鞭展開度:★★★★☆
相反する気持ち:★★★★★
ラストの滾る展開:★★★★★
【あらすじ】
異界で暮らすウィステリアは、ふと気づいた。自分を倒しに来たはずのロイドと、無防備な姿で一緒に朝食をしているではないか。初恋の人に瓜二つのその弟子は、自分の孤独な番人生活が元の世界を救っていることも教えてくれた。これ以上彼に近づけば、きっともう一人では生きられない。そう思って距離を置いた途端、異変が! なぜか魔物が大竜樹を襲撃してきたのだ。「何でも一人で背負うな」。その言葉に背中を押され、一緒に敵へと立ち向かうが――? 帰還【タイムリミット】が近づき揺れる二人を新たな波乱が襲う! 孤独な元令嬢×天才肌の貴公子の師弟恋愛ファンタジー第3巻! 書き下ろし番外編収録!
念願叶っての3巻発売。……やー、本当にうれしい!!! 続きが出ることが当たり前じゃないと痛感しているので本当にありがたや……✨T ^ T✨
……などと感動しつつ、楽しく読ませてもらいました! ……とはいってもやっぱりツライことがあるワケなんだけどね……。というか”あった”かな。途中泣いたよね。
しかしただツライんじゃなくそういったルーツがあるから今のウィステリアに繋がってるんだな、ともうなずけるんですよね。そういうところ本当に永野先生は捉えて離さない。
以下ネタバレあり↓
ロイドに対して、肩の力がかなり抜けてしまっていることを自覚したウィステリア。……挿絵でのウィステリアの表情もかなりやわらかくなったなぁと1巻と比較して感慨深く思ったり。2巻は”脱力””無力”といった印象だったけど、3巻ではよりウィステリアのかわいらしさが引き出されているというか。
これがただ恋愛感情が芽生えた故とかではなく、人と暮らすことに慣れてしまっている、安心してしまっているってのが『恋した人は』ならでは。決してウィステリアが頑固なのではなく、本当に”いつかまた1人(と、一振り)になる”から、今の状態に慣れることに警鐘を鳴らし始めているんだよなぁ。。。
あぁでも、ある種意固地になろうとしているところもあるのか。「この人は自分に好意を持っているのではないか」って、期待するのが怖くなっているというか。
……いやそうもなるでしょうがぁぁぁ!!!!!!
改めてウィステリアの思い出の中のブライトの発言見てみると、「お前そんな誤解させるようなこと言うなよ……」ともうそう言いたい。いかにもチャラい雰囲気がないのが本当にタチが悪い。そんで「ロザリーの代わりに……」って死刑宣告するんだから本当何なんだコイツ………………………………………………………………。
私はのうのうとロザリーと結婚したことを未だに根に持ってるからな(真顔)。
そうそう、今回序章が現在のロザリー目線だったワケなんだけど。
……やっぱり両親とブライトの、ウィステリアを死地に送った後の言動は感心できんなぁ………………………………………………………………。
ロザリーが自分を責めるかもしれないから黙っていたと言えば聞こえはいいけど、自分達がどんだけ醜悪なことをしたのか晒したくないだけじゃん、って私には見えちゃう。いやもうとことんウィステリアの味方なので。
……ロザリーなぁ。好きなタイプなハズなんだけどなぁ。ぶっちゃけ挿絵で久々の登場、小さめとはいえ全身からそのかわいさが伝わってくるもん。
でも「姉様の分まで、ブライトを愛すわ」って傲慢にもほどがあって笑っちゃう。
それ恋が叶わなかった側からしたら何の嫌味ですか??? ってなるでしょうが。そんなの生きてようが死んでようが変わんないよ。聞こえのいい義務っぽく言うぐらいなら自分の愛だけで充分って傲慢でいてくれた方がよっぽどマシ。
そういう自分勝手さを上回る気持ちの悪い傲慢さだな、と思いました。……そして『白竜の花嫁』でもあったなぁ、こういうの……!!!
こういうの突いてくるからこその永野作品なんですよね。味というか。
……ここまで書いててふと思ったんだけど、永野先生の作品って――と言っても『白竜の花嫁』とこの『恋した人は』しか読めてないんで、その2作では――主人公が”弱いまま”進んでいくよなぁと。
いや、何か私の読んできたのって――そして好きなのって――”弱いところから強くなっていく”もので。でも澄白(『白竜の花嫁』の主人公です)もウィステリアも、弱いまま話が展開していく。
……うわぁ!! 何だそれおもしろ!!!
あくまで私の感覚なんだけどね(笑)。でも最近、”弱さ”の描き方について考える機会がありまして。
ちょっと話ズレちゃうんだけど、『ノルン+ノネット』っていう乙女ゲームがあるんですね。なんとヒロインが3人いてそのヒロイン達もフルボイスという神ゲー……いやそれは置いておいて。
公式サイトURL貼っときます→ NORN9 LOFN for Nintendo Switch (otomate.jp)
それで、そのファンの方がツイートしてたんだけど、『ノルン』の公式ファンブックで「弱いままでも人は幸せになれる」がテーマのひとつ、と書いてあったそうで。
……これ、すごくないですか? 少なくとも私にとっては衝撃的だったんです。強くならなくちゃ幸せになれないと、心のどこかで思っていたから。
……で、澄白もウィステリアも”弱いまま”であることに、何かすごい感動を覚えてしまったんです。
もちろん、ウィステリアは絶望にまみれて異界に追いやられて、サルティスがいてくれたからどうにか正気を保てて、魔法もできるように頑張って鍛練して、澄白だって彼女なりに懸命に考えて行動して、刊行されている中での最終巻では何かひとつ前を向けるかもしれない”気付き”を得ていて。それだって強さといえば強さで。
もしかしたら、ウィステリアはこれからゆっくりと強くなっていくのかもしれない。そう簡単に強くなれないだけで。
それはそれでめちゃくちゃ楽しみながら読むし、もしかしたら心を踏まれた傷跡はずっと消えず、弱さを一生引きずることになったとしてもやっぱり読み応えがすんごい。
果たして”弱いまま”描かれるのか、彼女なりの強さを得るのか。わーすっごく楽しみになってきた!!!
何かめちゃくちゃ自分論入っちゃいました、こっからはちゃんと本編。
……3巻まで来てようやっと思ったんだけど、ウィステリアがいまいちロイドにオチないの、ロイドにも問題がある気がしてきた……www
1巻からロイド目線がちょいちょい入らなかったらぶっちゃけウィステリアのこと好きか分からんもん!!!www いや本気で心配して本気でウィステリアの為に怒ってるの見れば分かるか。
とはいえ、ウィステリアに対するからかい方がなぁ……明らかに慣れてる人のそれだもんなぁ……www そりゃウィステリアもどれだけワタワタしても最終的には「ただのからかい」で済んじゃうよ。ロイドが悪い( ̄▽ ̄)
ロイドのからかいと言えば、それでめちゃくちゃペース崩されるウィステリアにサルティスが横槍入れるのがホント好きでさぁ……www
ロイドとサルティスの間にあるものがすごく冷ややかなものだってのは分かってるんだけど、それでも面白くって仕方ない(笑)。いいぞサルティス、もっとやれ(暗黒微笑)。
あの無駄にある語彙力は何なんだホントwww 反射でツッコむウィステリアがまたいいよね( ̄▽ ̄) ……あれが20年かけて作り上げられた漫才……(ゴクリ)。
そういうやり取りが楽しい一方で、今回はコーラルのエピソードが結構に胸にキたなぁ………………………………………………………………。
胸をかきむしりたくなるような深い悔恨と、怒りと、絶望と。
「ここで待ってて」って言ってしまった為にコーラルが逃げずに殺されてしまったのはあまりにもキツイ。殺したディグラが何もかも悪いハズなのに、そんなの自分を責めずにはいられない。
前巻の時点でディグラは相当ゾッとする存在だなと思っていたけれど、今回具体的にエピソードが描かれたことでより怖気立つ存在になったというか。。。しかしその一方でこうした”人外”めいた人外が出てくるお話が好きでもあるという。
そうそう、今回はラストの戦闘シーンがたまらなかったなぁ……!!!
分かる人には分かると思うんだけど、児童書で『らくだい魔女』や『魔法屋ポプル』『魔天使マテリアル』なんかを読んで育った私的に、物語のラストででっかい戦いがあるのはもうたまらんのよ(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾ ……女の子向け児童書って意外とバケモノ退治しとるんよな( ̄▽ ̄)
そんなワケで、少女小説でもそういう戦いしてほしいな~ってのが!!!! 私の密かな望みだったんよ!!!!!
なので今回めちゃくちゃアツかったです。ウィステリアもロイドも本当にギリギリ。直接的に戦闘の手助けができるワケではないサルティスがどれほど支えになるかも今回特に実感することとなり。
それと、今回は異界の生物の異変を調べるということで今までのデータを踏まえて話し合ったり実際に現地に様子見に行ったりと調査パートが多くてそのあたりも楽しかったです(笑)。
ちょっと前に上橋菜穂子先生の『香君』読んでた時の興奮がフツフツと……!!! 小説における生物調査の楽しさたるや(。-_-。)
最後とうとうウィステリアの初めてのキスに至るワケなんだけど、あれはキスっていうか人命救助だからさすがにときめくどころじゃなかったなぁ。。。
正直どっちも心配です。瘴気を明らかに致死量吸ってしまったロイド、それを吸着で自分に取り込んでいくウィステリア。……ロイドはとりあえず瘴気を体から出してもらったけど、あんだけ吸ってしまったら元の世界へのタイムリミットがさらに迫ってくる?? いくら瘴気に耐性のあるウィステリアでも今回はヤバイのでは???
次巻も本当にどうなるか分からない。楽しみ過ぎる。
そしてもう4巻発売決定がTOブックスさんより通知されましたね!! 改めて、本当にうれしい!!!
少女小説にもっと鞭展開のが増えてほしいなって思っていたので、『恋した人は』がたくさんの人に大事にされているのは私にとってもう勝訴案件です(?)。
コミカライズもとうとう始まって……!!! 私は単行本派なのでコミックの発売をワクワクしながら待っております。
あーーーホント4巻どうなるんだろ!?!? まずは2人の無事を祈ろうかと……_:(´ཀ`」 ∠):
余談。
ウィステリアに「ヒマだから連れ出せ」って言うサルティス、かわい過ぎる(笑)。