『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 下』(暁佳奈/KAエスマ文庫)

KAエスマ文庫

鞭展開度:★★★☆☆
繋がる絆:★★★★★
愛してる:★★★★★

【あらすじ】
自動手記人形(オート・メモリーズ・ドール)のヴァイオレットは今日も色々な土地に住まう人々に手紙(こころ)を届けていた。
献身的に仕事に身を捧げるヴァイオレット。
それは何物にも換え難いある人との約束を守るため――――

第5回京都アニメーション大賞 初の《大賞》受賞作の下巻。

上巻感想はこちら

 

こちらも順調に読み進めました下巻であります。

上巻より下巻の方がアニメとの違いにいろいろ驚かされたなぁ……!!! どっちの設定も好きだけどね(`・ω・´)

下巻の方が笑えるところもあったり報われる「愛してる」が多かったかな?

 

以下ネタバレあり(アニメ含む)↓

 

 

 

……えっ、少佐生きてる確定なんだ!?!?∑(゚Д゚)

 

……というのが結構なギョッとするポイントでしたね(笑)。

アニメだと少佐の行方は知れず恐らく死亡。ホッジンズ少佐……ではなく社長はそれを知っているけれど、少佐の存在に縋るヴァイオレットにそれが告げられない。ヴァイオレットは「愛してる」を知りたくて自ら自動手記人形に志願。

でも小説だと真逆でホッジンズはギルベルトが生きているのを知っている。でもギルベルトの希望でヴァイオレットに死亡したと嘘を吐く。ヴァイオレットに自動手記人形を推したのもホッジンズという。。。

アレンジ天才過ぎんか?(真顔)

原作の流れも好きでありつつ。

 

アニメでも思ったことだったけど、ホッジンズのヴァイオレットへの感じが本当に庇護者のそれであったかくて胸にじんとくるんだよなぁ……!!!(T ^ T)

アニメだとヴァイオレットが退院する日に再会してそのまま一緒にエヴァーガーデン家へ……という感じだったので、「何故ホッジンズはちょっとしか会ったことのないヴァイオレットをそこまで気にかけてくれるんだろう?」と、ちょっと不思議だったんです。ヴァイオレットに対する眼差しがあまりにも温かく、そしてギルベルトとは別の意味で苦しげだから。

恐らくアニメでは違ったバックボーンがあるんだろうと思いつつ(ホッジンズは「燃えている」と自覚している人間だからその自覚がないヴァイオレットにより悲しくなるのだろうなぁ的な)、原作ではヴァイオレットとホッジンズの間に積み重ねた時間があってより納得がいったというか。

 

ホッジンズについてはアニメでは分からなかった(※鈍感な私が)ことがいろいろ分かってそれも面白かったなぁ……!!!

「損得勘定に基づいている」「至極人付き合いがうまく情に熱い人間だが、思考は冷めている」。

ヴァイオレットの庇護者という印象が強かったし、軍人としての描写より社長としての描写の方がずっと多かったから軍人で少佐だったことも頭から飛んでいて。

結構彼に関しては新発見が多くてこの下巻では印象的でした。

……特に幼少期に親に構ってもらえなくて泣いた時は黒猫のぬいぐるみを抱いてたこととか……www

 

『春夏秋冬代行者』でも驚いたことなんだけど、暁先生、人の悲しみを丁寧に掬い取った切ない描写だけでなくそんな笑える感じもイケるというね……!!!www

何か特に不憫男性キャラが輝いていると個人的には思っております( ̄▽ ̄)

この巻では完っっっっっ全にホッジンズ社長でありますね……(遠い目)。

あと約1名いるけれど( ̄▽ ̄)

 

ホッジンズについてはヴァイオレットに対しての気持ちの変化もすごく好き。めちゃくちゃ感情移入して読んでたもん(笑)。

 

このお話を上下巻読んでてすごく思ったのは、男だろうと女だろうと、子どもであろうと大人であろうと泣く時は泣くんだな、っていう。

みんな等しく泣いていた。いい年をした成人男性も。幼い女の子も。母親も。若者も。軍人も。武器であった少女も。

何か多分、私はそういう、みんな泣くんだなって方が、他人をほんの少しだけ同じ人間なのだと感じられる。

 

アニメと違う点としては、あとエヴァーガーデン家とのかかわりかなぁ。

アニメだと養子にはしてくれるけれど、ヴァイオレットのあの感じとかヴァイオレットが少佐を待ち続けているのもあってすぐに疎遠状態に。

でも原作だと夫婦共にヴァイオレットをかわいがってくれてるんだよなぁ……!!!T ^ T

ヴァイオレットも彼女なりにパトリックとティファニーに愛情がないわけではないように思う。この3人のやり取り、めちゃくちゃじっくり見たいなぁ……!!!

「投げ出すなんて……! そんなつもりはないわ。ヴァイオレットを手放すくらいなら主人を売り払います」
「ティファニーさん……いい話になりかけているけど旦那さんを大切にしてください」
「正直、主人より娘の方が可愛くて……」
「未婚男性の夢を壊さないでください」

……このティファニーとホッジンズのやり取りが好き過ぎるwwwww

 

 

『花婿と自動手記人形』

 

そうしてまた自動手記人形としてのヴァイオレットの物語へ( ̄▽ ̄)

こちらもアニメにはないエピソードで楽しかったですね……!!!

内容は少し切なくもあり、でも報われる「愛してる」でもあり。

 

シランの親に対する複雑な感情は、多分いろんな大人が自分の親に抱えてるものなんだろうな、と何だかリアルに感じたなぁ。

それとミーシャが本当にいいお嫁さんで。シランの家族のことにまでしっかり心を配っている。結婚は個人同士ではなく家族同士の結びつきだと聞いたことがあるけれど、ミーシャはきちんとそういうものとして捉えている。めちゃくちゃいいお嫁さんもらったなぁ、シラン。

 

結局シランの根底にあったのは「悲しい」って気持ちだったんだよなぁ。そしてシランはたまたまそれを知ることができたけれど、大抵の人はそれに気付かない。ふりをしているのか、それとも気付く余裕がないのか。

シランはすごく、ごく普通の人間なんだなと思ったなぁ。みんなそうなんだけど、シランは更にそう思えたというか。

そうして母の思いを知って、「恥ずかしい」と思うことが等身大の人間という気がして、何だか他人事じゃないように胸に刺さりました。

 

 

『半神と自動手記人形』

絶対アニメ化されてないやつだし何だそのタイトル面白そうー!!!(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾

……と思いながら読んだんだけどこれがなかなか(汗)。

 

こういう歪な閉鎖世界の話は『キノの旅』めいているよなと思ったり。……でも多分『キノの旅』だったらあの人が死んであの人があぁなるよな( ̄▽ ̄;)

(※『キノの旅』のネタバレ防止にぼかしております)

 

リズボンの「普通じゃない者達を排除しなければ」というセリフは、何だか妙に心に残りました。

すごく歪だし理不尽だ。何の罪もない人達を殺すことを正しいのだと言い訳しているだけに過ぎない。ホント腹立ってきたのでヴァイオレットこいつらの顎に掌底入れてくれん?(真顔)←

 

……というのがガチの本音なんだけどwww、多分そうして移民狩りとか虐殺とかって何度も何度も歴史の中でくり返されてきたんだろうなぁと。

大義を掲げてやってるとしても、根本にあるのはこの「異質な者が怖い」ってシンプルなことなんじゃないだろうかと。

 

ラックスがヴァイオレットの手を取れなかったのも何かリアル。

今自分の1歩で今までの世界がガラリと変わってしまう、あまりにも未知の世界。それってホントに怖いよね。

死の間際でようやく「助けて」「死にたくない」も口にできたラックスを誰が責められようか!!!!!

ヴァイオレット、ラックスを助けてくれて本当にありがとう。

 

しかしそんなラックスがホッジンズの秘書になるとは……!!!

彼女が『現実』の『日常』に溶け込んでる様子が、何だか異世界トリップでもしてきた人のようで。

その不思議さを楽しみながら次の話を読んでいました。

 

 

『飛行手紙と自動手記人形』

 

カトレアが本当にアニメと全然違う!!!!!!(笑)

 

……ていうのがかなり印象的だったなぁwww まさかこんなに子どもっぽい女性だったとは。そして暁先生、本当に何人の人生歩んできてるのってぐらいの書き込みよう。

考えるのが苦手な女性の目線を、「なるほどそういう考え方になるのか」と興味深く読ませてもらいました。

犬みたいな唸りながら考えるって様子がリアルだなぁと印象に残ってたり。

 

……あとラックス、めちゃくちゃ会社に馴染んでるな……www

半神と歪んだ敬い方をされていたのがウソのようにすっかり社畜と化している。……いやぁ、うん。締め日に苦しめられたら立派な社畜よ( ̄▽ ̄)

 

ディートフリートとヴァイオレットのやり取りがまた印象深くて……!!!

アニメでも結構好きでした。ディートフリートが本当に弟を愛してるんだと分かるよね。部下を殺し、弟も死んだというのにのうのうと生きているヴァイオレットを本気で恨んでる。

対する原作では、またちょっと違う感情を向けているようで。

「生きて、生きて、生きて、そして、死ね」は本当に刺さるなぁ。

「俺も死なない」とその前に言い切っているのがまたいいんですよね。上手く言えないんですけど、本当に綺麗事なんかじゃない感じが。

 

列車で巻き起こる事件はやはりスリルがありますなぁ!!!!!!!

……いや、最早テロですやん( ̄▽ ̄;)

私が初めて読んだラノベが時雨沢恵一先生の『キノの旅』で、この方の書かれた『アリソン』『リリアとトレイズ』で列車での事件があったので何か勝手に「ラノベといえば列車での事件!!!」……という謎の認識があります。←

よってこの展開はアガりました。アニメでもあったワケですが。

 

そして原作だとギルベルトとヴァイオレットはここで再会するんだね……!!!T ^ T

本当にヴァイオレットがピンチの瞬間に現れてめちゃくちゃヒーローしてるなと思いました(`・ω・´)

そしてここでは「愛してる」に対する答えがまだ出ないのもいい……!!!✨T ^ T✨

発展途上というか、ヴァイオレットの心そのものがまだ芽吹いたばかりだから、ギルベルトが「待つ」というのがまた良い/////💦

 

今後の2人がゆっくりと主人と道具でない、新たな関係を築いていく様が楽しみです。無論続きは買ってある(`・ω・´)

今は別の読んでるので、そっち読んだらヴァイオレットの続きも読みたいな〜と思っております。

さてさてこれからどうなるのやら(。-_-。)

 

余談。
ホッジンズにからかわれるギルベルトがめちゃくちゃいい(真顔)。

 

タイトルとURLをコピーしました