『ヴァイオレット・エヴァーガーデン エバー・アフター』(暁 佳奈/KAエスマ文庫)

KAエスマ文庫

鞭展開度:★★★★☆
痛みを見過ごさない:★★★★★
愛しい日々:★★★★★

【あらすじ】
世界は回る。いつかは終焉を迎えるとしても。
再会以来、新しい関係をゆっくり育んでいたヴァイオレットとギルベルト。
しかし、人気自動手記人形と陸軍大佐……。多忙な二人は会うことすらままならず、すれ違う日々が続いていた。
また、C・H郵便社も変革の時を迎え、彼女を取り囲む世界が大きく変わろうとする中、ヴァイオレットは“夢追い人”の街・アルフィーネを訪れる。
──お客様がお望みならどこでも駆けつけます。
これは「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の物語である。
『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』シリーズ 感動の最終巻!

とうとう読みました最終巻。今回もヴァイオレットと“誰か”の出会いや再会を中心に丁寧に紡がれたお話でした。最終巻という気もしなかったくらい(笑)。彼女をはじめ人々の物語はこれからも続いていくんだなと思いました。

 

以下ネタバレあり↓

 

 

 

 

 

本当に最終巻という気がしなかった(笑)。

最後なのでギルベルトや郵便社のみんなとのことがいろいろ綴られるのだろうと思っていたのですが(それもあったけれど)ここで新たな出会いがまたしても見れるとは思っていませんでした。

 

そして久々にこの作品に触れて思ったのですが、本当に1人1人への感情移入がスゴイ……!!!

誰もが持っている痛み、もしくはこんな状況になったら感じざるを得ない痛みというものが本当に丁寧に綴られていて、この作品そのものから優しさを感じずにはいられません。痛みを抱えているものの泣けなくて、でも、誰かの何気ない一言や、おいしい料理に自分でも思いがけずほろりと泣けてしまうような。

実際、個人的に刺さるお話もあって、言葉にしにくい痛みを包み込んでもらえたようで胸が詰まりました。……あぁ、私、1人じゃないんだ、と思えて。

 

ヴァイオレットと出会った誰もに、そしてヴァイオレットに心を傾けずにはいられない、心から幸せを祈らずにはいられない。本当に、この作品という手紙を手に取ることができてよかった。

 

ヴァレンタインについては、あぁなるほどなと(笑)。

ヴァイオレットと同年代でヴァイオレットに恋愛感情なり下心なりを持たない男性って珍しいなーと思っていたら、なるほどなるほど。……彼女だけが売られて数日で逃げ出した理由も察せます。

これはそのことを知った上で読み返してみたいなーと思いました。彼女の自動手記人形としての活躍に幸あれ。需要はあると思うぞー!!!www

 

夢追い人のレティシアの話も印象的で。

……私はちょっとその元婚約者許せないけどなー!!! 「何で疑問に思わないんだ」って怒鳴るところは理解できる。彼がどれだけ溜まっていたかが、想像できる。……いや、彼からしたらもっと発狂するほどの苦痛だったんだろう。

でもその後レティシアに!!!! 「君は何者にもなれない」って!!!!!

何て呪詛押しつけやがるこの野郎です。いやほんとマジで。

そういった言葉が本当に、心の奥深くに突き刺さって体や心の動きを封じることって、当たり前にある。そんな呪詛を投げつけずにはいられないくらい何かがあったとしても、やっぱり、この言葉自体を許す気にはなれない。

 

「もう家族は帰ってこない」「自分は捨てられた」と本当は分かっているはずなのに、故郷から離れられないヴァレンタイン。夢を追って毎日を懸命に生きているはずなのに、いざチャンスが転がって来た時逃げ出してしまったレティシア。何というか、こういう人間の奥深くみたいなのに、いつも気付かされる。これは暁先生が現在書かれている『春夏秋冬代行者』でも変わりません。

本当に、何度でも読み返したい物語だなと改めて。

 

ディートフリートとヴァイオレットの関係が実は好きです(笑)。

ディートフリートの、ヴァイオレットに対する複雑な感情が、読んでいてあぁ……って感じで。納得と言うべきか共感と言うべきか。

それでいてヴァイオレットの方も、彼に情がないわけではないんだなと。

決して恋にはならない元主従の2人の、この何とも形容しがたい感じが今となっては微笑ましいような気さえします。……ディートフリート怒りそーww

 

ホッジンズさ―――――ん(泣)(泣)(泣)

若造と言える年齢・経験値の私は、まだまだ庇護された経験ばかりです。庇護する側が、どんな風に愛情を注いでくれていて、どれだけ涙を抱えているかが描かれていて、これもまたじんときました。寂しく、しかし愛おしい。

楽しい特別な一夜。でもこれに“次”がない可能性の方が高いんだという、あのしんみりした気持ちは、何だか自分もあったなと思いました。

 

序盤で獣の物語が再び丁寧に綴られるのが美し過ぎる。

いや、美しいものを描こうとして描いたのではないのかもしれない。それでも、彼女のはじまりの物語をまた改めて読めたことで、またこの作品への愛おしさが募るようでした。

 

ヴァイオレット達の手紙のやり取りがまた良くて。

特に少佐の妹さんの手紙がぐっときました。素敵な、強い、優しい女性なんだね。。。どちらかというと他者を守ってばかりな(笑)ヴァイオレットを守ってくれる人がいてくれること、心底ほっとしました。

……いや、ギルベルトから話を聞いて妹さんがどんな判断をしたかは描かれていないね。でも、ギルベルトが書いたように、やっぱりその瞬間、ギルベルトの愛する女性がどんな人かも知らないのに、それでも味方だと書いてくれたことは、やっぱりギルベルトにとっての宝だし、彼らを見守ってきた読者の私としてもとてもうれしいものでした。

 

ヴァイオレットとギルベルト、それぞれが自信を失っているのが何か……人間してるなぁ……としみじみしちゃいました。ギルベルトもヴァイオレットほどではないけれど、昔はそういった人間部分を切り捨て気味な人に見えたので。

 

オスカーさんが出てきてくれたのもうれしかった。そして、レティシアに優しさをくれていたのがうれしかった。

 

そんなワケで『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』、無事読み終わりましたー……!!! いや~もう、ホントうれしい!!!(笑)

また1巻から読み返してみるのもいいなぁ。絶対泣くなぁ( ̄▽ ̄)

何というか、戦いに慣れてるような強い人って、平和な世界に行っても結局戦いに引き寄せられるような運の持ち主な気がしています。なのでヴァイオレットは、今後もある程度そういった争いごとに巻き込まれるのだろうなぁと。

けれどあたたかなやり取りも確かに、これからも紡いでいくんだろうなとも思います。世界は決して優しくない。けれどどうか、これからも確かな幸せを日々感じ取れますように。

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』、本当にありがとう!!!

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