『神去り国秘抄 贄の花嫁と流浪の咎人』(水守糸子/富士見L文庫)

富士見L文庫

鞭展開度:★★★☆☆
神おわす国:★★★★★
恋せよ乙女:★★★★★

【あらすじ】

日輪が消えた国で、贄の少女と追放された皇子の旅が始まる。

 十年前に日輪が消えた国、照日原。その辺境の郷の姫・かさねは狐神の花嫁に選ばれる。だが花嫁とは、日照不足で不作続きの郷を救うための贄を意味していた。知らずに狐に喰われかけたかさねは、金目の青年・イチに助けられる。見返りとして彼が要求してきたのは、日輪を司る日神に会うためにかさねの「力」を貸すことだった。
 戻る場所のないかさねはしぶしぶ同行を決める。しかしイチこそが日輪が消える原因を作り、都から追放された皇子だと気づき――。
 運命に抗うための旅が、今始まる。心揺さぶるファンタジー開幕。

あまりにもタイトルから匂い立つ和風ファンタジーロマン、あらすじから確信される和風ファンタジーロマンに発売される前から買う確定でした(`・ω・´)

そしていざ読んでみると、自然と神おわす国に誘われるような。そして自分の心が自然とそこに馴染んでいくような。

また新たな理想の和風ファンタジーに出会えてうれしいです。是非続きを見たいな!

 

以下ネタバレあり↓

 

 

 

今まで読んできた話の傾向的にこういった神という存在が確固たるものとして根付いてる世界観の話は、何か強烈に色づく表現があって自分の胸に刻まれる印象だったワケなんだけど。

こちらの神様話は、もっと自然に揺蕩うように神おわす世界がそこにあって、それを当たり前のものとして読者の自分も受け入れているような、そんな自然な感じでした。

なので「強烈」というよりは「すんなり」という表現の方が私の中ではしっくりくるかな。富士見L文庫自体が全体的にそういう印象でもあるのかも。

 

そんなワケで照日原の世界に自然と馴染んでいたんだけど、やっぱり和風ファンタジーあるあるの1つとして(※あくまで個人の見解です)「嫁入りはロクなもんじゃない」があるのがたまんなかったね!!!!!(※あくまで個人の見解です)

いやコレお姉ちゃん絶対喰われてるよ……て多分みんなが思ってた。そしてやはり喰われてた(泣)

 

それにしても、今作の主人公かさねは何とも愛くるしくてかわいいですねぇ(笑)

古めかしい言葉遣いも微笑ましいし、世間知らずだったり稚さが残っていたり強情だったり。成長する主人公が大好きなので成長する余地だらけでウハウハでした。←

何も知らないかさねの時点で大好きなんだけどね(笑)。元々人として何かが欠けているというワケでもなかったから、「変わらないまま変わっていく」のを楽しんだって方が正確かな。むしろあれほど裏切りに等しい行為に遭ったり神々の恐ろしさを思い知ったりしたのに、それらに染まらずに最後まで自分らしくあるかさねが眩しかった。これぞ主人公。ヒロインというか主人公(真顔)。

 

対するヒーロー・イチは私がこれまで読んできた少女小説(って括りでいいのかな?ww)の中でもトップに近いベストオブ難攻不落。

ヒーローとヒロインが出会って恋愛感情のないところから絆を深めていって恋愛につながるようなのを好んで読んできてるのに、そんな私の中でのトップってなかなかだぞ、イチ……。

本当にちっとも本心を見せないしかさねのことを信じてくれないんだよねー💦 人間くささや隙といったものもなかなか見えてこず、「ここからかさねは何を得られるんだ……?」とめちゃくちゃ予想できなかった。

ヒロインを叱るタイプでもなければ、人として優しく扱ってくれるワケでもなく。無論溺愛するワケでもなく(笑)。じゃあ尊敬できるかといえばそうでもなく。。。

 

そんなワケで、この2人が果たして歩み寄ったり仲を深める(ヘタすりゃ深める仲もないのか……( ̄▽ ̄;))のか全然読めなくてそのあたりも面白かったなーwww

個人的には、山犬を斬るイチに自分の中のずるさをかさねが自覚する、思い知る、といったシーンが印象深くて。

死ぬかもしれないほどの危機に瀕して、そこまで怖い目に遭わなければ気付かないなんて。かさねが愚かだということではない。そんな人間くささがすごく胸に残った。

その後のイチがかさねに水をすくって飲ませてやるシーンがこれまた印象的だったなぁ。本当に、思いがけない優しさ。イチはコレある人にやってもらったことをやってたんだなって後から分かって尚更グッときた。。。

 

思いがけないといえば、まさかのかさねを喰おうとしていた朧がどんどんかわいく見えてくるという……!!!(笑)

賽子遊びをしてほしいのもかわいいし小さい姿で登場するのもズル過ぎる。

そして多分かさねは人たらしならぬ神たらしと見た……(笑)。お狐様がチョロイところもあった気がするがまぁどちらもかわいいということで( ̄▽ ̄)

朧が本当の意味でかさねを嫁入りさせたくなっているのにニマニマしちゃってた(。-_-。)

 

人外には是非とも人とは異なる道理を以て人々を恐怖させてほしい、そう、読者である私も含めて……!!! と思っている私としては、各神々の慈悲深くも非情な面は大層気に入りました。

特に水分利(※読み方覚えるのに苦労した単語No.1)の亀の神様は私的に怖かったかなぁ。。。

贄の身代わりとして差し出されたかさねを「かわいそうに」と心の底から憐れんでおきながら、かさねを子ども達に喰わせることは覆さなかった。そんな神様に「慈悲深い」と言えるかさねもすごい。

ところで蘇ってチーズってことでいいっスかね?( ̄▽ ̄)

 

イチはちっとも心を開きはしないのに、そんなイチに惹かれていくかさねはかわい過ぎたなぁ……!!!

それが何て感情なのかも分かっていない。かわいい。かわい過ぎる。

一座の面々と出会ったあたりから何だかイチが気になって仕方ない自分に気が付いて心底「???」となってるのが愛おしかったぁ……(。-_-。) 罪な男だぜ、イチ。

 

でもこれちっとも優しくしないクセに魅力的なイチも悪いと思うんだ……!!!

ちっとも人間くささや親しみやすさを見せないので、たまに笑ったり(めちゃくちゃ冷笑だけど)ちょっと目を見開いたり(イコール見直したワケでもないけれど)するだけの変化でオッってなっちゃうんだよなぁ~~~~~。

あと難攻不落な男を一生懸命追いかける女の子が大好きなのでめちゃくちゃ好きな構図過ぎました(。-_-。)

 

そういったかさねとイチのちょっとずつの気持ちの変化や神々の人外らしい描写も面白かったんだけど、照日原の文化がこれまた読んでいて楽しかったんだよなぁ~。

水分利で橋の上に露店が並んでいるのが特に楽しかった‼ 是非行ってみたい~(^^♪

あとイチは意外にも目立つ風貌で向こう見ずな娘さんを放置するよな……www よく金だけ渡して自由行動させてたなホント( ̄▽ ̄;) 人攫いにでもあうんじゃないかとお姉さんはヒヤヒヤでしたよ。。。

 

個人的に特に新鮮で印象深かったのは、贄として他人を差し出す側の人間に寄り添った描き方をしていたこと。これは本当に今まであんまりなかったかも⁉

かさねが自分や姉を狐神に差し出した父親や水分利で自分を身代わりとして沼の神に差し出した水澄に心を寄せて、日輪を取り戻した後彼らと普通に交流しているのがスゴ過ぎる。かさねにしかできないぞその対応……!!!

そんな子だから神様に好かれるのかもね。

 

ところどころにしれっと散らばっていた(言い方)伏線がきれいに回収されたのが非常にスッキリでもあり。陰の者のこととか、贄のこととか。かさねもイチも神の贄として差し出された同士だったというのがこれまた心に残るというか。。。

そりゃイチも簡単に心を明け渡したりしないよな。本当はいい奴、というのとはまた一味違うのがより印象的で。温もりを知らなくて、だからより一層、壱烏から受けた優しさがイチという人間の奥底にまでしみ込んでいって。

誰も彼もに優しくはしないけれど、イチの優しさは純度がめちゃくちゃ高い気がする。壱烏の優しさにもすごくグッときた。2人で過ごせた時間、少しでも兄弟の間で幸せなことがあればいい。

 

果たしてこの1冊の間に日輪を取り戻すことができるんだろーかとめっちゃ半信半疑で読み進めてたんだけど、旅の道中の出来事(※1つ1つが割と事件)を拾い上げながらすごく順当に話が進んでいて大変楽しかったです。……何かこの言い方だと上からになるのか!?!?(汗)

えーっと何というか、旅の間の出来事も大事に拾い上げられていて、なおかつ終盤での展開もあって読み応え抜群だったということで!!!!

全体で1つのお話、というより、いくつもの話が収束してこの1冊になっているような。

 

にしても日神に交渉するかさねが男前でホント惚れましたわ……(。-_-。)

「あなたがもらうはずだったその男をかさねにくれ」は傲慢な神と渡り合うのにとてもしっくりくる傲慢さ。それでいて何て大胆な……!!!

だがそこから一気に3年も経つとは思わなんだ。そ、そんなに!?!?wwwww

てっきりかさねとイチは一緒にいたのかと思いきや丸3年会えていなかったという。。。かさねの一途さがより光ってよかったけどな!!!(笑)

この1冊で日輪を取り戻したらそれ以降何をやるんだ……? なんて思っていたんだけれど、神と人の仲立ちをしてるなんていいアイディア過ぎる!!! そしてなんてかさねらしい。この調子なら全然続き出せるよな~て意味でもウハウハでした👍←

 

17歳になったかさねはきれいになっているんだろうなぁ。表紙のかさねは14歳だろうから17歳のかさねのイラストも見た過ぎる(。-_-。)

そして何より。

 

「かさねはそなたがとてもすきになった」が破壊力高過ぎん!?!?!?!?!?/////

 

「ふふん、かさねに惚れたか?」なんて強気な発言をしておきながら、手は緊張で震えていたりイチを見つけた時には泣きそうだったりと何ですか、女の子なんですか(※女の子)。

是非是非こっからの2人の旅路を追っていきたいので続刊大希望であります。マジよろしくお願いします公式様(土下座)。

 

意外と燐圭は好きなキャラでした。彼自身が好きというよりは、彼の存在によって物語がグッと面白くなるよな、という意味で(笑)。

武力で神の眷属を制したという要素がものすごく魅力的でした。日神の件で懲りてしおらしくなったのかと思いきやそうでもないところが今後のかさね達の旅路の困難さを予告しているような。

彼がまた出てくるかは謎だけど、そうした困難そのものは読者としては楽しみです。

 

そんなワケで発売前から楽しみにしていた『神去り国秘抄』、めちゃくちゃ楽しかったです✨ また理想の和風ファンタジーをひとつ手中に収めてしまったぜ……(。-_-。)

あとイチの持ち歩いてるアイテムが笛なのが個人的にツボでした。

日輪が戻った神おわす国に、そして難攻不落な皇子様と一直線な乙女に幸あらんことを。

 

余談。
イチの声、頭の中で勝手にcv.古川慎さんで再生されてました( ̄▽ ̄)

 

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