『春夏秋冬代行者 春の舞 上』(暁佳奈/電撃文庫)

電撃文庫

鞭展開度:★★★★★
恋や恋に近い感情の深度: ★★★★★
少女の覚醒度: ★★★★★

【あらすじ】
「春は――無事、此処に、います」
 世界には冬しか季節がなく、冬は孤独に耐えかねて生命を削り春を創った。やがて大地の願いにより夏と秋も誕生し、四季が完成した。この季節の巡り変わりを人の子が担うことになり、役目を果たす者は“四季の代行者”と呼ばれた――。
 いま一人の少女神が胸に使命感を抱き、立ち上がろうとしている。四季の神より賜った季節は『春』。母より授かりし名は「雛菊」。十年前消えたこの国の春だ。雛菊は苦難を乗り越え現人神として復帰した。我が身を拐かし長きに亘り屈辱を与えた者達と戦うべく従者の少女と共に歩き出す。彼女の心の奥底には、神話の如く、冬への恋慕が存在していた。
 暁 佳奈が贈る、季節を世に顕現する役割を持つ現人神達の物語。此処に開幕。

 

このタイトルの時点で買わないワケがなかった(真顔)。

しかもあらすじがこれまた面白そう。しかも『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の作者さん。しかも挿絵はスオウ先生。

特典小冊子欲しさにメロンブックスで初めて購入するくらい買う前から期待値爆高かったです。そしてその期待値を遥かに上回る素晴らしい作品でした(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾

神様の力を宿す人達、彼らを取り巻く人々の、まさしく『人』が織りなす切なくも烈しい物語に上下巻徹夜で一気読みしました👍

 

以下ネタバレあり↓

 

 

さすがは『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の作者。

と言わざるを得ない繊細で魅力的な世界観・辛くて切ない、でもそれだけじゃない恋模様・人間という脆い存在同士が結び合う、時にむごく時に愛しい在り方がそこにありました。

思いが各所に溢れまくっててどう感想書こうか激しく悩んだのですが、上の3つ↑に要所を分けて書いていこうかなと思います。時系列で追ってくとマジで延々書き終わらなくなってしまうのよ……www

 

 

魅力その①:繊細で魅力的な世界観

 

↑いや「魅力」って言葉2回使っとるがな。というツッコミはさておき。

まずこのタイトルから魅力的なんですよね。『春夏秋冬代行者』って。

ここからもう私の大大大好きな和風ファンタジー確定なんですよ(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾ しかも「代行者」ってことは異能を持ってる人が出てくるのでは……?なんて。はい好き。

四季の神様が始まりだったり、現人神だったりとワクワク要素満載でカーーーーーッたまんねぇよ!!!!!となっていたのですが。

 

個人的に印象的だったのが、この世界が「現代日本のような別の世界」だったこと。

少女小説ばっかり読んできていたので、これは結構驚きでした。

少女小説だと、例えば日本のような世界でも平安時代っぽい別の世界や、銃すらもない時代のヨーロッパっぽい異世界が舞台だったりが多い印象があります。現代日本が舞台のもあったりするのですが、そこはあくまで本当にある我々の世界に作者オリジナルのスパイスを加えた感じというか。

逆にラノベだと現代の世界観でありながら架空の世界を作り上げているものは少なくないのかな、と思います。

『春夏秋冬代行者』は作者が女性だったり挿絵がかわいらしく素敵な印象があったりで、ラノベだということをすっかり失念しておりましたwww

普段主に少女小説を読んでいる私としてはとても新鮮な気持ちで読めました。
そして少女小説に関する印象はあくまで私が読んできたラインナップだとという話なので悪しからず( ̄∇ ̄)

一種の現代モノということで、例えば四季庁なるものがあって代行者達を管理していたり、代行者を狙うテロリストがいたりと現代だからこそのファンタジーとの絡み方があってとても面白かったです。特にテロリストの件はなかなかパンチが強く……!!!

 

現人神達の季節顕現や神通力を使うシーンの描写が途方もなく美しくてこれもまた印象的でした。そして楽しい(笑)

生命促進。

生命使役。

生命腐敗。

生命凍結。

この表現が本当に好き過ぎる(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾ ものすごくシンプルにズドンと核心を突いた名称とでも言いましょうか。

個人的には、特に「生命腐敗」がたまんなかったです。そう表現するのかー!!!と驚きつつも大納得でスッキリ(笑)

瀕死の撫子が賊から本能的に生命力を吸収させている描写は現人神そのもの。ゾクゾクすると同時にかなり大好きなシーンでした。

 

 

魅力その②:辛くて切ない、でもそれだけじゃない恋模様

 

何というか、さすが『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の作者さんというだけあって恋模様が苦しく、でもそれだけ狂おしいほどに愛おしい。そう、それほど狂うほどの純真無垢な恋だったのだと思います。

そもそも代行者のはじまりである四季の神様からして恋を知っていますし、冒頭での冬景色を見つめる雛菊の描写がもうたまんない。

高級車の中での狼星が、窓を開けて春の景色を見つめている描写でももう……このときめくとか萌えるとかとも違う込み上げてくる思いを何と呼べばいいんだ……!!!(>_<)

本当に、狂おしいほど愛おしい、というか。

 

「あと少しだけ待て。俺にとって、十年ぶりの春なんだ」

 

このセリフでもうぶわっと溢れてくるものがある!!!(泣)

季節越しに相手を見つめている、否、季節丸ごと愛して相手を感じているようで、もうこれだけで最大の惚気ではないかと。

現人神同士だからこその愛おしい描写でした。そこにはたくさんの傷跡もまたあるのだけれど……。

 

そう、幼い狼星が雛菊に「好きだ」というシーンは泣きながら読んでいましたとも…………………………………………………_:(´ཀ`」 ∠):

挿絵で彼の稚さが伝わってきてより胸が締めつけられる。スオウ先生イラストは神だった……。

雛菊がこれに対して答えを言わないでおくのもまたね……!!!

結果として2人にとっての空白の10年間はあまりにも長く、あまりにもむごいものになるワケで。

けれど確かに、恋がそこに在るのも確固たる事実。

傷だらけでも大事で最早自分の体の一部となっているような恋が報われるのを信じて、それを見届けたくてページをめくっていたのは確かです。

 

それと春夏秋冬それぞれの主従があるワケですが、個人的に春と秋の主従は「恋に近く、でも恋よりも深い」関係なのかなって思ったり。というかそう書かれてますねwww

夏と冬は違うかなーwww
冬は男同士らしい信頼故のお互いへの雑さがあったりするし(見ていて笑ったwww)、夏は本当に血の繋がった姉妹だからこその拗れてるところあるし。

なので魅力その②とした“恋模様”については、春秋あたりの主従関係のことも言っていたりします。

さくらの「好きと言って」はあまりにも切ない。。。

 

 

魅力その③:人間という脆い存在同士が結び合う、時にむごく時に愛しい在り方

 

現人神とは言いつつも、やはり精神構造は至って普通の人間なんだなと私は感じさせられました。

 

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』が、大事な人を突然奪われる理不尽を容赦なく突きつけてくる作品だったのですが(無論それだけではなく)、それは『春夏秋冬代行者』でも顕在であり。

この作品の場合は、精神というものの脆さをこれでもかというほど突きつけてきた作品だったなと思います。現人神や護衛官に限らず、現実世界に生きる読者陣にとっても他人事ではいられない。それぞれの、もう元には戻れないほどの傷を負って形が変わった心に激しく胸が痛みました。

例えば「今の雛菊は違う」と悲しげに言う、肉体年齢とどこかちぐはぐな幼さにある雛菊。

例えば「俺が死ねば良かったのに」とずっと自分の心に杭を打ち、『死にたい』に苛まれ続けている狼星。

個人的には1番さくらが印象的だったかなぁ。。。

雛菊を探し続けていた間の自分を追い込んで追い込んで追い込んでいく感じがすごくうわぁってなりました。

雛菊一筋なところが面白くもありかわいくもあり、って感じでもあるんだけどねぇ。。。さくら視点でハッキリと「依存」と称しているのがめちゃくちゃキツかった。

冬への憎しみも本当に心底憎んでいるワケではなくて、それがないと立っていられないとか。

凍蝶への恋慕だって、捨て切れてなんていない……というか意識しまくってますやん逆にというwww

何だよ、本当は全部自覚してるんじゃん……って。私からすれば、そんなさくらはごく真っ当な普通の人間なんだと思いました。

髪が白くなるほど死に物狂いで雛菊を探し続けていたんだよね……_:(´ཀ`」 ∠): その凄絶な歩みは他の誰にも分かるもんじゃないんだなと思いました。

誘拐された雛菊の描写も本当にキツかった………………………………………………………………。

女の子が誘拐される時点でどんな目に遭うかなんて分かってしまうんですよね。黒いページのところは本当に厳しい顔で読んでいたと思います……。

怒りで頭が真っ白になるという体験は初めてだったかもしれない。雛菊が、もう顔も思い出せない大好きな人達の名を叫ぶシーンは、本当に辛かった。

けれどそういったむごい人の在り方だけを見せて終わらないのが『春夏秋冬代行者』。雛菊とさくらの「復讐」がここから始まるのです。……ワクワクしましたね、このワードに(ニンマリ)

四季それぞれが立ち上がり手を組む展開はめちゃくちゃ胸アツでした!!!(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾ こう、ジャンプでも読んでいるかのような……!!!

さくらと狼星の電話でのやり取りが好き過ぎる👍

何かここまでめっちゃ長々語ってきてるしいつの間にやら敬語ばっかになってるな???て感じなんだけど読んでた時の感情としては

雛菊と狼星はいつ会える!?!?いつ会える!?!?!?、

……会えないんかーーーーーい!!!!!!(泣)

……と、やきもきやきもきし最後に頭抱え込んだワイでした。いやだってこんなん絶対好きなカプですやん……(頭抱え)

最後の展開があまりにもアツくてそのまま下巻に突っ走ったワイなのでした( ̄▽ ̄)

 

下巻感想へ続く〜

コメント

タイトルとURLをコピーしました