『図書館危機 図書館戦争シリーズ3』(有川浩/角川文庫)

角川文庫

鞭展開度:★★★★★
ねじれたカイシャク:★★★★★
図書館は誰がために:★★★★★

【あらすじ】図書館は誰がためにあるのか――。緊迫のシリーズ第3弾!! 思いもよらぬ形で憧れの”王子様”の正体を知ってしまった郁は完全にぎこちない態度。そんな中、ある人気俳優のインタビューが、図書隊そして世間を巻き込む大問題に発展してしまう!?

前回めちゃくちゃ気になる終わり方をしてからの今回、やっぱりただ深刻なばかりに転ばないのが郁たち(笑)。久々に読んでまた大笑いしてましたwww

そして高校生の頃分かんなかったところで言うと、香坂大地の件と茨城県立図書館でのこと。理解できてよかったと心から思いました。

 

以下ネタバレあり↓

 

 

 

 

 

「見事な大外刈りだった」──もうその手塚の一言に尽きるwwwww

ごめん郁的には笑えないけど読者としてはめちゃくちゃ笑った‼‼www そして今思うと堂上が慧からの手紙を取り上げようとするのはさすがにやり過ぎ( ̄▽ ̄) ……郁、それは投げ飛ばしていいぞ……正当防衛に入ると思う……ww

 

にしてもここまで読んできて、堂上って本当に郁のことになるとブレーキ利かなくなるんですよね。ただの仕事として考えると「それは踏み込み過ぎでは?」みたいなことが、結構ある。

でもそういう人情部分を汲むしイジりもするしでも王子様が誰か言わないでおくのがこの職場(主にタスクフォース)だし、そうやって見てくると手塚慧のアレがいかに稚拙であるかも分かってくる。

 

郁の「あんたのお兄さん細かい嫌がらせ上手よね」に対し

「……初見でそれを悟るような真似をされたことに同情し、身内として深く陳謝する」

と謝罪する手塚が好き過ぎるwwwww 手塚ってホント生真面目さ故の面白さがあるし今となっては郁と仲間で同僚で友達でほんとほっこりする。郁と堂上が意識し合ってることに気が付かないのもかわいげが……と言いたいところなんだけど、私コレ自分が現場にいたら気付かない可能性あるからな……手塚、一緒にかわいげある奴ってことにしとこうぜ……(遠い目)

 

そして小牧教官が相談にのってくれて本当によかった。

小牧ってあんまりそういうことまではしないイメージあるけど堂上じゃダメなんだろうなって時はちゃんと受け止めてくれる。……あとはアレかな、こういうのプライベートだから聞いちゃいけないって本来なら線引きするところだけどプライベートで仕事に関係あることが起きちゃってる身だもんね、郁が……。

そしてさすがに郁から打ち明けられた話にびっくりしただろうな。

郁の本当に傷付いている部分に気が付いて気持ちをひとつところにひとまず落ち着かせるお手並み、お見事でした。

 

そんな矢先に起きる鞠江ちゃんが痴漢される事件よ(怒) (怒) (怒) (怒) (怒)

まぁこのあたりの怒りはみんなが存分に言ってくれて地の文でもたくさん書いてくれていたのでここではカット。クソが!!!!!!(※カットし切れていない)

 

このあたり、初めて読んだ時に地味に驚いたのが「郁って足きれいなんだ……」ていうwww ここまで、ホント驚くほど郁の女としての魅力にだぁれも触れないし地の文にも全然ないしでぶっちゃけ需要が分かっていなかった……急に来るやん美脚って……ww

何なら山猿だの熊殴るだの谷間できるほど胸ないだの堂上ブン投げるだのばっかり出てくるから驚く私は悪くない(真顔)。フラれエピソードも盛りだくさんだったしね~(苦笑)。

 

そんな郁の前に立ちはだかる自覚した恋の嵐と昇任試験。

昇任試験、こういうの今まで縁がないタイプの社会人なので今読むと改めて新鮮だな~( ̄▽ ̄) 筆記に唸る郁と実技の読み聞かせに頭抱える手塚が愛おしい(笑)。

そして死角なしの柴崎……もちろん柴崎にだって苦手なことはあるんだけど少なくとも社会人としては優秀の極み(`・ω・´)

 

……なんだけど、昇任試験さえも利用して問題児どもに制裁を与えるのスゴ過ぎるwwww そのしっかり怖がらせつつ退室もさせない吸引力はどこで覚えたのwwwww

やっぱり柴崎はいずれ図書館初の女司令になれるんじゃ……全然真実味がある……(震)。

とりあえず、3人とも昇任できて何より。結構この3人での友情も好きなのです(。-_-。)

 

話は変わって今回1番書きたかった香坂大地の話。

高校生当時も感じていたことではあったけど、この香坂大地って男なかなかの。

……何て言えばいいんだろう、世情をしっかり把握していて策士でもある賢さがあるし自分の確固たる意志があるし他者に対する線引きもしっかりしている。それはまず実の両親をハッキリ否定しているところからも分かる通り。

 

「床屋」という言葉を使っていたのに「理髪店」と書かれたことへの深い怒り。

私もどちらかというとかなり言葉のチョイスにこだわる方なんですが、それはあくまで感覚の話。自分の心にしっくりくる言葉かどうか、が重要。

だから、実はこのシーンは香坂大地への理解もありつつ「でも、そのくらい別にいいじゃんって思う人はたくさんいるだろうな……」とも思いました。良化隊に目をつけられるから仕方ない、ならまだ分かるけれど、例えばそうしたものが存在しなかったとしても「いいじゃん別にそのくらい」ってなる人は少なくない数いるんだろうなと。そしてそう想像して薄ら寒いものを感じました。

 

けれどそんな部分をどうでもいいと思わずきちんと怒り、妥協しないのが香坂大地です。

正直図書隊に所属していないのにこれほど言葉を狩られることに無関心でいないのはスゴ過ぎると思いました。まだ20代ですよね? いやすっご。。。

 

そして彼を起爆剤とした訴訟大作戦!!!(笑)

玄田隊長すっご~~~~~と改めて思いました‼ でもここで「まだ甘いな」と堂上。

「本当にすごいのは、あの人を勝手に泳がせてる稲嶺司令だぞ」

……た、確かに~~~~~!!!!!wwwww

……と、郁と一緒に震え上がってました(笑)。稲嶺司令がただ優しくおだやかな“おじさん”だとは思ってないけれど、それは今読み返して改めて思ってるけど‼ ……やっぱり「玄田隊長を泳がせてる」って大物過ぎる……!!!

 

「この言葉は差別用語だから気を付けてね」って教えられたことがあるけれど、この章を読んでいて改めて疑問。……コレが“差別用語”って誰が決めてるんだ?

もちろん、人種差別とか歴史があって今使われることが推奨されていない言葉や、ネットで生まれた外で使うにふさわしくない言葉も確かにある。けれど、「果たしてこれは差別している言葉なのか?」と1度立ち止まって考えることが大切なのかもしれない。

鞠江ちゃんも言っていたよね、「差別をわざわざ探してるみたい」って。

 

香坂大地の件で、大きく歴史が変わるワケじゃない。それでも少し、ほんの少し。……何かは変えられるし、それが未来でもっと大きな波となることもあるのかも。

今後自分も気を付けたいなって思ったことなのでした。

 

そして勃発、里帰り。

……いやコレ里帰りって言うのかなぁ?ww 一応地元ではあるけれど、実家に帰るワケではなくあくまで仕事であり。そこでいろんな戦争が既に起こっていて、さらに起こるのです。。。

 

まずもって内部の腐敗がスゴイ。

これは高校生の時に半分くらいしか理解できていなかったんだな、と思った。いやもっと下回ってるかも。分かってたのは主に“業務部員>防衛部員”のヒエラルキー。

けれどそれが何故まかり通っているかを今回理解。これはヒド過ぎる。そしてこの腐敗ぶりが茨城県立図書館をどれだけ蝕んでいるかも分かりそのエグさに絶句でした。

 

そんな中でもどうにか、本当にできることは少しだけれど足掻いていた横田二監たちが本当にすごい。

そしてよく分からん『無抵抗者の会』だとか大仏みたいなオバハンだとかを一掃する玄田隊長、マジ頼もしい……www 昔から好きなキャラではあったけど大人になって改めて好きなキャラだなー( ̄▽ ̄)

 

個人的に郁への嫌がらせは母親に密告するってのが大ドン引き。……え、そこまでするの!? 倫理観を一旦省いてもまずメンドクサくね!?!?!?(汗)

……などと思うんですが、あの手の人種はそーいうことに何故か時間を費やすんですよねー。。。( ̄▽ ̄) そしてこれは郁にとっては大打撃。

いや普通に家族のもめごと職場に持ち込まれるのキッツイな………………………………。

 

そして郁はためにためた心の内をぶちまけ、お父さんの本心を知ることとなるのです。。。

正直、私は郁のお母さんが好きではありません。けれど郁にとってはそれでもやっぱりお母さんなのです。「あたしのこと好きになって」と口に出せる郁が私は好きです。郁って自分のこと頭悪いと思ってるし実際まぁ頭脳派ではないんだけど、こういうストレートな言語化がいつもスゴイなと思っています。これも一種の「頭いい」なのでは。

そして職場からすぐに駆けつけて来てくれるお父さんが格好いいですね。これより後のことになりますがお父さんが郁を抱きしめてくれるシーンも好きです。あんな状態の郁を前にしても冷静で、過保護にはならないのがこれまた格好いいです。

 

そうして大兄ちゃんからの告白(まさかのあなたハゲありますよ発言www こういうところが笠原家なんだな~)も受けて、次の日の朝には反撃に出る郁。

このあたり非常に郁らしくもあり、でも効果的でもあり、成長も感じられるところでもあり。

これでただ“ざまぁみろ”しないのもこの作品の素敵なところだと思います。野々宮ちゃん達に「あの人たちみたいにならないで」と郁が言うのがまさにそう。これで勝ち誇って、野々宮ちゃん達が呪詛返しをしてはいけないのです。……同じになってほしくはないのです。

 

それらを経て郁が初めて目の当たりにする本当の地獄。

泣きながらでも最後まで戦地に立っていられた郁は本当にすごい。作品を断罪する為だけに何故こんなにも血を流さなくてはならない、と思う一方で、「くだらない」と一蹴できるハズのあまりにも偏った思想ひとつでこんなにも血は流れると現実味も感じずにはいられない。

「図書隊は正義の味方じゃない」を郁と一緒に本当の意味で痛感したのでした。

 

けれどそれを分かった上で尊重してくれる人たちだっている。県知事の発言はまさにそれで、あの作品だって、その作品を選んだ美術館だってそこを分かって覚悟してくれていたんじゃないだろうか。

 

そうして本当の意味で覚悟を決めている1人である玄田隊長の重傷。須賀原の暴走による横田二監の重傷。……うわーんいろいろ起こり過ぎるッッッッッ(泣) 2人とも生きていて本当によかった……けど。

……そうなんです、ここにさらに稲嶺司令の勇退も重なりますからね……。

 

──私は業が深かったが、多くの理解者をもまた得たのだね。

稲嶺司令のこの言葉に郁が学んだこともそれ以上のことも込められていて(稲嶺司令しか知らない戦いがたくさんあるからね)、いい締めくくりだと思いました。

 

余談。『ドッグ・ラン』は「どこまでサービスする気だあんたは」という地の文ツッコミが好き過ぎるwwww

 

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