鞭展開度:★★☆☆☆
良識ある大人達:★★★★☆
華麗なる縁談バトル:★★★★☆
【あらすじ】
やっと再会できた初恋の相手には、四人の許嫁がいた――。
人とあやかしが共存する京都で、生まれ育った山崎炉子。実家の大衆食堂「山咲」が経営難に陥り、名家・春日小路家の使用人として働き始めた。炉子は次期当主である翔也に淡い恋心を抱くものの、彼には容姿と財力、さらには付喪神を使役する“霊力”に恵まれた四人の花嫁候補がいて……。
累計26万部「京都府警あやかし課の事件簿」著者による新シリーズが開幕!
私にしては珍しく現代ファンタジーに手を出してみました( ̄▽ ̄) 京都を舞台にしたものもブログで紹介してるのだと『水無月家の許嫁』ぐらいでしょうか……?
では何故読んでみようと思ったかといえば、「初恋相手は自分を覚えていない」「初恋相手には許嫁が4人いる」「自分は身分違いで分不相応な恋」……と主人公・炉子にとってとても不利な恋を抱えているようだから。そういうのが読み応えがあって好きな私です。。。(笑)
さて、実際に読んでみるといい意味での「あ、そこそうなんだ???」がいろいろで楽しかったです(笑)。それにスルスルと読みやすいんだこれが(。-_-。)
以下ネタバレあり↓
主人公が京都弁というのが新鮮ですね!!!
こんな風に方言のある場所が舞台のものでも、実際にキャラクターが方言を喋っているものにあまり出くわしたことがない私です( ̄▽ ̄) そもそも架空の世界観のばかり読んでいるのでなおさら方言の出てくる小説とは縁がなく。。。実際の場所が舞台であってもみんな共通語で喋ってる、なんてのも多い印象です。私の中ではね(笑)。
しかし『春日小路家』は主人公含めほとんどのキャラが京都弁で面白い。……ていうか京都流のあの嫌味、本当にあるんだ⁉⁉(汗) 有名過ぎて大袈裟に伝わってるだけかもと思っていたんだけれど。そしてどうやら京都人はそれが嫌味かどうかも判別できるという。。。アレかな、英語圏の人が「R」と「L」聞き分けられる的な。←
さてそんな『春日小路家』、新鮮な部分が他にもいろいろと。
まず炉子の初恋。“初恋”というと幼い印象があるので会ったのは小さい頃かな、それなら片方が覚えていないのも仕方ない……と思ってたら、意外にも炉子が高校生の頃。
それなら物心ついてない子どもじゃあるまいし、短い時間とはいえそれなりに印象深い出来事のハズなのに何故翔也は覚えていないのか……。それが記憶喪失。それも何もかも忘れたのではなくて、“その日1日だけ”を覚えていない。
どうやら炉子は恋心を“秘めている”ようなのでそれならその思い出も胸にしまって翔也には何も言わないのかと思いきや、……翔也本人だけでなく翔也のお父さんとその付喪神にも話してる‼‼www しかもそれを重要なヒントと捉える春日小路家。
……と、ここまで挙げただけでももう細かくいろいろと想像と違ったんですよね。それが新鮮で面白い。
他にも、春日小路家は名門らしいので他にも使用人がたくさんいるのかな、と思ってたら炉子1人だったり。あと、確かに縁談バトルはバチバチなのかもだけど、思っていたよりその波は常に荒いワケではなく、また使用人である炉子に対する花嫁候補達の対応もとても常識的友好的です。……う~ん、これは私が今までいかに厳しい身分差がある作品ばかりを読んできたかが分かられてしまう(笑)。
『春日小路家』は本当に“現代”を舞台に描かれているんだなぁと思いました。そうだよね、現代で身分差云々言いまくってたらヤバイわな‼‼(汗)
しかしゆるやかな流れの中にも確かな岐路が要所要所にある。
ゆるやかな流れはスルスルと読める自然な吸引力が、確かな岐路――突然やってくる直角とも言える曲がり道は強烈な吸引力があってついつい読んでしまう。
ドロドロはしていないけれど確かなバチバチがあるのです。
話は一旦“ゆるやかな流れ”に戻しますが、春日小路家のみなさんが本当にいい人達なんですよね✨T ^ T✨
翔也がいい人なのは分かっているけれど、だからといって家族や従業員までがいい人とは限らない……と思っていたらみんないい人‼‼www 名門の家であっても偉ぶりません。何というか本当に、良識ある大人達なんです。
そしてそれは炉子もまた同じ。
翔也が自分のことを覚えていなくても、それよりも翔也の体調を心配して元気だと分かればホッとして。縁談に同席する時は使用人として立場を考え時には控えて、時には自分なりに行動して。
翔也への恋心が確かにあって、それでもほとんど表に出しません。ちゃんと気持ちを切り替えたり使用人としてできることをします。すごい、本当に大人だ。。。
特に翔也がるいを慰めている時の炉子が印象的でした。
ここでモヤモヤするんじゃなくて、今のるいは昔翔也に助けてもらった時の自分だ、と考えて、他の縁談相手達が止めようとするのを止める。翔也のこういう、困っている人、弱っている人に手を差し伸べる優しさが好きだ、って考えられる。サッパリしてていい子です。
一応書き足しておくと、私個人は例えば、自分が初恋相手に覚えられていないことに傷ついたり、好きな人が他の女の子に優しく接しているのを見て嫌な気持ちになるような、そういう人間くさい主人公も好きです。そういう葛藤の先にどうするのかなって見届けるのが楽しいです。
ただ、炉子はそういうのとは違っていて、でもそれが物語の上で都合よく作られた主人公、って感じもまったくしないんです。だから炉子という主人公は読んでいて新鮮でしたし自然と好きになりました。
翔也も大人なんだよなぁ。
昔泣いている炉子を救ってくれたこともそうだけど、今優しいのもそうだけど、個人的には自分は縁談の真っ最中だし炉子は使用人、というのをちゃんと考えて、距離を置ける人なんですよね。それは差別ではなく間違いなく大人の分別です。
「翔也と年の近い女性の使用人が縁談についていって大丈夫!?!?」……とちょっと心配してたんですが、翔也も炉子も大人なのでそれでひと悶着といったことはなかったですね。……るいには睨まれたけど、あれは不可抗力で……!!!(汗)
正直、最後の翔也目線がなければ完全に炉子の片想いだと思うところでした。翔也さん大人の対応過ぎてマジ分からん‼‼www
6年前のことを覚えていなくて心にさざ波が立っているのは、忘れられた炉子じゃなくて忘れてしまった翔也の方なんですね。何だその面白い展開は!!!
1巻は炉子と翔也の恋物語というよりは、完全に「春日小路家の使用人は(縁談で)見た‼」……なつもりで見ていましたww 恋を抜きにしてもいろいろ面白いんですな、これがまた( ̄▽ ̄)
さて突然の急展開なんですが、まずは愛子の宣戦布告に驚きました(笑)。……め、めちゃくちゃバトってるー!!!www
ですがバトルモノが好きな身としてはおいしい展開でした。男女関係なく戦うってのがまたいい!!!(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾ 振袖で戦う愛子様は素敵過ぎました(。-_-。)
にしても、まさか1回目の催しでいきなり縁談相手が1人脱落するとは思わなかったなぁ。。。いや、それ言ったら2回目も‼‼(汗)
これは秋、冬と1人ずつ落ちていくと……? そして湧き上がる中村家への疑念。
翔也が未だに付喪神を使役してないことを考えると、やっぱり記憶を失った日にそういう力を封じられたとか消されたとか??? 豊親が人の姿を取らないのは人の姿でどこかに潜伏していてそれがバレるから……? などなど、考えたらキリがなく。
それにしても、縁談の形式が面白いですね。式神バトルも面白いし、春夏秋冬それぞれ縁談相手主催の催しがあるのも面白い。
贅を凝らすだけではダメとのことで、「何か芸事でも披露するのかな……?」と考えていた私は意識を後宮に飛ばし過ぎでした(笑)。『光る君へ』観てるもんで……( ̄▽ ̄)
そこは社長夫人としての素養を発揮できるか、という感じ。派手なことをすればいいというよりは、気遣いだったりコミュニケーション能力だったりを見せてもらったような気がします。それぞれの事業を行う者としての矜持も。
個人的には、特に愛子が好ましかったなぁ。翔也へのアピールのチャンスでもあるけれど、そちらを楽しませつつ、他の人達も楽しませていて。るいの場合翔也への恋心が少しだけ足を引っ張っちゃったのかな。
るいはどう見ても翔也に式神バトルは挑まないだろうな、これなら脱落はないかな、と思っていたらまさかの事態。翔也の采配は審判的な立ち位置として正しかったし、るいは確かに先走った。樹里への謝罪も自己保身ばかりで良くはなかった。でも、かわいそうでもあったなぁ。。。あんな風に糾弾されて何もできなくなる気持ちは分かっちゃう。
気になる縁談バトル、そして翔也の記憶を消した犯人捜しは次巻後半戦(多分)。……このシリーズ3巻ぐらいで終わるのかな?(※この感想を書いていた当時、また1巻しか発売していませんでした。3巻できれいに完結しましたね!) 何はともあれ、楽しみです。
そしてあと書いておきたいことをいくつか↓
縁談相手に男性いるは思いつかんかったー!!!(笑)
せっかく絵が素敵なので縁談相手達のキャラビジュも見たいよー(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
回想と表紙にしか出てきてない裳子、果たして実物は出てくるのか……⁉⁉
NOTアクティブな私からすると、炉子の働きぶりスゴイです……( ̄▽ ̄;)
それでは、また次回!
余談。
1,2,3……からの「ゼロ」は、お見事(笑)。

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