鞭展開度:★★★★★
孤独と絶望:★★★★★
あなたに恋をする為に:★★★★★
【あらすじ】
「きっと、貴方に恋をする為に――」
異国の地にて勃発した神を巡る大事件。それは二つの国の『秋』を波乱と混沌の渦に呑み込んでいった。
大和の秋である祝月撫子。橋国佳州の秋であるリアム。幼き秋達は運命に翻弄されていく。と同時に、容赦なく訪れる理不尽な暴力に対し、座して待つことを良しとしない者達が奮起していた。
冬の代行者、寒椿狼星。
夏の代行者、葉桜瑠璃。
さらには、大和からの随行陣や橋国佳州の四季の代行者も加わり、事件は国家をも巻き込む事態へと発展していく。
やがて明らかになる、巨悪の存在。
撫子の護衛官、阿左美竜胆は主を救う為に戦場を駆け抜ける。
少女の愛と罪を巡る物語の答えは如何に。
上巻ラスト怒涛の展開からのさらに下巻怒涛の展開の連続。……ホントね、ハイカロリー(笑)。
そんなワケで、代行者シリーズはいっつも下巻読み終わるとそれだけで満たされて「ふいー……」てなってなかなか感想書けないんですが、今回はがんばりました。
もちろん今回も最後まで読んであまりにも満たされる内容。少女神に降りかかるあまりにも残酷な真実。それでも、恋するあなたの為に。
以下ネタバレあり↓
もうね、何から書けばいいのか分からない(笑)。いや、書きたいことは山のようにあるんだけどどっから手をつければいいのやら。とりあえず上巻ラストで撫子に残酷な選択を迫ったジュードについてから始めましょっか。
まさか賊から拷問を受けた末権能を暴走させ死亡した冬の神様の護衛官だったとは……。
上巻だけ読んだ時点でとても心に食い込んだ出来事だったのでさらに衝撃でした。まだ10代というのもむごいし(ジュードもこの時……いや今も10代‼)、何でしょう、拷問自体も酷い行いなんですがどんなに痛がって叫んでも誰も助けてくれない、助けに来てくれないって状況を考えるだけで胸が抉れます。
権能を使えば容易く脱出できたのでは? ……と考えちゃうけれど、いつも神様に選ばれるのは善性の強い人間というのがやり切れない。もしかしたら家族やジュードを人質に取るようなことを言われていた可能性も充分にあります。雛菊が誘拐されたまま8年間過ごしていたことを考えると。。。
主を喪った悲しみや怒りは計り知れず、次の主になったリアムのこととて心から愛している。そんなジュードは真葛さんと竜胆を撃ち、撫子も殺意を抱きます。……いやそりゃそうなるよ。そしてそれはしっかりジュードに伝わっていた。
というか、ホント毎巻、そして暁先生の別作品である『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』でもそうなんだけど、“客観視”と“寄り添い”の両立がスゴイんだよなぁ‼‼
本当に、筆舌を尽くしてそれぞれのキャラクターの心情、そこに至る事情――科学的根拠まで含んでいる――を描いてくれている。だからいつだって、読者も各キャラクターに思い入れが強くなって、一緒に辛くなるし、同時に愛しくもなる。
1人1人の心を惜しみなく拾い上げていくこの描き方が本当に好きです。……そしてもしかしてあんまり読書しないって人にも向いている読み物なのでは? とふと思ったり。ほら、外から見ると「バカだなぁ」ってなるような言動も、きちんと説明してくれているので。
そんなワケで、誘拐された撫子を救出すべく保安庁へ作戦会議の為向かう竜胆と白萩のやり取りでめっちゃ泣いておりました(泣)(泣)(泣)。
……ここ家で読んでてよかった……でもお陰でむせび泣いてました……www
何か本当にこう、悪いのは彼らじゃないのにどうして優しい人達っていつも自分を責めるんでしょう。もうそれだけで涙腺崩壊だし余裕のない竜胆と彼を心配している白萩どちらの気持ちも痛いほど伝わってくるからなおさら泣けてくる(泣)。
……『春夏秋冬代行者』はデトックス効果がスゴイですね……辛いんだけど心が洗われていく……。
ちなみに1度即死した真葛さんが病院で目を覚ました時の彼女と白萩のやり取りでもびゃあびゃあ泣いておりましたとさ(笑)。
あと今回死者数が本当にテロ・災害に値する数!!!!!!(汗)
撫子の権能で甦ったからいいかとか、橋国中の秋の代行者が集結して救命してくれたから(ここがまたグッとくる……)いいとはなり辛い。
たくさんの命が助かってくれたのは本当によかった。けれど撫子が目の前でたくさん人が殺されるのを見てしまっているのがもうツライ(泣)。心にどれだけの傷を負わされればいいんだ……_:(´ཀ`) ∠): 命を呼び戻すのだってラクじゃないんだぞー!!!(泣)
そして撫子が幼い身でこうして秋の神としての力を発揮していけばいくほどもっと大きなものに呑まれていくんじゃないかと気が気ではない。。。
そしてリアム、本当に最悪のタイミングでの権能発動。
リアムは何も悪くない。ジュードだってリアムの為に必死だった。でも大きなものに向けて走って行くばかりでもっと身近で小さなことを取りこぼした。それのくり返しが積み重なってあの崩落が起きた。枯れ葉が積み重なっていたのは撫子だけではなかった、リアムもだった。
今回、秋の権能の恐ろしさだったり神懸かりの凄まじさだったり幅の広さだったりと、いろいろ分かってきて読者としては面白かったなぁ。春の舞の時から生命腐敗の力に興味津々だったのでそういった意味では楽しかったです。衝撃的だったのは、護衛官を無理矢理生き永らえさせるってやつ。確かにこれはその執着含め人外じみている。
上巻で菊花は「依存先を分配させよう」と言っていたのだけど、個人的にそれ自体は悪くない考えだと思います。これは竜胆が危険だからというよりも、単純にいち人間として「依存先はたくさんあった方がいい」と思っているからです。
この作品は代行者とその護衛官でどうしたって共依存が強くなってしまう、それ自体は先程も述べたように暁先生が筆を尽くして書いてくださっているのでよぉく理解できる、納得できる。でも、そんな『春夏秋冬代行者』だってそれぞれの主従で完結してはいないのです。四季で団結し、異なる季節や主従関係にない相手に恋だってするし、今だってこうして国を超えている。
だから、今回菊花も秋陣営に加わったのはそんなに悪くない、と思っています。あの人愉快だから秋陣営ますます面白くなるのでは?(真顔) それに撫子の夢見の力に対しても竜胆より解像度高いし( ̄▽ ̄)
夢見の力――いつかの未来の竜胆と今の撫子が夢の中で会っていた、というのは上巻から感じ取れましたよね。だって竜胆の反応が夢に出てきた人じゃなくていつもの竜胆過ぎるんだもん(笑)。夢だったらもっと現実の竜胆が言いそうにないことを言うもんですよね。
そこに通じるラストの演出がアツイ(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
本当にあの未来が訪れるかは、これからの撫子達次第なんじゃないかなと思っています。
きっと大和の四季だけでなく、外国の四季陣営とも繋がっていていろんな人がより良い未来にしようともがいてきた、そんな先の未来だとして。それでもやっぱり撫子は自分がどれだけ傷付こうが良くて、竜胆達が大事で、竜胆は撫子の為ならいくらでも自分を責めてしまう。
どちらも相手を心から思いやっているのに、いやだからこそ悲しい連鎖が未来でも起きてしまうというのは、読んでて少し寂しかったです。撫子が自分の想いをようやく口にするのが、竜胆を手放す為なのもまた悲しい。。。
そうして告げる恋の言葉と共に、今の幸せそうな撫子と竜胆(……と、花桐(笑))なのが何か……味があるといいますか……(※結果好きですという話)。
さて、これで終わればキリがいいのかもしれませんが、まだまだ書きたいことがあるのできれいな構成とか気にせずに書きますww
今回初登場、橋国佳州の春・夏・冬(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
上巻で橋国は代行者同士の繋がりが希薄というようなことが書いてあったのでなおさら他の季節の登場は秋の舞ではお預けかな。。。と思っていました。思いがけない登場・大集結に大興奮(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
にしても暁先生、クソみたいな大人からクソみたいな倫理観を教わってしまった、けれど代行者に選ばれるだけあって善性を兼ね備えてはいる子どもを書くのウマ過ぎないか(笑)。イージュンと一緒に私もため息吐いてましたww
そんな夏主従については中華っぽかったので橋国ではなく中華――この世界では美天ですね――の代行者が来たのかと勘違いしていました。うーむさすが移民の国アメリカ(橋国)、いろんな人種がいるんですね。そして男女の幼なじみ主従……(※もうニヤニヤが止まらない)。
イージュンがエヴァンに初めて盾突くシーンが印象的でした。きっと怖かったろうなぁ。。。でも本当に、よく頑張った。ハオランいっぱい労ってあげてください(笑)。
冬主従はナマイキながらも倫理観を完全汚染されておらず、純粋さも垣間見えたからこそエヴァンなんかの下にいたことがかわいそうに思えました。狼星先輩凍蝶先輩を見習ってね(笑)。ルイーズは挿絵でのジト目がたまりません(。-_-。) クロエがダフネに拒否られてるのが不憫かわいいと思ってしまった……ww
春主従も是非お姿拝見したかったー!!!(笑) ……いや、出てきてはいるんだけどキャラビジュは出てこなかったので( ̄▽ ̄) ダフネちゃんがもうかわいい。あまりにも人見知りなのがかわいかったり笑いえたりでしたがこの作品のことなので根深いトラウマがあるような気がする。実は「年齢がもっと上の代行者もしくは護衛官が見たい~~~~~(ジタバタ)」ってなってたので(輝矢様もいいよね(真顔))ロバート最高でした(`・ω・´) そんなロバートとダフネちゃんという組み合わせがもうツボだ。。。(。-_-。)
さて春といえばで取り上げなければならない我らが大和の春主従!!!
今回季節が春、つまり雛菊はさくらと共に季節顕現の旅の真っ最中。そりゃあ今回はお休みだよなと思っていたらまさかの橋国襲来!!!(襲来て) ここマジで鳥肌立ちました✨
……しかし雛菊が狼星達の危機に勘付いたのが凍蝶がさくらに誕生日おめでとうの電話もメールもないからというのがまた……www 冬の男ある意味信頼がスゴイ。そしてそっからの春主従の行動力がすんごい。春の舞の時を思い出したわ。
でも、駆けつけたのは大和で待機していたはずのあやめと連理も同じ。本当に、ここまでの間で大和の代行者達は得難いつながりを強めていたんだなぁ。。。本当に胸アツでした。
そして話は戻って橋国佳州の秋主従。
ふたりぼっちの世界となりましたが、今回の着地点としては完璧だったんじゃないんでしょーか。リアムの求めていたものは大それたものじゃない、ただそばにいてほしい、それだけ。ジュードもまた、リアムを死なせない為に奔走していましたがそばにいたいのは同じ。
……何だか、リアムが悪魔と呼ばれていたりこれからもっと行動に制限がかけられるようだったりと決して、決してこれを最上の幸せと呼んではいけないけれど。それでも、今回このお話の中ではいいところに辿り着けたのだと思っています。
何だか『暁の射手』編を思い出しますね。ラストの方、花矢がひとりぼっちで謹慎みたいな状態になっていた、あの頃を。そして弓弦が帰って来てくれて満たされていたあの少女神を。
けれどリアムの現状を知った大和の神様達は現状で満足なんてしません。理不尽に確かに抗い出した橋国佳州の春夏冬も同じ。再び彼らと繋がり、ふたりぼっちの秋主従がもっといい未来に向かうことを心から祈っています。
いや~、本当にずっと面白かったぁ✨ 私がこの感想を書いている時点では黄昏の射手編の刊行が決定しているんだよね。続きが出ることのありがたさ(。-_-。)
メロンブックスの小冊子内容と合わせて、黄昏編は何となく月燈さん絡みで何か起こりそう。。。と思いながら続きを待っています。さて次お会いできるのは誰が顕現した季節の頃なのか。またみんなに会える日を楽しみにしています(。-_-。)
余談。
花桐が白萩さんをヨダレでベショベショにしなくなってよかった……www(この1匹と1人の絆にも泣けましたT ^ T)

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