『春夏秋冬代行者 夏の舞 上』(暁佳奈/電撃文庫)

電撃文庫

鞭展開度:★★★★★
未発展な恋:★★★★★
再起せよ:★★★★★

【あらすじ】

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』暁佳奈が贈る四季の物語、再び。

「汝の名は『夏』、春に続く者」――
 かつて、神々たる四季は、人間の一部にその力を与えた。春、夏、秋、冬。それぞれの季節を顕現する者は“四季の代行者”と呼ばれ、権能を得た彼彼女らは、人の身でありながら季節そのもの、つまり、現人神となった。
 時に黎明二十年、大海原に浮かぶ島国『大和』は激震に見舞われる。春の少女神、花葉雛菊の十年ぶりの帰還。過激派【華歳】による夏、秋への襲撃。そして、過去に類を見ない春夏秋冬の共同戦線。
 数多の困難を経て、勝利を収めた四季陣営だったが、ここで一つの問題が起きる。夏の代行者、葉桜姉妹が史上初の「双子神」となってしまったのだ。これは吉兆か、あるいは、凶兆か。季節は夏。いま再び、代行者たちの物語が幕を上げる。

とうとう待ちに待った夏がやって来ましたよ皆の衆……!!!✨

きっとこれもまた夏姉妹にとって過酷な道だろうし『春の舞』でひとつ前に進めた春主従、冬主従も完全に心の傷が癒えてるワケじゃないんだよな、と思ってはいたもののどれも相当なモノでした。

思ってもみない過酷な戦いのはじまりと、それぞれの思い。時に涙し時にニマニマし時に奮い立たせられながら一気に上巻・下巻と駆け抜けました。

 

以下ネタバレあり↓

 

 

 

『春の舞』メロンブックス特典小冊子を読んでいたにもかかわらずその内容を忘れあやめさんと連理さんが嘘の婚約者であることに驚いていたトリ頭は私です…………………………………(懺悔)。

上下巻読み終わってからメロンブックス小冊子確認したらめっちゃ普通に書いてありました。申し訳。

……まぁ『夏の舞』で新鮮に驚けたからいいか!!! とポジティブになるとして。

 

「何で双子神=不吉!?!?!?」なんて思ってたら、いわれもない罪であやめと瑠璃が糾弾されるというあまりにもむごい展開………………………………。

本当に双子神を不吉とする信仰なり伝承なりがあるでもなく、ただ問題をそれこそ”挿げ替え”る為に若い彼女達に傷と罪を負わせるというめちゃくちゃムカつく思想からでしたね。意図が他にあるクセにさも今口にしているのが正論と言わんばかりの松風青藍の態度、どストライクに嫌いですね。やっていることは【華歳】と何も変わりません。

この糾弾に両親までもを巻き込むやり方も卑怯極まりない。里とか現人神とか関係なく、まだまだ未成熟な葉桜姉妹を守るべきなのに。

 

何というか今回は、あやめさんが『春の舞』から更に人間くさく映ったなぁと。

『春の舞』では、読者である私は春主従と共にあやめさん初めましてとなったワケで。しっかりしている方、妹を守る良き姉、女でありながら護衛官として立派に勤め上げている、若くして婚約者もいる、などなど。

結構私の中で、大人フィルターかかって見えていたように思います。『春の舞』下巻で瑠璃が死んだ時こそ後悔や愛情故にわんわんと泣いていたし、メロンブックス小冊子でも彼女なりの今までの苦悩、今抱えている苦悩が見えていました。それでも、私にとっては「しっかりした人」だったんです。何というか、悩み方までもが大人に見えていたというか。

 

……なんですけど、「婚約者は自分のことが好きじゃないのに」と恋心を抱いてしまったが故に悩み、妹を蘇生させたことを糾弾され妹共々婚約破棄されたあやめの弱りようといったら………………………………。

「死体のように横たわっている」「ただ滂沱の涙を流している」といった状態は私も身に覚えがあり、余計に泣けてしまいました。……本当に、何を思うでなくともただただ目から水が流れ続けるあの状態は辛いんです。

 

瑠璃のことも、『春の舞』の時以上に理解できた気がします。

私もあやめと同じく長女なので、どちらかというと、瑠璃のような末っ子気質――と、一言で済ませるものでもないけれど――というものが、あまり理解、もしくは共感できない方です。どうして大っぴらに甘えられるのか、あれほど自由奔放にでいられるのか、分からない。

しかし瑠璃は瑠璃で姉を”神様”という縛りの中に引き入れたくない、でも姉にそばにいてほしい、という葛藤があって。やっぱり■■■方がよかったという悲しい再認識を何度もせざるを得なくて、でもそれを口に出したら家族を苦しめるから、何度も何度も呑み込んで。

……きっとそれは、本当に苦しい日々だった。

大好きなあやめにそばにいてほしい、でも嫌われたくない。いろんな思いが、小さな体の内で暴れていたんだろうなと。

 

……だから竜胆からの電話は普通に信じるでしょうがぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?(怒)

いや、コレ竜胆っぽくねぇな??? とは思ってたよ? さてはお前竜胆じゃねぇな??? とも思ってたよ??

でもあんなに瑠璃がホッとして、いろんなものを吐き出してっていうのを、じっと聞いて、一生懸命励ましてくれる竜胆を竜胆だと信じたのに最後のアレはホラーかッッッッッ(汗) シンプルに怖いわッ。

夏姉妹と竜胆という組み合わせが大好きな私は心をしっちゃかめっちゃかにされましたよ………………………………………………………………。

 

あの電話こそ偽の竜胆だったものの、そこから行動に移す瑠璃はスゴかったなぁ~。。。飛行機の予約電話しながら済ませてたのホントやりよる( ̄▽ ̄;) 電話の向こうの偽竜胆もギョッとしてたなww

やることが見えて後は行動するだけってなると、瑠璃はホント強いね。文章からも夏の眩い、清々しい風が吹き込んでくるようで、こっちまで気分が上昇したや。

……よく失意のどん底にあるあやめを連れて来れたなぁって思ったけど、なるほど瑠璃がぜーんぶ引っ張ってあげたのね(笑)。むしろそのくらいの状態じゃなかったらあやめを竜宮までなんて連れて行けないか。。。すっかり立場の逆転してる2人に姉妹っていいなと少し微笑ましくなったり。

姉妹の壊れたが故の愛に、それでもあったかくなりますよね。

 

この上巻で結構な割合姉妹がどん底にあった中、癒しになるのが春主従なワケよ………………………………。

遊園地での冬主従との待ち合わせ、春主従のイチャイチャがどれだけ心を潤したのか筆舌に尽くしがたい。一生やっていてくれ見守るから。←

冬主従との待ち合わせってのがこれまた心を癒してくれるワケよ。。。さくらが冬の援助を前より素直に頼れているのもホッとする要素。

 

凍蝶が最初に雛菊の装いを褒めているの、さすがですね~(笑)。狼星はそれでぐあーってなるほどガキじゃなかった( ̄▽ ̄)

凍蝶への恋心にむしゃくしゃしちゃうさくらは微笑ましや微笑ましや……。凍蝶、もっとかき乱してやって(笑)。

春の神様と冬の神様の恋路はどこまでも尊い……✨T ^ T✨ 初々しい雛菊様と一途な狼星……ムフフ……(。-_-。) 「恋心で死にそうになった」って表現が心底好き過ぎる。……そうですよ、人は恋心で死ねるんですよ~(笑)。

 

本編的には、前巻の最後でやっっっっっと会えたところだからね!!!

その後公式の方から微笑ましいSSがたくさんいただけて季節の移ろいの数だけ萌えをいただいていたけれど、本編として考えてみるとあまりにも待ちに待った瞬間。こういうちょっとしたやり取りがただただ愛おしい。

遊びに行くことまでできてるっていうのがまたね!!! そういう平和がもっと春夏秋冬に降り注ぎますように。

 

さて、春と冬は再会を果たし、それぞれの在り方を受け入れておずおずと手を取り合えたワケなんだけど。

それで何もかもが癒えるワケではないんだよな。。。

そこはさすが暁先生というか、彼女達の心を見逃さないし全部丁寧に掬い上げてくれる。

 

「……俺だって……君を残して大人になりたくなかったよ……」

 

……やっぱり1番突き刺さったのはこれかな。

これもまた、弱り切ったあやめさんに対してと同じ、このセリフに敏感になるような心になっていて。だから余計に泣けた。

そうして、残酷に奪われた時間もまた、平和な時間と平等に過ぎていってしまうことを狼星のこの言葉で痛感する。

挿絵での狼星の涙する表情が悲しい。狼星と雛菊の身長差が悲しい。雛菊のあどけなさが悲しい。私は雛菊のこと大好きだけれど、そのまま「かわいい」と口にしていいのか、時々迷う。

 

両想いなのにというもどかしさもあるけれど、心の傷が2人を簡単には踏み出させないようにしているのが悲しい。けれど納得もする。

他者から容赦なく踏みにじられた心は、もう元には戻らないんだなと改めて痛感する。痛感しながら、歪でもいいから幸せになってほしいと願わずにはいられない。

 

同じく苦しいすれ違いの中にいるのが、ウソの婚約者である連理とあやめ。

あやめ視点だけ見ても、連理さんはあやめさんのこと好きな気がしていたけれど、恋心を決めつけるのも良くないかなと思い連理さんについては「ナゾ」をキープ。……結果として好きだったワケだけれど。

 

さっき、あやめさんを大人だと思い過ぎていたというようなことを書いていたんだけれど、スオウ先生の画力によるところも実は大きく。

……何というか、こう……瑠璃に比べて、あやめさんの方が色気があるように見えたというか……(笑)。

女の私でも「おぉう……」と思ったくらいです。←

 

……なのでよりあやめさんが大人に見えていたんですが、見てくださいよ挿絵で連理さんを見上げるあやめさんの表情!!!!!!(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾

無防備過ぎるこの表情(真顔)。これを見て、「あぁ、普通の女の子なんだな」って実感して安心する。……この後ボロボロに打ちのめされるとしても……。

そして暁先生、本当に恋の描き方も素晴らしい。春と冬の恋とはまた違うキュンキュンが詰まってて息が止まるかと思ったわ(真顔)。

ちょっと苦しいというか、ほろ苦いのがまたね。。。「連理さんとは嘘の結婚なのに」とか。「瑠璃を見捨てているクセに」とか。真面目で、人を思いやることができるからこその苦しさがまたたまらない。

 

そんな調子で、「あれ、そういや雷鳥さんなかなか出てこんな」と思っていたら唐突に登場雷鳥さんーーーーーwww

……何か……、公式ツイッターからの情報で何となく知った気になっていたけれど、思った以上に漂う変態感……( ̄▽ ̄;) 狼星と似てるなぁと思っていたんだけど狼星よりずっと変態ですね(真顔)。多分敬語なのが余計に変態性を高めている。

なかなかブッ飛んだヤツですが、多分四季の代行者の婚約者や護衛官ともなるとこのくらい変態じゃないと務まらない気もする。うん。……何回変態って書いてるんだ私。

そんなワケで雷鳥さんに誘われ、しかし自分の意志で、連理さんも”異常者”へとレッツゴーするワケですな👍 いいスタートです。

 

それと今回初登場ということで外せないのが黄昏の射手・巫覡輝矢。

……またちょっと今までと違うタイプが来ましたねぇ(笑)。気だるい若オジサンというのが最初の印象です。

 

奥さんと守り手が突如いなくなって失意にあったということで、ものすごく、神様特有の心の傷を見せられたというか。。。

それでいてものすごく”善良な大人”なんですよね。雛菊誘拐の事件に密かに胸を痛めていたり、蒸発した慧剣達のことを未だに気にかけていたり。私はこういう大人が『春夏秋冬代行者』に出てきてくれたことが本当にうれしくて。

だって本来、全身全霊で守るはずの大人達が未成熟な春夏秋冬を守ってくれない。利用しようとして、平気で傷付けてくる。凍蝶と竜胆は間違いなく大人だけれど、さくらやあやめは大人にならざるを得なかった。

 

あと初登場でめちゃくちゃ愚痴っぽいのがいいなと思いました(笑)。何かもうね、ホッとする(笑)。

それと月燈さん達とのやり取りが本当にいい……!!! めちゃくちゃ気兼ねない関係じゃん!! 楽しそう!!! 飲み会の光景ずっと見てたい。

月燈さんの輝矢さんへの純真さがまたいいんですよねぇ(。-_-。) あと最近私の中で背の高い女性がキテいるので月燈さん高身長なのめっちゃツボです(`・ω・´)

 

安心できる大人といえば、花葉残雪もそうなると思っていたのに………………………………………………………………。

いや、別に悪いことしてないんだけど、残雪の思いがけない行動がちょっと時の残酷さを表しているような。。。

 

私ですね、凍蝶とさくらのすれ違いコント(?)大好きなんですよ。さくらの恋は応援しています。でも、この絶妙な2人のかけ合いを――ある意味天然ストレート発言かましまくる凍蝶とそんな凍蝶に恋心故にむしゃくしゃするさくらを――しばらくは眺めていたいなぁ~と。

さくらもまだ自分の恋に踏み切ることも吹っ切ることもできない段階だし、凍蝶もさくらのことが大事なのは確かなんだけどそれがさくらの凍蝶への想いと同じ色合いなのかは分からない。だから、これからはまぁ春主従・冬主従で遊園地にも遊びに行けるほどの仲になったワケだし、狼星と雛菊のように、ゆっくり、じっくり自分の気持ちと向き合っていけたらいいなと。

 

しかしそうのんびりとは構えさせてくれない事態がこうして起きるんだなぁ……(汗)。竜胆もいる前でプロポーズというのがこれまた。

ただ、至って友好的なさくらの表情を見る機会が雛菊以外あまりないので、対残雪の笑顔が挿絵で見れたのはめちゃくちゃうれしかったです。さくら、笑顔かわいい(。-_-。) 雛菊はこれ以上の笑顔をいつも向けられているんだろうなぁ~(笑)。

 

このシーンで狼星がまったく躊躇なく2人の会話に割って入ったのさすがだなと思いましたwww そういう白黒ハッキリしてるところ好きだよ~( ̄▽ ̄) お前はさくらを応援してるんだもんな。

さて凍蝶はどう思ったのやら。。。残雪を「花盗人」と表現するあたりでもしやと思ったり。

 

さくら・凍蝶あたりに穏やかじゃない風を持ち込んだ残雪、妹に対して芯がまったくおブレになりませんね。雛菊の味方……であることは違いない。

さて、わたくし物語で時折ある昔のたった1度の出会いをその後ずっと、献身したいと思うほどに覚えている」という状況が、実感が持てずにいました。その後ずっと一緒にいるんならまだしも、1度の出会い以降離れて……ってなって、そんなに強く相手を想い続けることって、実際にできるんだろうかと。

 

連理のあやめへの気持ちは、毎日会うワケではないけれど、夏の里にいる限り夏の護衛官であり姉であるあやめのことは、いつだって意識にのぼるワケで。時折は姿を見ることもあるワケで。日々簡単に、心がことりと音を立てずにはいられないだろうなと。

 

そんなワケで、「1度しか会っていない」人に対する深い思いはどこか、”物語でしかあり得ない”とさえ思っていました。本当にそういう経験がある人がいたら、その思い出がずっとキラキラしたものであるといいなと願いつつ。

なんですけど、花葉残雪のこれは。。。

何だかこれは、”物語的”というよりも、「あぁ、これは忘れられなくなるよな」と思わずにはいられないような。

こうやって心に焼きつくこともあるんだな、と思った黒いページでした。

 

……いや、あの……『夏の舞』にもしっかり黒いページあってヒッてなったよね……( ̄▽ ̄;) 『春の舞』でも黒いページに何度泣かされたことか_:(´ཀ`」 ∠):

葉桜姉妹のくだりにも胸が締めつけられたし、花葉残雪のエピソードもまたしかり。それと”獣”に関する描写が引っかかる。。。もしかして彼もまた腐った里連中に消費させられていた?(口悪)

 

そんなこんなで、たくさんの痛みと恋に溢れた『夏の舞』上巻も面白かったなぁ~!

葉桜姉妹と輝矢さん――夏と黄昏の邂逅で終わるのがまたアツイ。「これからさらに面白くなるぞぅ……!!!」と滾る。『春の舞』上巻の終わり方もめちゃくちゃアツかったの思い出した!www

それと書きそびれていたんだけど秋主従は1番安定していますねwww 正直やり取りが読んでてハズイのよ……www 『夏の舞』終わったらこの2人の物語に行くのかな???

一気読みしてとうに読み終わっているので下巻感想もゆっくり書いていこうかなと思います(。-_-。)

 

余談。
……オバケが平気な雛菊様……www

 

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