鞭展開度:★★☆☆☆
主人公残念度:★★★★★
ヒーロー残念度:★★★★★
【あらすじ】
絵画好きの伯爵令嬢リズは、叔父の画廊の臨時管理人ジョンから「あんたをくれ」と告げられる。それは恋ではなく、リズの持つ“絵画に棲む悪魔を見抜く目”が必要だから。実は悪魔のジョンに契約を迫られたリズは!?
何だか久々に読み返したくなって読み返しておりました(笑)。……悪魔と絵画と謎に満ちた世界観に浸りたくなったんだよなぁ……(。-_-。)
冒頭レビューふざけましたが笑いがありつつ惹き込まれる世界観。糸森環作品の中では鞭がかなり緩くて糸森環作品初心者にもきっと読みやすいですね( ̄▽ ̄)
しかし人外の価値観はやはり恐ろしいのがこれまた面白い。
以下ネタバレあり↓
本当に序章から惹きつけてきますねぇ、糸森先生は!!!!!(笑)
『魚座の子』という名前の神秘的なことといったら。すっかり忘れてたんですがそういえば幼いリズは妖精なんかも見えるんだった。そのあたりのエピソードももっと具体的に知りたかったなぁ、なんて思ったり。
タイトルが「しろがねの娘」ってのがまた良い。私は洞察力アレなんで分からなかったんですが全部の章のタイトルがひらがな5文字+感じ1文字なのにも意味がありそう。
にしてもリズは糸森環作品の中では相当珍しい主人公な気がする。
個人的に、糸森環作品の主人公って個性こそあれ根っこは”ごく普通の人間”という印象が強いんです。めちゃくちゃ美男美女に弱くて独特の語彙力を発揮する子だったり、言葉がすごく豊かで書を愛し過ぎる子だったりしても(笑)。
しかしこのリズ、元から人でも獣でも虫でもない何かが見える体質だったり、体が弱かったり、めっちゃくちゃ無表情美人でコミュニケーション能力がその……ちょっとアレだったり……(小声)。
糸森環主人公、特異な力こそあるもののまったくもって万能じゃないしむしろ普通の人間として生きてきたのに急に見出されその後力が開花するイメージ。
しかしこのリズは誰に見出されるより前から自分で自分の特異性に自覚があり、絵画にのみ興味を示す変わったご令嬢でありという、かなり濃いめの主人公だなと思いました。そんなワケで最初の★5判定ふざけております(真顔)。
あと珍しいな~って思ったのが、主人公の家族に関する描写がめっちゃしっかりあるなぁと。
今まで読んできたのだと、突然異世界トリップしてしまったが為に健在である家族と引き離されて具体的にエピソードが語られるいとまがなかったり、既に両親が亡くなってたり、家族は健在で異世界トリップしてないけどあまり家族のエピソードがなかったり。
しかし今作は強烈過ぎるお母様ヴィルマを筆頭に出てくるんだな、これが……www 必ずしも感じのいいとは言えない家族ですが(笑)、何かもう面白くって。無論私の最推しはヴィルマです(`・ω・´)
姉のグレイスは一見リズに当たりがキツそうですが、何とも分かりづらいデレを発揮。これはリズも無表情ながらキュンとくる(笑)。
挿絵での表情も正確キツそうなんですが、よくよく見るとかわいいんですよね。何だか猫みたいだなぁと思いました。
このあたり、グレイスからしたら体が弱いから親に構われていてとびきり美人で何を言われても表情を変えないリズが嫉妬の対象となるのは正直理解できてしまうところ。
ですが、そんなリズから見たグレイスがグレイスには思いも寄らないくらい魅力的に映っているというのが、何だか印象的でした。何かホント、人って外側からじゃ何を考えているのか分からないものだなって。
意外と人間、こちらが勝手に劣等感を持ってしまうだけで(それもまた仕方のないところ)向こうは見下してなんかないのかも。
さて、美人ながらも残念な感性を持ち合わせるリズにジョンはあまりにもお似合い過ぎるというか……www 地の文にも書いてありましたが本当にリズよりもひどい( ̄▽ ̄)
これは残念ヒーロー認定しなくては……(深刻)。ん~でも白月様の方が数段上かな!←
個人的にはメガネ取った方が好きですね(`・ω・´)
そんな毒舌ヒーローなんですが、リズを攫うだけ攫って歪画を見つけさせたら殺すつもりってやることがえげつねぇ……( ̄▽ ̄;) さすが糸森環作品ヒーロー。
ひえって心臓が竦む反面、その恐ろしさに惹かれずにはいられないんですよねぇ。。。糸森環先生の不思議な魔力です。
ここで無力ながらも機転を利かせるヒロインなのがまたいい。
体が弱くて長生きする未来をあきらめていたと思っていたけれど、ここで本当に気持ちが分かるってのがたまらない。
やはり、生きていきたい。
幸せになりたいのだ。
シンプルだからこそすごく刺さる言葉だ。そしてそんなリズに生きて幸せになってほしいと心から想う。
「相手は悪魔だ。「契約は交わすけれど、あなたの意思を尊重する」なんていう甘い発言をしたら、間違いなく身の破滅。いいように操られるのは目に見えている」ってのがまた糸森環作品らしい。こういう甘くなくて甘いのが大好きだ。だって「私を優先して」って要求は厳しくも甘い。
歪画や『至聖の目』、悪魔のシンボルなどなど、細かい設定がこれまた魅力的でたまらんのよ……(。-_-。) 資料集出してくれませんかねKADOKAWAさん(真顔)。
ジョンとリズは主従関係になったワケだけど、師弟関係でもある感じがまた楽しいよね(笑)。リズが自分の好きなことをやれて彼女なりに生き生きしているのがまたいい。
ジョンのめちゃくちゃ世話焼きなところは、お母さん感あるけどね……www
謎の婚約者エミル卿に関するトリックや意図はなるほど、という感じ。結構いろいろ予想外で驚かされた(笑)。呪いの絵とか、歪画の在り処とか。
あのあたり、リズがリズなりに貴族の令嬢として責務を果たそうと努力していたのが好感持てました。何かをあきらめたような人生の使い方だったのかもしれない。でも彼女なりに、自分にできることをやろうとか、希望を見つけようとしてたりとか、すごく見ていて元気がもらえた。
それでいてそのあたりでのジョンの憤りぶりがたまらんよね(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
「お嬢様。自分の価値を正しく知れ。あんたがもしも至聖の目以外に魅力のない女だったら、俺はとっくに殺している」
……物騒でなんて甘い!!!
ここで何かを期待しそうになって、でも「そういう契約だからそんな風に言うんだよね」って言うリズがこれまたたまらん……!!! 普通の少女らしい気持ちと、でもそんな甘い考えでばかりもいられない聡い臆病さと。
人外と人ならではのすれ違い具合ですな。うーんホント好き!!!
「なんだ、愛を乞う勇気はないのか?」
「人間に愛を求める勇気は、悪魔にある?」
……もうホントこのあたりでオトされました(。-_-。)
『恋と悪魔と黙示録』のアガルとレジナ、そして今作のジョンとリズあたりは言葉を交わし合うことが何よりの甘い愛情表現な気がしています。
というワケで、久々に読んだ『令嬢鑑定士と画廊の悪魔』、面白かったなぁ!!!
何気に買ってすぐ読んで以来だったかも? パラパラ読み返すのはやってたけど。
今はいろんなの読み返したい気分なので、すぐではありませんが2巻もいつか読み返して感想上げたいなと思います!!!
余談。
懐中時計が武器的なの、厨二心をくすぐりますな(。-_-。)