。けれどそこで、「悲しい」とこの物語は語る。
何だかそういうところが、本当に、本当に……あぁ、私はこの作品に出会えてよかったんだなと。そう思えて仕方ない。
気付かずにいた大切なものを掬い上げてもらったような気がしてならなかった。
アニメと少し違う展開が見られたのがよかったなぁ……!!! リオンがヴァイオレットに「好きだ」と告げたシーンが本当に大好きです。
コレ、アニメだと言ってなかった……よね? ヴァイオレットが誰を愛しているかが分かってしまって言えずに終わってた気がする。……ウロ覚えなので間違ってたらごめんなさい( ̄▽ ̄;)
――一生に一度くらい、勇気を出せ!
父を追い求めて行ってしまう母を見送るしかできなかったリオンが、行ってしまう女性にそれとは違う選択肢を掴み取れたんだなと。
そして確かに失恋だったけれど、こんなにいい失恋があるのかと。挿絵のヴァイオレットの表情がまたいいですよね。余計に大好きなシーンになる。
暁先生の描く恋の描写がまたたまらない。リオンのヴァイオレットに「落ちた」瞬間から、もっと好きになっていくこの1週間。何て無様で愛おしい1週間。
意地っ張りな感じとか、不慣れな感じとかがまたたまらなかったです。
それから再会する未来が見れたのも本当によかった。リオンはまだヴァイオレットが好きなんだね。
その切なさも含めて、やっぱりこのお話は大好きです。
『少女と自動手記人形』
アニメでもかなり印象深かった、アンのお話。
子どもの世界の捉え方をしっかり書き留めていて、読んでて興味深かったし楽しかった。アニメでも充分楽しめたけど、そこから更に理解が深まっていくのが面白かった。これはアニメ化されたどの話でも言えることだけど!(笑)
そしてこちらのアンはやはりヴァイオレットをしっかり人間として認識していましたね……www ますますオスカーがかわいく思えてきたわい( ̄▽ ̄)
お母さんは少女みたいな人なんだねぇ……!!! ますます川澄さんがお声をやられてたのも納得。騙されやすい人だったのね。。。
アンが確かにヴァイオレットに惹かれる過程が丁寧に描かれていてこれは文章じゃなきゃ分からなかったかも……⁉︎⁉︎
普通に武器の手入れしててびっくりしたよヴァイオレットちゃん( ̄▽ ̄)
そしてここではお母さんを傷付けてしまったと傷付くアンの描写があまりにも印象的で……。
言葉ってどうしてこんなにもまっすぐ伝えられないんだろう。本当に思っていること、言いたいことがそのまま口から出ることなんてほとんどない。それがとても、“悲しい”。
アンに寄り添うヴァイオレットの言葉も行動も、分かりやすく思いやりに満ちているワケではなかったけれど。
やっぱり思いやりに満ちていた。
お母さんの手紙の内容を読んでまたボロボロ涙が止まらなかったのよ……(T ^ T)
アニメだと、この後郵便社に帰って来たヴァイオレットがそこで初めて泣くんだよね……。よく泣くの我慢したね、ヴァイオレット。がんばったね。
『青年と自動手記人形』
この回はアニメでも心底キツかったな………………………………………………。
戦地ということで理不尽に命が奪われていくのを目の当たりにし。死にたくないと思いながら徐々に命が消えていく青年の様が本当に悲しかった。
アニメだとマリアの泣き声も本当に未だに耳に残っているくらいです。
そしてここで分かる驚きの真実。
……ヴァイオレットちゃん……愛用の武器戦斧なのね……。
……いやビックリしたわッッッッッ(汗)
アニメでは銃を撃って銃で殴り蹴り殺すような感じだったのでまさかこんな物々しい武器使うだなんて誰が思おうか。しかもデカイな。
自分がもう殺されるという状況での、自分がそんな状況に置かれてることへの信じられない気持ちや、這い上がる死の恐怖。大事な人を縋るように呼ぶ様が本当に胸に迫る。
「死にたくない」という文字が殴りつけるように襲いかかってくる。
両親宛ての手紙の内容で泣いて、マリアへの手紙の内容でまた泣いてしまう。
エイダンとマリアの恋が本当によかったんだよなぁ……。
実際に2人が話すシーンがあったワケじゃないけど。それでもいい恋であることが伝わってくる。
幼馴染で気恥ずかしくて、キスもできなかったというのが本当に切なくて、でも等身大の、すごく大事な恋だって分かった。
――こんなことなら、無理矢理にでもキスをして、抱いてしまえば良かった。
何だかこの言葉にすごく、生々しくいろんなものが伝わってくるというか。
人生で1番嬉しかったのは、君に好きだって言ってもらえたこと。
悲しい結末だけれど、素敵な恋だったんだなぁと。他人事であるが故の傲慢な考えかもしれないけれど、そう思わずにはいられなかった。
『囚人と自動手記人形』
完全に知らないお話キター……!!!
とワクワクしながらページをめくっておりました。しかしこれがなかなかのウッとなる内容。確かにこれは放送するにはキツ過ぎる内容だったかも……?( ̄▽ ̄;)
何というか、このあたりで『キノの旅』を読んでいた時のキツさみたいなものを思い出しました。残虐さ凄絶さを実に淡々と描くといいますか。
扉絵にいるエドワードの顔がいいのがなおタチが悪い……!!!
クソッ、絵の魔力!!!!!!
優しそうな人に見えただけに読んでてなかなか心臓にその異常性が食い込んできましたよ_:(´ཀ`」 ∠):
そしてここで感じるヴァイオレットの異常性もまた然り。
アニメだとやっぱり見た目の美しさにかなり意識が行ってしまってどこか忘れてたのかもしれないと、このエピソードを読んでて思いました。
そして違ったらスマンとしか言いようがないんだけど( ̄▽ ̄;)、この物語って別にヴァイオレットが特別なんだと描きたいワケではないのかなぁと考えたり。
ヴァイオレットは、見た目がきれいで無表情で戦闘力がズバ抜けててまったく動じない。普通の人が言われて傷付くような言葉で心は揺れないし自分の言いたいことはズバッと言えてしまう。
何というか本当に、物語の中であまりにも特別である要素がたくさんあるというか。
でもここでその異常性が彼女自身によって語られて、異常性が身に沁みても分かって、決して「ヴァイオレットはすごいでしょう」ってことを言いたい物語ではないんじゃないか、と思えました。
……いや、実際すごいんだから、それでも全然いいのだけれど(笑)
ただ、もしも「ヴァイオレットはすごいでしょう」って作品じゃないんだとしたら。……私は多分、どこか救われる。
特別なんかじゃ全然ない、心ないことを言われたら心底傷付くし言いたいことがあっても「これを言ったらダメなんじゃないか」とぐるぐる考えて言えないで終わることがほとんどという人間なので。
彼女みたいじゃない自分を受け入れられるような。人間があまりにも多種多様であることを思い知って、感じ入るような。
そんな気持ちにさせられました。
……うーん、にしても宛先は神様かぁ。異常な人間同士の語らいは何故か心に深く残るものもあったり。。。『春夏秋冬代行者』のあの人目線でもそうだったんだよなぁ。
果たしてエドワードは神様にどんな言葉を届けたのか。
『少佐と自動殺人人形』
そこでそのタイトルになるのかぁ……!!!
あまりにも上手くてこんなんもう膝を打つしかあるまい。
そしてアニメで知っていたとはいえいざ少佐目線の文章で語られるとあまりにも切なくてむごい。
アニメだとギルベルトのヴァイオレットへ注がれる眼差しがあまりにもたくさんのことを物語っていて印象的だったなぁ。。。その上でこの文章を読むとすごくしっくりくるしその逆もまた然り。ギルベルト視点を知ったこの状態でまたアニメを見たくなった。
ディートフリートがヴァイオレットを連れてる経緯がアニメ観た段階だとよく分からずにいたんだけど、彼をご主人様と認識してずっとついて行ってたのかぁ……(汗)
確かにその絵面はなかなかに怖そうだ( ̄▽ ̄;) ただヴァイオレットを襲おうとしたクソ野郎については知らん(真顔)。
ホッジンズ少佐が出てくるとちょっとホッとしちゃうんだよなー!!!www
ヴァイオレットが後に引き取られる経緯が垣間見えてなるほどってなった。
申し訳ない、ヴァイオレットの下着の件でギルベルトが赤くなってんの正直ニヤニヤしちゃったわ……www
あの2人での買い物の場面は大好きです。切なくもあるんだけどね。
ブローチのシーンは文章で追ってもやはり美しく尊いものだった。
「愛してる」のところはあまりにも切な過ぎた………………………………………………。
あんなにも短い言葉に万感の想いが込められている。彼は何度も「愛してる」と言った。そうしてヴァイオレットに、「あい」を教えた。
愛が分からないと泣く少女が、「助けろ」という命令を乞うのがあまりにも切ない。
リオンの時にも思ったけれど、「愛してる」を伝えられるって、あまりにもすごい。
砕け散るかもしれない。でも言いたくて仕方ない。
その葛藤の先に押し出された言葉の、何と尊いきらめきか。傷だらけでそれでも足掻いている。輝いているのだ。
ヴァイオレットが初めて与えられた「愛してる」がこんな状況なのがあまりにも悲しくて、でもどうしたってこの「愛してる」が尊い。大切だ。
改めて、それぞれの「愛してる」で満ちたお話だったなぁ。。。アニメでもかなり満足していたけれど、これは確かに文章でも物語を感じてよかったなと。
そしてそして、『春夏秋冬代行者』でも思ったことだけれど、暁先生のあとがきがより心に沁みるんだよなぁ。。。
だって人生ってつらいです。朝が来て欲しくない。
でも、残酷な世界の中でこそ時偶訪れる素晴らしい瞬間に涙が出そうになる。
それを美しいと思う。
この文章に、本当に「そうそう、そうなんだなぁ」ってなる!!!
そんな瞬間が欲しくて、いつも物語に手を伸ばしている。だから暁先生の物語が、あまりにも心の奥底にまで根を下ろす。私も頑張りたいと思う。
またひとつ大切な物語ができたことをうれしく思います。
……とかなりシリアスな内容になったんだけど(笑)、現在下巻をガンガン読み進めてる状態なのでそちらも読み終わったら感想を上げるつもりであります(`・ω・´)
本当に面白くてたまらんのよ……!!!
あと挿絵が本当に美麗✨T ^ T✨
〜下巻感想へ続く〜
余談。
オスカー、お前見たんか(真顔)。
下巻感想はこちら。