『春夏秋冬代行者 暁の射手』(暁佳奈/電撃文庫)

電撃文庫

鞭展開度:★★★★☆
自罰の輪廻:★★★★★
そばにいて:★★★★★

【あらすじ】

彼の者の名を「花矢」という。新たな現人神の物語、開幕。

「彼の者の名を『花矢』と言う」
 季節は、如何にして齎されるのか?
 その問いに人の子らはこう答える。
「四季の代行者」が神々より賜りし権能で春夏秋冬を大地に巡らせるからだと。
 では朝と夜は? 同じく人は告げる。
「巫の射手」が空に矢を放ち、その矢が朝と夜の天蓋を切り裂くのだと。
 黎明二十年、島国『大和』の北端に位置する大地エニシに一人の少女がいた。
 姓に神職を冠す巫覡の一族の末裔、代行者と同じく神の御業を担う者。大和に朝を齎す「暁の射手」その人だ。
 少女花矢は今日も民に紛れ学舎に通う。
 傍に美貌の青年を従える彼女が、大和にただ一人の『朝』だとは誰も知らない。
 花矢と弓弦。少女神と青年従者の物語は、いま此処から始まる。

待っておりました『春夏秋冬代行者』シリーズ最新作……!!!

ということで今回もワックワクで読ませていただきました。主従それぞれの形があり、前回『夏の舞』では黄昏の射手も登場。季節の現人神と朝夜の現人神の違いも分かってきて、なおさらいろんな形の人と人のつながりを感じられました。

秋主従とはまた違うドキドキ感がありますね、暁主従は!!!(笑)

 

以下ネタバレあり↓

 

 

 

……何というか……これまで見てきたどの主従ともまた違う距離感の主従だなと……。

序盤は妙にドキドキさせられました(笑)。秋主従の甘々ぶりに毎巻アテられている我々読者ですがww、それとはまた異なる面映ゆさがございますね。

撫子の場合竜胆との関係で主導権を握っているものの、やはりまだ幼子。対する暁主従は女子高生という少女と女性の間にいるとても曖昧な年齢(そこがこの年頃にしかない魅力ですよね)の主と彼女より年上とはいえまだまだ若い青年従者。

……何というか、ある種1番手が届く恋に見えるというか……(笑)。距離感近くて勝手にドギマギしておりました( ̄▽ ̄)

 

……でありつつ、主従としてはまだまだ初々しい印象が。弓弦が大事だからこそいつでも自由になっていいんだよと手を放す準備ができてしまっている花矢といやいや離れませんよそんなこと言わないでくださいな弓弦。

何だかこれは新鮮でした。あの雛菊でさえ世界で1番大事な女の子であるさくらと運命共同体の覚悟が出来上がっているので。「さくらがいないと立ち上がれない」という言葉が思い出されます。

でも、何というか、だからこそまだ在り方が定まっていないこの主従にずっと感情移入していたように思います。

 

この『暁の射手』は、いわゆる人間の手による悪意の事件ではありませんでした。賊が花矢達を襲いに来たなんてことはなく(冬主従は襲われていたようですが……( ̄▽ ̄;))、里の者達によって追い詰められ、挿げ替えを企てられていたなんてことはなく。……まぁ巫覡の者どもに言いたいことはたくさんあるのですが、少なくとも今回の事件の犯人ではありません。

今回は珍しく、悪者がいない話だなと思いました。

 

だぁれも、悪くない。そうとしか言いようのないような。

 

でもだからこそ、感情移入できるものが多い話でもありました。今までのを思い返してみても、賊や里の者といったどう考えてもお前らのせいやないかいこの野郎な存在がいても自分を責めてしまうのが代行者や護衛官たち。

それがこうして、誰も悪くなくても、やっぱり「自分のせいだ」と責めてしまうのが花矢という朝の神様で。

こんな本当に、天災というどうしようもない事態でも、どうしても自罰が顔を出す。これってきっと、いろんな人が体験してきていること。大事な人が傷付いたら、そう思ってしまうという人は、必ずいる。

 

だからもう花矢目線は泣いてしまうわな~~~~~(泣)

自殺願望が「死にたい」ではなく「死ななくては」なのも何だか生々しい。。。

 

弓弦が大怪我を負った件ですが、花矢と一緒に体温が下がっていくようでした。

多分コレ幻術使っているな、とは思ったんです。でも怪我を見えなくしているだけだろうと思っていました。

……そしたら、ずっと花矢に触れていた弓弦自体が本当はそこにはいないなんて……。あれほどの大怪我でそこまでできてしまう弓弦に護衛官というものを痛感させられました。けれどこんな結末は、誰も望んでいなくて。

 

公式ツイッターの告知で「何故朝と夜と秋と冬?」となりましたが、なるほど納得です。弓弦を、花矢を助ける為に、みんなリスクを承知で動いてくれたんですね。彼らの団結は本当に見ていて心強いしホッとします。彼らに彼らがいてよかったと。

そして、『春の舞』での春主従から始まった新たな共同戦線がどんどん実を結んできていることがうれしくて仕方ありません。春から始まった心優しき復讐が、こうして孤独な神様たちを助けてくれている。雛菊とさくらのやったことは、本当に大きかった。

次代の為にも、こうした実りが少しずつ大きくなることを願うばかりです。そして彼女達にならきっと叶えられる。

 

……にしても『夏の舞』で連理さんが秋の恩恵を正しくお断りしていたことが思い出されますね……( ̄▽ ̄) 今回はいいですよね連理さん(真顔)。

 

そして今回は朝の神様のご両親や元従者もメインキャラクターでしたね。前回の残雪様とはまた異なる、家族らしい活躍ぶりでした。

ぶっちゃけ最初は朱里さんと英泉さん、離婚するのも時間の問題なのでは……と思ってしまっていたのですが、危機が彼らを強くしたというか、それでそれぞれの良さが本領発揮されたというか。

何だかその描き方に、すごく優しさを感じておりました。欠点を描きつつもだからこそこうした思いやりがある、とも伝えていて。どちらにも違った頼もしさがありました。父も母も強い……!!!

 

蒼糸さんもまた輝矢様同様、善良な大人です。まっとうな人間です。

花矢の両親が花矢も弓弦も愛しているように、蒼糸さんも弓弦も花矢も愛していた。仮面が剥がれた時、花矢と蒼糸は対等な人間同士として言葉を交わせた気がします。

礼子さんとも同じように言葉を交わせて……本当によかった……(泣)

 

にしても今回、まさかの慧剣大活躍でしたね!!!www

発想の自由さが凄まじい………………………………は凄まじいんですが、いとも簡単にボーダーラインを踏み越えてしまうところは少し怖いところでもあります。輝矢様、教育がんばってください……( ̄▽ ̄;)

 

しかしいいアイディアといえばいいアイディア。……いや、マジであっさり言ってくれるな少年よ……。前回の彼自身が発する恐ろしさは溶けて消えたワケではなく彼の中に健在のようです。これが今後吉にも凶にも転びそう。

というか暁の射手と黄昏の射手って入れ替え可能んだね!?!?!?(汗)

これは結構びっくらこきましたよ( ̄▽ ̄;) 春夏秋冬とはまた違う要素で面白くもありますが。それならたまには気分変える為に場所入れ替えても良くない? なんて私は思いますが、里の奴らがうるさいことは間違いありません。

あと、死に辛い身体っていうのも結構ビックリだったなぁ。。。

 

さて、『春の舞』からおなじみの冬・秋主従にも会えてこちらとしてはうれしかったです(。-_-。) また新たな一面を知れたり、ブレないなぁと笑っちゃったり。いずれ季節・朝夜全員集合してもらいたいものです。

 

それと個人的にうれしかったこととしては、輝矢様がエニシまで来れたこと!!!www

どうしても朝と夜の現人神は土地に縛られてしまうもの。やっぱりそれをかわいそうだと思っていたところはあるので、エニシの景色が見れて、花矢の助けにもなれて、温泉入れた(のかな?www)ことが読者の私としてもうれしくてうれしくて。

食事は遠慮したのに温泉にはあっさりノる輝矢様、最高ですww それと慧剣が飛行機でたくましかったのがよかったです(。-_-。) ……というか慧剣、密航経験がおありで……( ̄▽ ̄;) いやこれについては彼を責められないけれど。ホント。

 

弓弦救出作戦、本山からの妨害を警戒していましたが季節の里とは違い平和ボケしてるところがあったので何とかなりましたね(汗)。……これが季節の里相手だったらもっと難易度跳ね上がったんだろうなと。

それぞれがそれぞれの役割を果たしたこの大事件。それは一族の枠を超えて。

なので今回、個人的にはすごくあったかさが大半を占める後味でした。……本山の連中が寄ってたかって少女神に嫌がらせするところは本当にお前らそういうとこだぞという感じでしたが。

 

暁主従は、これがはじまりの物語という感じがしました。ここからが本当の彼らの戦いなんだなというような。再会できて本当によかった。

「好きに決まってるでしょうがっ‼」はすごく胸を打ちました。ストレートで飾り気がなくて、その分本心が乗っている。遠くでは嫌だ、あなたの生きている姿をそばで見ていたい、という花矢の願いもまた。

 

特典は、メロンブックスさんのをチョイスしました! 春主従が最推しの私はここのにせざるを得なかった……!!!(笑) あと小冊子のボリュームが1番あるから( ̄▽ ̄)

さすがにこれはネタバレを避けて簡単な感想を書こうかと。↓

春・冬主従の話→春主従が相変わらずかわいくってニコニコ(。-_-。) 『夏の舞』で「凍蝶ーーーーー!!!」となった方は読んだ方がいい( ̄▽ ̄)

黄昏主従、輝矢様と月燈さんの話→特典小冊子で泣くことになるとは……T ^ T

夏夫婦の話→雷鳥さん、いろいろとブレないな……www みんなお元気そうで何よりです。

 

 

『春夏秋冬代行者』は、本当に毎巻代行者達の幸せを願わずにはいられませんね。これからも厳しい戦いはきっと続くけれど――そしてそれは神様でない私達も同じで――少しでもいい日になることを願います。

そしてまた会えるのなら、全力で会いに行きます。

 

余談。
今回も狼星様は安定のひな一直線ですな……( ̄▽ ̄)

 

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