『こころ』(夏目漱石)

その他

鞭展開度:★★★★★
先生と私:★★★★★
恋は罪悪:★★★★★

【あらすじ】
鎌倉の海岸で、学生だった私は一人の男性と出会った。不思議な魅力を持つその人は、“先生”と呼んで慕う私になかなか心を開いてくれず、謎のような言葉で惑わせる。やがてある日、私のもとに分厚い手紙が届いたとき、先生はもはやこの世の人ではなかった。遺された手紙から明らかになる先生の人生の悲劇――それは親友とともに一人の女性に恋をしたときから始まったのだった。

名作を読んでみようシリーズ第2弾。

高校生の頃、国語の教科書に一部分が掲載されていてそれを夏休みの課題として読まなくちゃいけなくてひぃひぃ言いながら読んだ思い出ですww その部分しか知らなかったので遅まきながら今回イチから読んでみました。

そしてやっぱり思ったのは。。。

 

以下ネタバレあり↓(※マジで高尚な感想まったく書けてません)

 

 

 

 

 

暗っっっっっ………………………………………………………………(汗)(汗)(汗)(汗)(汗)。

 

……というのがやっぱり今回も思ったことだよね~( ̄▽ ̄;)

教科書で抜粋されていたのは“先生”とKのやり取り、お嬢さんとの結婚成立、からのKの自殺。マンガイラストで例えるなら白目剥いて口の端から血を流しながら読んでたといいますか……www

というか教科書なんでそんなスピンオフから入らせるのwwww 源氏物語もまさかの光源氏生まれる前んとこで私は盛り上がれなかったぞwwwww

 

そんなワケで、そもそも抜粋されたところがめちゃくちゃ暗かったし全部読んでみてもやっぱり暗くて私は結構心が重くなりました( ̄▽ ̄;) 途中から日が暮れてからは読まないようにしてたよね。。。

 

そしてしょうがないことなんだけど、これは何も知らない状態でイチから読みたかったなぁ、という悔いは正直あったり。教科書で先に一部分(しかも先生におけるかなり核心を突くところ)だけ読んじゃうんじゃなくて、“私”と一緒に先生のことを少しずつ知っていきながら、「先生は何故こうも自罰的に生きているんだろういや、生から遠ざかろうとするのだろう……」と、先が気になる形で読んでみたかった。

そう思うってことは、私なりに「面白かった」ってことなのかもしれないなぁ。こんなにも名作だと、どうしたって“ネタバレ”を避けるのは難しいもんなんだけどね(苦笑)。

 

それと自分でも意外な気持ちになったんだけど……、それが「懐かしい‼‼」(笑)。

それは「高校の教科書で読んだなぁ~」ではなく。大学で文学部的なところにいたから、そこでこういう文章たくさん読まされたwwなぁ……という懐かしさ。

決して理解できないワケではないけど、な~んか読むのが大変。ちょっと自分の中で嚙み砕かないといけない。そんな文章が久々で、でも大学の頃に読んできたからか読み進めることができている……!!! ちょっと感動を覚えたのでした(笑)。

 

あと、この時代の文学の男子学生あるあるっぽいのが見られてそれも懐かしいなぁというか( ̄▽ ̄)

何かあの、金を工面してやるだの金を工面してもらうだとか、お節介かけて下宿先を勧めるだとか……www 今になって「あっコレあるあるだったのかな⁉」と思いました、面白いww

 

にしてもこの『こころ』、主人公の定義が面白いというか。

大きく3章に分かれているんだけど、1,2章は“私”目線で、3章は先生から主人公へ向けた遺書。

だから3章で主人公交代、みたいに思えるけど、実際に読んでみるとそうじゃなくて主人公の“私”が読者の自分に乗り移ったかのような、そんな気持ちになる。それでいてこの作品自体の主人公はずっと先生だったのではとも思わせられる。

いや“私”が表主人公で先生が裏主人公なのかもしれない。「私(先生)の鼓動が停った時、あなたの胸に新しい命が宿る事が出来るなら満足」なのだから。

暗くてたまらんのは間違いないけど、そこは興味深い。

 

あと私の『こころ』での推しは“奥さん”ですね‼(笑)

これは先生の奥さん……ではなく、遺書の中での“お嬢さん”のお母さん。

先生も書いているけれど、軍人の未亡人だからか肝が据わっているというか、男らしいというか(笑)。女手ひとつで娘さんを育ててきただけのことはある!

先生に「お嬢さんをください」と言われての

「よござんす、差し上げましょう」

からの

「大丈夫です。本人が不承知のところへ、私があの子をやるはずがありませんから」

が格好いい(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾

 

ていうか、お嬢さん先生のこと好きだったんだ!?!?

……ていうねww これは高校生の頃に読んでた時の気持ちなんだけど、ぶっちゃけ先生目線で見てみると先生相当不利だったように見えたから( ̄▽ ̄;) 私はお嬢さんはKに気があるんかな~て思ってた( ̄▽ ̄)

 

ただ、これ教科書の抜粋箇所の影響もあるというか。

抜粋されたところだと、確か先生と奥さん・お嬢さんが茶の間でおやつ持ってって談笑するぐらい仲がいいってのはなかったから。そんな仲良かったんだ!? いいねあたたかな空間で!!! ……今回読んでみてめっちゃそう思った(笑)。

 

しかも先生とお嬢さんがいい雰囲気だったという。

というか、この2人がお互い意識しているの分かってるから奥さんがくっつけたがるようなことしたんだろうなぁ、という感じ。

でもその遠回しな促しも、まだ人間不信の種が残る先生には躊躇うものでもあり。

 

この奥さん、決して鈍いワケではないからもしかしてKの気持ちも気付いてたりしたのかな……? と今ふと思ってみたり。

でも肝の据わった人だから(笑)ひとつ屋根の下で男(それも若者)2人が同じ人を、娘を好きでも、それくらいじゃ動じない、とか。先生の突然の「お嬢さんをください」も、Kと折り合いをつけたのかなと思ってたんじゃ、とか。それで片っぽがフラレたって奥さんなら気まずいとかなくどんと構えていそうです。

まぁそれか、Kってあんまり表情豊かじゃないみたいだからKの気持ちまでは気付かなかったのかも。。。

 

さて、「恋は罪悪」というあまりにもインパクトのある言葉。それでいて「神聖」でもあると。

何かコレは自分の中では納得なんだよなぁ。夏目漱石に私が考えるような意図があったかはともかく。

 

恋って、どんなに悪意がなくても誰かを傷付け得る感情だなって思ってます。

だって自分が誰かに恋しているなら、他の人が自分に対して抱える恋はどうしたって受け取れません。その“他の人”がどれだけ大事な存在であったとしても。

自分が恋していなくても、誰かからの恋が、その人がどれだけ大事であったとしても、受け取れないこともある。

そうやって考えると、恋ってしていなくても巻き込まれたらもうそこで罪悪が始まっているのかも。

 

……とまぁ、これは物語にある結末がどうあれ美しい恋を総合してそう思っただけで、現実はもっとぐっちゃぐちゃなこともあるんだろうけどww

 

先生にとって、お嬢さんはサンクチュアリなんだろうなぁ。彼女の下手な生け花と琴の音が好きっていうの、アレすごく好きです。

だから恋について「神聖」とも言っていて、この恋自体に後悔はしていないんじゃないかなぁ……と思うんだよなぁ……。

私は女だからか、何も知らされず置いて行かれる奥さんが気の毒になってしまいました。ずっと打ち明けてほしかったんだろうに。。。奥さんが今も先生に“恋”しているように見えるから、なおさら。

 

Kについてですが、正直教科書で読んだ時は、「そんなことで自殺までしなくてもいいのに」と思ってしまいました。この作品を「暗ッ‼‼(汗)」と思った最たる所以です。

(恐らく)たった1人友人に自分の内なる気持ちを打ち明けて、そしたらその友人がその後自分の想い人と婚約してました!!!

……う~ん、そう改めて今考えると白目剥きたくなる案件何ですが( ̄▽ ̄;) それでもやっぱり、自死までは考えつきません。

 

でも、教科書でカットされていた部分まで読むと、このKはただフラれたから、裏切られたから自死したのではないように思います。先生自身もそう書いていますね。

何というか、Kはある意味でクソ真面目で(それは先生もまたそうだから似た者同士なんだなぁ)、別にこの恋や友情だけに限らず、いやそれ以上に自分に科していることがあったように思います。恋はむしろそれに反することというか。

それさえなければ、多分、自死には至らなかったんじゃないかという気がするかな。。。もちろん、あんまり自信はありません。Kが先生を恨んでいたのか、悲しんでいたのか、そんなことは本人にしか分からない。でも、少なくともただ色恋に敗れて自死した男ではないということは分かって、原作を最初から最後まで読んでよかったなと思いました。

 

それから、先生が主人公と出会えてよかったと思っている自分がいます。

もしかしたら、この出会いが先生を自死に向かわせたのかもしれない。出会わなかったら、もっと生きていてくれたのかもしれない。そう思うとやるせないけれど、自分の罪を告げたいと、あの人間不信の先生が思えるほどの出会いであったなら、それは、彼なりに生きてた甲斐があったということになるんじゃないだろうか。

もちろん、先生にしかその真偽は分からない。

 

果たして、“私”はこの遺書のことを奥さんに話すのか。きっと話さないで、そっと胸にしまうような気がするけれど。

そしてお父さんの最期にも、できれば立ち合っていることを願いたい。間に合わないんじゃないかと思うけれど。

 

そんなワケで、お日様の力をたっぷりお借りして(※日中だけ読む作戦)、無事読み切ることができました‼ 多分何かしらの経験値は上がったハズ( ̄▽ ̄)

またいつか何かしらの名作を読みたいなぁ~と思っています、では!

 

余談。
先生が自分の妻を「さい」って呼ぶの、何か好き(笑)。

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