鞭展開度:★★★★☆
未来へ:★★★★★
自由の道は:★★★★★
男神と女神によって作られたという神話のある、広大な十津島。薬師だった父の志を継ぎ、自身も薬師となった少女アサは、女の身では危険も多く侮られるため、いつもは男装していた。アサは父の遺言に従い、島の北側にある、先進知識が集まるという町を目指して旅をしていた。ところが旅の途中、大陸からの侵略者である馬賊に捕らえられ、奴婢とされてしまい……?
以前読んだ『青の女公』があまりに面白く、その作者さんの上下巻新作が来月発売されるとのことで、他の作品も読んでみました! ……そして面白かった……!!!✨
大河ファンタジー的な歴史モノで読み応えがすんごいです。昔の時代らしいむごい理不尽の中で未来へ進もうとする登場人物たちがすごくいい。これは来月の新作も読まねばと改めて思いました(`・ω・´)
以下ネタバレあり↓
『青の女公』とはまた違った異民族感溢れる世界観。うーんとても楽しかった(。-_-。)
こうした、日本とも中国とも違うオリエンタルファンタジー感溢れる世界観もまたいいですね。多分馬賊のみなさんは(この丁寧だかそうじゃないのか分からん言い方よw)中国的なアレだと思うんですが。
そんなワケで世界観的には新鮮で楽しかったんですが、
いきなり主人公の旅の同行となったナツメとイサナの首と胴体が離れるなんて誰が思う……!!!(頭抱え)
すぐ隣で、さっきまで当たり前に生きていた人達が物言わぬ死体になるという恐ろしさ……_:(´ཀ`」 ∠): 決して思い入れのある仲じゃないどころか、ほんの半月……以下同行しただけのこと。それに同行を断り切れなかっただけで、アサからすれば秘密を知られまいとする少し警戒していた相手でもあります。
……それでもさすがにこれはショックやて……!!!(汗)
『青の女公』でも似たようなショックを味わっていたんですがここにきてまたもや……_:(´ཀ`」 ∠): もう本当にこの方のお話はいつ誰が死んでもおかしくない(T ^ T)
アサもかわいそうだし、目と鼻の先で家族を殺されたヨミもかわいそうで仕方ない。。。本当にお互いが頼りというか。
しかしヨミ、まだ10代前半とはいえ王族というだけあってしっかりしていた。……いや、だからって悲しくない、辛くないってことにはならないんだけど。
どこかアサとは違う、達観したものの見方をしていてびっくりしました。
まさに蛮族の洗礼を受けたと言っても過言ではない序盤です……。いやはや、本当にショックが強過ぎた( ̄▽ ̄;)
奴隷も同然の扱いとなったアサとヨミですが、理解を示してくれる士元がいたり、皇女は国の未来を私利私欲ではなく民の為に考えていたり、さらには自分と同じ朝児で気さくな王子・季晨が現れたり。……正直、何人かでもアサを貶めるばかりでない人がいるだけでもホッとします。
そんなアサは相も変わらず女であることを隠しているワケなんだけど、彼女の恋愛観(?)……みたいなものが、かなり好きで。
薬師であり女であるアサは、”便利だから”求婚される。妻になったら未来を奪われる。妻は、夫の所有物と変わらない。
こういう時代観でありアサ自身自由を奪われたくないタチなので、イサナに「娘であれば妻にしたかったのに」と言われてもうんざりするばかりという……www
ウーン、本当にその通りだなって思って、少女小説ばかり読んでいる私でもこのシーンはキュンときませんでした(笑)。随分と勝手なことを言ってくれるよなぁと呆れた感じ。……だからって首と胴体離れてほしかったワケじゃないんだけどね!!!!!!(汗)
ただ、アサとイサナが見つめ合うシーンがあって、そこでアサが何も感じなかったとは思わないというのもあります。上手く言えないのですが。
そして季晨という、木の上から果実を投げるならって人が現れても、お互い惹かれていても。アサはやっぱり、自由でありたいんですよね。
何かその、好きな人とずっと一緒にいることだけが幸せじゃない感が好きというか。
季晨の妃になってしまったら、あまりにも重いものを背負わされる。一生籠の中にいなくてはならない。それはやっぱり、アサにとっては不幸なんですよね。季晨も他の男たち同様に自分を所有物と考えるのかと思ったらそれだって悲しい。
こういった、女には特に自由が少ない世界観の中で、自分が女だと季晨に知られ涙し、「婚姻以外なら何でもやってやる」と本当にやり遂げたアサはあまりにも格好いいなと。「知られたくなかった」というその涙さえ格好いい。
にしてもこの2人のやり取りは本当にいいですねぇwww 何かお互いとんでもない発言をしてしまって「ん?」ってなるのとか最高です(笑) 季晨がアサがヨミを大事にしていてそういう仲なのではとムッとしたりねぇ(。-_-。)
アサがあまりにも結婚以外で環を救うことには前向きなので「そんなに嫌か」と言ってるところは笑っちゃいましたwwwwww
そばにいたいって思いはあるんだけど、本当に最後まで、そうしてアサを縛らなかった季晨はずっと格好よかったです。「葦毛馬にも意志がある」というセリフも印象的でした。
お別れになったけれど、2人の想い合う様は本当に格好よく、そして愛おしかったです。
そうそう、このお話では「馬賊」だの「奴婢」だの「朝児」だのと差別意識が根強い世界観だったワケですが、その中で慈堅のエピソードもかなり根強かったというか。。。
主人公が差別対象にある民族なり見た目だったりというのは珍しくありませんが、だからといってその主人公ばかりが差別されるのではない。同じ者もまたいて、主人公の知らないところでひどい扱いを受けている。これは私の中であまりなかったパターンで、だからこそ慈堅がそれほど酷い扱いを受けていたと知った時は衝撃でした。
そして、アサが自分が差別的な呼び方をされていたことを、自分の為ではなく、慈堅の為に止めるべきだった、と後悔するのが、あぁなるほどなと。
季晨が「葦毛馬にも意志がある」と言っていたように、朝児にだって意志があり、知識だってある。
だから、まずは自分の為に怒っていいと、私は思います。でもそこで怒ったって余計に追い込まれることだって多々ある。だから無難な笑みを浮かべ、嵐をやり過ごす。それを悪いことだとも思わない。
けれど、こっちの方が効きますよねぇ……!!!(笑) 未来の為に、これからの自分と同じような立場の人の為に、これを許しちゃいけないんだって方が。何というか、奮い立たせられます。
北定公に黙って殴られるのではなく、全力で倒してみせたアサもまた格好よかったです。
私は最近の持論として「人間はサンドバッグじゃねぇんだぞ!!!」を掲げているので(どういう)、ここのアサには拍手喝采でした(`・ω・´)
……しかしそれで「ざまぁみろ!」となれるのではなく死刑に結びつくというのは、恐ろしいところですね。この時代観らしい容赦のなさです。「斬」を偽らず伝えられたアサは本当にがんばった(泣)。
本当に最後までどうなるか分からないこのストーリー、いつどこで誰が死んでもおかしくなかったし、長い年月をかけた壮大な計画の中にアサも組み込まれていたので環を一生出ない可能性も覚悟して読んでおりました。
……アサが環を自由の身として出発できて本当によかった!!!(泣) ヨミとのお別れ、季晨とのお別れ、それぞれのシーンも本当によかったです。どちらもそれぞれの強い意志が感じられて素敵でした。
皇女様は憎み切れなかったなぁ。。。国の未来の為に冷徹な決断ができてってところが。人間らしさが欠片も見当たらないんだけど、でもやっぱり、新しい未来を築いてくれた人だ。
最期まで国の為に戦っていた。季晨が生きていると、生きている間に知ってほしかった。
――斬、の一文字が凄まじかった。
小さなこととしましては、星辰剣が天から降ってきた星で鍛造されているというのがとてもテンション上がりました(笑)。FGO民なので(`・ω・´)
そしてあくまで言い伝えでしかないかと思いきや、アサの「重い!」の一言に「星の一部だからな」との季晨の受け答えがたまりません。……ろ、ロマンがここに……!!!✨
そんなワケで、最後まで楽しく読ませていただきました! ひとつの激動の時代を見届けた達成感……(。-_-。)
来月の新作は上下巻ということで、「そんなにも長いこと楽しませてもらってもいいんスか……⁉」と私がザワついております。その新作感想で会える日まで!!!
余談。
「葦毛」という言葉は知っていたが、色は本作で初めて知った(真顔)。