『花神遊戯伝 ひとひら恋せ、闇告げる王』(糸森環/角川ビーンズ文庫)

角川ビーンズ文庫

鞭展開度:★★★★★
確かな執着:★★★★★
届かない:★★★★★

【あらすじ】
嵐の楽奪(らくば)い月が終わり、つかの間の休息が訪れる。知夏は緋剣の座を捨てた佐基を探すため、伊織、胡汀(こてい)、未不嶺(みふね)を連れてお忍びで市井に行くことに。だけど、一人はぐれてしまって――!

前回の花神読み返しからこちらの巻を読み返しておりました。……あの人に会いに行く為に……!!!

そして改めて読み返してみて思うんだけどキッッッッッツ(真顔)。さすが糸森環作品の本領発揮です。心の踏み砕き方が上手いこと上手いこと……www

新キャラ未不嶺さんにも注目です。

 

以下ネタバレあり↓

 

 

 

 

 

佐基さんが難攻不落だぁ……!!!(汗)

……と、初見の時に思ったのを思い出します( ̄▽ ̄) 優しかった佐基さんに再会できるもあまりにも態度が変わっていて知夏と一緒にショックを受けておりました……_:(´ཀ`) ∠):

大好きだった知夏が迎えに来ただけで喜んで寝返るなんてことはなく。その間に取り返しのつかないところまで堕ちてもいるのだからそりゃそうだ。今思うとそんな自分を見られたくない気持ちもあったのかな……あ、待ってもっと辛くなってきた……(遠い目)。

 

それで今回読んでて思ったのが、佐基さんって自分の過去を具体的には打ち明けていないんですよね。ちょっと吐露するシーンはあったものの、それは知夏に明かしているというよりかただ耐えられなくて心の内を吐き出しているという感じ。

それでも知夏は佐基さんの心を満たすことができた。知夏は“今”の佐基さんが求めているもの、そして自分の心を正直に差し出した言葉で確かに佐基さんを繋ぎ止めることができた。

相手の過去を打ち明けてもらって、それに寄り添って仲を深めることもある。でもこれはそうじゃない方法だなと、今回読み返してて新たな新鮮ポイントを見つけたのでした(。-_-。)

 

架々裏さんももちろん難攻不落。彼女からすれば、知夏は自分を緋宮の座から引きずり下ろした女。でも自分と同じ地獄を進むしかない哀れな女。

これまでは架々裏さんは強くて美しい、怖くて愚かな女という印象でしたが、ここで大きく変わるんですよね。見える角度が変わるというか。……そりゃ蒸規を恨みたくもなるよなと……。緋宮の闇があまりにも深い_:(´ཀ`) ∠): 気高く華やかなだけの最高位なんかでは決してなかった。

そんな彼女のことも救いたいと思ったのに、救えない。……佐基さんのことも、救えない。

 

そう、この巻は特に報われない巻なんですよね。

こんなに物語で報われないことってあるんだ……て初見の時ひどく茫然としたものでした。今まで自分が読んでいた物語は、例え途中でどんな困難があっても、最後は本当に守りたいものは、守れていたから。

けれどこの『花神遊戯伝』は、佐基さんの心を取り戻せて、架々裏さんと心が確かに通ったとしても、救うには至らない。生きて、一緒にいたかったのに。

知夏の「誰か、助けて」が、あまりにも悲痛なセリフで刺さったなぁ……。

 

そして恋心も砕け散る。

きらきらとした、胸を高鳴らせずにはいられない好きな人。緋宮の任期後もそばにいろと言ってくれた人。

けれどそれが“知夏”を好きだからではなかった地獄よ………………………………。

 

今回の胡汀、別人ですかってぐらい甘いなー!?!?!? ……て思っていたらのコレです。コレが1番上げて落としてが凄まじい( ̄▽ ̄;)

……全部この地獄を味わわせる為の布石だったのではと思ってしまうよ……(遠い目)。

……と同時に、知夏はここでも「胡汀の心を見逃してた」と思い知るワケでもあり。

 

この件、本当にすごいなって思ったのが、まず最初から不自然なくらい優しくしてくれるイケメンというある種“都合のいい”存在が、本当に不自然だったということですよ。

そこに残酷だけれど確固とした理由があって、それをこれほど時間が経ってから暴くハメになるという展開が、知夏の気持ちを思うと辛いけれど同じくらい納得もできて、この巻での胡汀の甘さにもどこか違和感を覚えていたので、やっぱり腑に落ちたという。

何というか、女の子向けでよくある展開を逆に上手く利用してきた! という感じで、これが糸森環マジックか、と舌を巻いたのでした。

 

そしてここでもやはり知夏に落ち度があったという点が挙げられているのがまたすごい。

多分これ、こんな過酷な世界じゃなく、まだまだ平和な日本でも同じだと思います。心のどこかで、「この人だから大丈夫」という根拠のない、なんとなくな安心感にのっかって、結果すれ違う、みたいなのは。知夏と胡汀の件ほどには愛憎渦巻かないだけで、でもあちらこちらに落っこちていると思うんです。

そういったことがこの世界観ならではのものに置き換えられていて、どきりとさせられる。知夏はきっと心のどこかで胡汀に甘えていた。それは「この人の多少の変化を見逃しても大丈夫」という、無意識の安心感で。

 

もちろん、知夏が何もかも悪いとはまったく思わないけどね!?!?!?(汗)

いや分かるかー!!! ……とも思いますし(笑)、ここまで必死に緋宮の任をこなして、いろんな人や神に心を砕いてってやってもいるんです。知夏、本当にがんばってる!! 私が頭を撫でてあげたい!!!(泣)

 

……そんなワケで、胡汀は自分を好きじゃなかったと思い知る知夏ですが、それでもこの恋に覚悟を決めます。恋する乙女は世界一カッコイイ(。-_-。)

それに胡汀のこの残酷な愛の告白は、後々一転二転していきます。それについてはのちの巻の感想で上げたいと思ってるんだけど、覚えてられるかな……( ̄▽ ̄;)

神世の秘密を解き明かすべく、まれびと女神は邁進するのです。。。

 

さて、ここまでの流れで入れづらかったことをこっちでつらつらと。

 

まず、2巻から登場していたんだけどここでいろいろ見えてきた未不嶺さん。

知夏とのやり取りが好き過ぎますねー!!! 未不嶺さんはキツイ言い方が多いので知夏も本気で傷付くんだけど、年が近いからなのかだんだんお互いズケズケ言い合っているような……www それでいてお互い絆されていってるんですよね。今回緋剣に任命された未不嶺さんの今後の動きも大注目です。

未不嶺さんは繊細でもありますね。そういった心の機微が本当に糸森先生上手過ぎる。

 

それと今回の流れで好きだったのは、「私の為に血を流しなさい」。

知夏の、誰も失いたくないという気持ちも本当に分かる。でも命じて、巻き込んで、手に入れたいものを手に入れなくてはならない時もある。もちろん“緋宮”に呑まれては危ういけれど、こうした覚悟をただの女子高生だったような主人公が持つのは結構好きです。

佐基さんに対する、「絶対連れて帰る‼」も。怯みそうになりながらも、「佐基さんが嫌だったらやめます」という当たり障りのない言葉を堪えて「私のもとへ戻りなさい」は痺れました。きっと死ぬほど勇気がいったと思います。

 

そんなワケで報われないことだらけながらも、またひとつこの世界に対して覚悟を決めた知夏。物語はどんどん過酷になっていきます。あっでも次の巻は結構好きですwww

またいつか続きの感想上げます~♪( ´▽`)

 

余談。
てれてれしてる伊織さんがかわいい(。-_-。)

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