『傷モノの花嫁』(友麻碧/講談社タイガ)

講談社タイガ

鞭展開度:★★★★☆
傷だらけ:★★★★★
それでも祝福を:★★★★★

【あらすじ】
猩猩に攫われ、額に妖印を刻まれた菜々緒。「猿臭い」と里中から蔑まれ、本家の跡取りとの結婚は破談。死んだように日々を過ごす菜々緒は、皇國の鬼神と恐れられる紅椿夜行に窮地を救われる。夜行は菜々緒の高い霊力を見初めると、その場で妻にすると宣言した。里を出る決意をした菜々緒だが、夜行には代々受け継がれた忌まわしい秘密が――。傷だらけの二人の恋物語が始まる。

シンデレラストーリーがどストライク……というワケではない私ですが(笑)、友麻先生の作品ということで信頼しかない……!!! とまずはコミックを読み(こちらが実は先です、友麻先生がストーリー担当)、やっぱり面白かったのでこうしてノベライズにも手を出した所存です(。-_-。)

コミックと大まかな流れはもちろん同じなのですが、例えばあるセリフを言うタイミングが少し違ったり、コミックと表現がどこか違ったりと小説に置き換えた場合のベストが尽くされていてそういった意味でも面白かったです。

上質なシンデレラストーリー、そしてワクワクの和風ファンタジーに酔いしれました……!!!

 

以下ネタバレあり↓

 

 

 

 

 

あくまで個人的な基準なのですが、

上質なシンデレラストーリーは虐げる側の描き方がすんごい。(笑)

何故虐げるのか、価値観がどこにあるのか、どういう思考回路なのかを深く落とし込んでいて、読者としても入り込みやすい。つまり虐げる側への純粋な「この野郎!!!!!!」って気持ちが湧き上がってくるとwww そんぐらい楽しんでるってことです( ̄▽ ̄)

 

そして『傷モノの花嫁』はまさにそれ(真顔)。

コミックだと特に暁美姉さんの1人顔芸大会がすんごいんですがww、小説は小説で本当に自分のことしか考えていない、価値基準も偏った身勝手な女がしっかり描かれています。暁美姉さん視点、マジすんごい。

 

そしてまぁこちらも負けじとすんごい若様( ̄▽ ̄)

友麻先生はツイッター(新X)で「クズ男」と評されていたのですが(作者さんが言うという……www)、私としては「激キショ男」でございますね。……あ、クズ男なのも間違いないです(`・ω・´)

 

ただ、あんな「猿くさい」なんて真っ先に虐げた男が、自分にとって都合のいい恋物語を作り上げてその中で1人うっとりしている。激キショ男以外の何物でもありません。

……いやもう、ホント……まさかそうなるとは予想もしていなかったのですんごいなと……www 菜々緒の顔にほだされたにしてもまだ「今まで悪かった」とか「もう傷付けたりしないから」とかってDV男の常套句が出てくるのかと思っていました。……まさか自分が悪いとは思いもしないとか……www

 

こんな両親の間に産まれた琴美がかわいそうだなと心配しています。どちらも親にはなれない男と女に見えて。

どうか彼らとは似ないでほしい、産まれた子どもに罪はないから健やかに幸せに暮らしてほしい……と思いつつ、あの白蓮寺の若様の娘である以上、そうもいかないのかなと思うと何ともやるせないです。

「お前の両親のせいで白蓮寺は五家から降格したんだ」って虐げられる可能性もありそう。実際は“白蓮寺の花嫁”の方が決め手なんだけれど。

 

……と、この野郎な2人について熱心に書いてきましたが私の推しは後鬼さんです( ̄▽ ̄)

 

菜々緒が白蓮寺と完全に決別した(今後出てくる可能性も否定できないけど)ところまでを描いたこの1冊、とてもきれいに終わっているワケなんだけどこの後菜々緒と夜行様にどんな試練が……⁉⁉ とドキドキしている今現在です(笑)。

 

それにしても、菜々緒の心の成長といいますか、白蓮寺の呪縛の中にあった菜々緒が徐々にその呪縛をほどいてく様が本当に素晴らしい。何ていうんでしょう、友麻先生によるそういう細やかな描写を私は愛しています。

暁美姉さんがまさかの紅椿邸に押しかけてきた時(笑)の、

勝手に虐げて、勝手に執着して、勝手に何もかも私のせいにされても、困る。

が特に好きで。暁美姉さんに言葉を封じられていても、もうそう思考できるようになっているんだ、と。

あとコミックだとなかった気がするんですが(記憶違いだったらすいませんwww)、このすぐ後で菜々緒が暁美姉さんに言い返す際に「うるさい」と遮っているのが面白かったですwww いいぞ菜々緒もっとやれwwww

 

そして自分の恋心を殺してくれた若様にも菜々緒は立ち向かいます。

ここでの抗いが本当にスゴかった。霊力が高いと言っても、護身術的なのは使えない菜々緒。なのでこの激キショ男には都合のいい奇跡を起こしてやっつけるのではなく、傷だらけになりながらも、自分の意志で戦います。

「もう、されるがままの自分なんて、嫌だ」から始まる菜々緒の意志が本当に格好いい。そして確かに彼女は紅椿夜行の妻なのだと。。。

 

確かにはじまりは夜行との出会いで、彼が救ってくれて、菜々緒はもう彼のいない人生なんて考えられない。

けれど、そこには確かに1人の人間として意志が見えました。決して夜行に寄りかかって、後ろに隠れて、依存するように彼に溺れていくのではなく。彼との未来を奪われてたまるものかと、戦う1人の女性の意志が。

 

それでいて若様はやっぱり女に理想を押しつけておいて思い通りにいかないと手が出るタイプでしたね~。うわぁ最低( ̄▽ ̄)

しかも連行されながらも菜々緒への愛を叫ぶというイカレぶり……夜行様どうする?? やっぱり斬っとく???←

 

ちなみにここまで、私が「菜々緒」「夜行様」とそれぞれ呼んでいるのは完全に菜々緒の言い方がうつりました(笑)。菜々緒、自分のこと「菜々緒」って呼んでますからね~。昔の女性の感じがしてこれがまた和風感を強めて良き(。-_-。) 健気な幼妻って感じもしますよね(`・ω・´)

 

夜行様のお父様が「傷を舐め合う結婚」と称していたけれど、まさしくその通り。でもこれ、決して揶揄して言ったワケではないんですよね。

それこそ、夜行様の傷を知っていて、菜々緒の傷を察している夜一郎様、そしてここまで読んできた私達読者だからこそ分かるという。。。何とも味わい深いものでした。

 

本当にいろんな“傷”を抱えた物語でした。そしてそれを受け入れて、更なる傷を作りながらも前へ進むことをあきらめない物語。次の巻も出てくれるとのことで本当に楽しみです(※この記事を書いていた当時まだ小説は1巻しか出ていませんでした)。

そもそも、白蓮寺家は何で妖蟲に気が付かなかったの? とか。

白蓮寺が五家から降りたら次はどんな家が就くんだろう? とか。

各家の人達がどんな術を使うのかな~とか。

気になるところ、盛りだくさんです。そうしてワクワクしながら次巻を待っております。

 

最後に、「この言い回し好きだな」と思ったセリフを2つだけご紹介。

 

「年頃になれば、確実に艶めく娘だった」

何この品のある言い回し……⁉⁉ このせいもあって菜々緒は猿面を強制されたけど、お陰で菜々緒がこの年まで男に乱暴されずに済んだんだよなぁ。。。

 

「お前の心の傷を、俺は計り損ねていた」

夜行様言語化うっっっっっま‼‼www 菜々緒への優しさと自省がたった一言で見事に表されていて感動しました(笑)。

 

コミック共々、楽しみにしています(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾

 

余談。
河童と飯テロがここにも(真顔)。

コメント

タイトルとURLをコピーしました