『竜宮輝夜記 時めきたるは、月の竜王』(糸森環/角川ビーンズ文庫)

角川ビーンズ文庫

鞭展開度:★★☆☆☆
身分差:★★★★★
愛情:★★★★★

【あらすじ】
「おまえは神の皮をかぶった怪獣にはべる」――黒竜・由衣王にそう告げられ、世話係として人間の娘・紗良は召し上げられることに!? 神竜が人を護る世界で、運命の少女と竜王が織りなす和風ファンタジー恋絵巻!

竜宮輝夜記 | 角川ビーンズ文庫公式サイト (kadokawa.co.jp)

読み返しシリーズもう連続で8作目です(笑)。とても楽しい(。-_-。)

大好きな糸森環作品の感想をまた1つ上げられることがうれしくもあり(`・ω・´)

こちらの作品は糸森環作品の中ではかなり鞭が薄く読みやすいです。……しかし傷付ける側の理不尽な道理や傷付けられる側の心の痛みをしっかり根を下ろして描いているのが相変わらずスゴイなと思いました。

そして人のぬくもりに涙ぐんでしまう……(泣)。

 

以下ネタバレあり↓

 

 

 

糸森環作品の鞭でしごかれていた初見の時の私は、これを読んで「……鞭が……ないだと……⁉」と衝撃に打たれておりました(真顔)。糸森先生もあとがきで「鞭展開はほぼない」と書かれていて。

しかし今落ち着いて読み返すと、決して誰もが優しいワケではないし、人を蔑ろにする理不尽は当たり前のように横たわっていました。

 

竜達の本心は既に読んでいるので知っていましたが、いざ読み返してみると紗良目線、そりゃあ地上に心を置いていったと思いたがるし、竜や天上人の冷たい態度を受けて痛みも感じるワケで。

負けるものかと思いながら、どこかでもう自分の生をあきらめてもいる。

 

身分の高さ低さは自分ではどうにもならない。だけど心の高さ低さは自分だけが変えられる。

……この言葉、本当に大好きなんですけどね。私も常に心に持っていたい(笑)。

 

のちに竜神達の心を知って置いてきた心が新たに芽吹くワケなんですが、そもそもその心を置いてきた故郷の人達が本当に良過ぎる!!!!!!

ぶっちゃけこの作品がもっと鞭展開強めの作品だったらここで紗良は人身御供として差し出されているんじゃないでしょうか。誰も彼もが紗良を庇わず、身代わりとして。堂々と切り捨てるのか、それとも裏切って差し出すのか。

 

しかし紗良の愛する人達はそんなことをしません。本来榔月府に行くハズだった紗和子と共に押し合いへし合い人身御供は自分だと主張する。

……ここでくだらない言い争いも勃発しているのがまたいいですよね‼‼www ケンカするほど仲がいい……( ̄▽ ̄)

結果として紗良が選ばれるワケですが、それでまた「ばか!」と泣きながら紗良を叩く紗和子がたまりません。……紗和子のその恋バナ、是非聞かせてほしいな(ボソリ)。

 

両親のエピソードもすごくいいですよね。……いや、本当は2人も生きていてくれればよかったのだけど。

両親は喜んで、村のみんなの為に囮になった。母は愛する父と共に逝けて幸せだろう。村のみんなが紗良を抱きしめてくれた。大事に育ててくれた。

出来事だけ見ればとてもむごいけれど、その隅々にまで愛が染み渡っている。これはちょっといいエピソード過ぎて涙ぐみました(笑)。

 

竜のみなさんはまさかの人間かわいがりぶりがすんごい(真顔)。

……えっ、そんなこと考えてたの……と初見でポカンとしたのを今でも覚えております( ̄▽ ̄)。まさか入水したいとか。

 

それでいてさすが糸森先生、こうした人外ならではのズレっぷりと高慢なかわいげを余すことなく描いております(笑)。

1人1人めちゃくちゃいいですよねぇ。私は1人だけちょっと大人めというか達観している月時王が好みなんですが何故か小瑠王が頭を離れません(真顔)。……そしてそんな小瑠王がcv.平川大輔さんなイメージが……( ̄▽ ̄) 異議がありましたらいくらでも聞かせてください、いろんなキャスティングを考えてみたい👍

 

ですがそんなかわいさと面白さをたっぷり見せてくれる竜にも、心の翳りがあるんですよね。。。

本当は人が好きなのに。遠ざかる。感謝をされても儀礼的なものだけ。愛しているのに恐れられる。

穢れを受けた由衣王の嘆きは胸が痛みました。……〈誰もかれも変わらぬ、身を穢してまで救ってやっても一人残らず去っていく〉。彼らもまたその心が痛むのだ。

 

しかし紗良は本当にいい子ですねぇ……!!!

心に泥を押し込められたような気持ちを味わおうとも、両親や村のみんなから愛情を注がれている分彼女も愛情深く思います。それでいて飾り気がなくて何なら大雑把だから(笑)、そうした規格外さでも竜神を救っていく。

それと紗良って身分が低いのでもちろんそういった教養を身に付けてはいないんだけど、竜達に捧げる言葉がめちゃくちゃきれいだよね。それが虚であったとしても。真の心はもっときれい。

 

紗良がまた故郷に戻るところは本当に……!!!

それでいて紗良と紗和子の2人でかつての紗良の両親のように囮になろうとする。……こんなん泣くわ!!!!!!(泣)

 

竜達が救ってくれてよかったし、紗和子がまっすぐに彼らに感謝を伝えたのもよかったし、由衣王がそれで「もう紗良は自分達のもの!!!」宣言するのがまたよかった(笑)。

ずっと「早く村に帰れ」と思いながら「いやまだ少しいてくれ」って葛藤してたもんね。あんなに強いのに寂しがり屋なのが微笑ましい、愛おしい。

 

白長督、結構好きです。天都の人間でありながらあれほど紗良を差別しないなんて素晴らしい。広杜もまた!www

梨乃さんをはじめとした式の女達、きゃらきゃらしていてめっちゃいいですよね(笑)。紗良も私も彼女達の存在にかなり元気をもらえました。

白羽……かわいいですねぇ……(笑)。出てきた時、「出た、今回のモフモフ要素!!!!!!」と目をかっ開きましたww

そして更にモフモフな白貂。……こ、これは乗ってみたい……!!!

天上人はなにゆえそんなウブいん?www

 

挿絵の紗良がこれまた大好きです。表情がずっと生き生きしていて見ていてずっと楽しい(笑)。

 

またいつか2巻の感想を書きたいと思います。

 

余談。
腿肉のインパクトがすんごい(真顔)。

 

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