162.『水無月家の許嫁4 恋に狂う一族』(友麻碧/講談社タイガ)

講談社タイガ

鞭展開度:★★★★☆
一途最強度:輝夜姫級
不穏な影:★★★★★

【あらすじ】
「僕はあなたと生きていきたい。それが誰かの恋心を砕くことになっても」

 一族に決められた許嫁の関係を超え、お互いへの恋心を確かにした文也と六花。
だが、輝夜姫の驚異的な力を覚醒させた六花に目をつけた分家は、一人の男を差し向ける。
背後には、かつて文也の命を狙った弥生の姿が。
姉のように優しかった弥生は、なぜ変わってしまったのか。
その秘密が明かされるとき、二人の心は揺れ動く。
天女の亡骸が眠る京丹後。謀略飛び交う一族総会が迫る!

いや〜久々に水無月家を浴びたけれど文章の軽やかさ・清涼さの中で深く静かに酔いしれる恋狂い加減がたまりません💕

それでいて、読んでいて改めて思ったのがこの「恋に狂う」様がまさしく“水無月”の名にふさわしいんですよね。

雨が降り続くその受け皿となる土壌のように、ひたひた、確かに土を濡らし徐々に泥沼と化していく……。天より降り注ぐ清らかな雨とぐしゃぐしゃに崩された泥水のどちらをも兼ね備える。友麻先生の言っていた「ドロピュア」がまさにですwww

というワケで、今回もそんなドロピュア具合を楽しませてもらいました‼︎

 

以下ネタバレあり↓

 

 

 

 

 

◯六花と文也の両想いの塩梅が最高。

個人的にはちょうど良い塩梅でした(。-_-。)

前回初めてのキスどころか結構激しめのキスまでした2人(笑)。想いも確かめ合って、さて今回からどうなるのかなと思っていたところでした。

 

実は私、恋愛モノが好きは好きなんですが、くっつく“まで”の過程に萌えるタイプ。

なのでくっついてから、あまりにもイチャイチャばっかりになると、食傷を起こすといいますか……www 甘いのは好きだけれど、甘過ぎて、しかもそれが多過ぎると苦手になってしまう。

なので4巻、私的に大丈夫かな……? と、ちょっと心配していました。

 

そしてめちゃくちゃ良かった(真顔)。

物理的なベタベタはほとんどなく、また今回もキスはありましたがあれはすごく大事なキスだったように思います(文也が反省しているのがまた好感度高いです(笑))。

 

高校生同士の健全なお付き合い(?)であり、この時代にそぐわない若き許嫁同士らしく奥ゆかしくあり、そして水無月家の人間らしく貪欲に求め合う。

心の奥深くを繋ぎ止め合うような心の通わせ方に、私は丁寧さを感じて好きでした。

 

そして心の奥深くを描くのは、六花と文也のことだけに限らず……。

 

◯水無月アキの存在

まさしく水無月家のイケメン(令和代表)!!!www

花邑先生のイラストほんと大好きです(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾

それでいて、何と言うのでしょう、ただ甘いルックスのイケメンというだけでなく、性格歪んでそうな(※失礼)油断できない雰囲気も表情から滲み出ている。

美しき歪み、とでも言うんでしょうか。

花邑先生の、そういう美しいだけにとどまらない表現が大好きだな、水無月家という作品にピッタリなんだな、と改めて思いました。

 

しかしフタを開けてみるとアキ君はかなり好きな人間でした(笑)。

女好きのいけすかない、しかも六花ぐらい簡単にオトせると思っている、侮っている大した器のない男。

……になると思っていたハズが、女は誰であれ(※輝夜姫である六花を除く)自分に惚れてしまう、それも母や姉に夜這いをされてしまうほどにという女地獄のただなかにいたという……_:(´ཀ`」 ∠):

 

こ〜れは久々に水無月家のドロドロを感じずにはいられませんでした。ていうかこの一族だからアキの神通力になおさら狂ってしまっているのでは?( ̄▽ ̄;)

そしてどうやら男には作用しないらしいのが興味深いです。これにも何か意味があるのか……?🤔

 

そうして愛を簡単に手に入れているようでむしろ愛が何なのか分からない、いや疑問を持つ、人間くさい思慮深さを抱えた男、それがアキなのでした。

「自分に興味のない六花を崇拝する」と告げたアキ、そこまで分かって言語化できてるのエライな!?!? と正直思いましたwww

初めて現れた自分の力に流されない女の子に、盲目的に入れ込まない。何故自分は六花に惹かれているのかを結構冷静に理解しているんです。

それは女に苦しむ生い立ちの中で手に入れたものなんだろうな……と思っていたら、その部分をもっとしっかり六花が言語化していましたwww この子も本当に聡い子だwwww

アキも六花も、今までの痛みの中で手に入れたこの思慮の深さなんだろうな。

それとアキは母親や姉に夜這いされたって言ってたけど未遂で済んだんだろうか……せめてそうであってほしいけど、希望は薄いかな水無月家だもの……(泣)。

 

そしてこういう主人公を誘惑する悪者ムーブ? なキャラ目線で描かれるの私的に新鮮過ぎましたwwww いやめっちゃオモロイわこんなのwwwww

お陰様でアキと一緒に文也の殺気にヒッとなってました……www

それともう今までの流れで六花がそんなポッと出のイケメンごときに赤面の「せ」の字もしないことは予想ついてたし、友麻先生もXで「文也君以外特に興味のない六花ちゃんが強い」って言ってたんでそのあたり心配してなかったんだけど、いざ本開いて目次に目を通したら「第三話 六花、オーバーキルする。」って書いてあったんでこの時点でもうアキの心配をし始めたぐらいでしたwww

 

そしてここで本当に揺らがない六花ちゃんがイイですね!!!(笑)

いや、フィアンセが心配になるような言動を一切しないのがとても良いです。もちろん文也からしたら、それでも気が気じゃないんだけど……www でも、六花はやれるだけの拒絶をしたと思います。

「私は文也さんが好きなんです。文也さんにもっと好かれたくて必死なのに……邪魔しないでください」

くぅ〜いいドロピュア具合(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾

そしてなるほどな、そりゃ他に好きな男がいたらそういう怒りも湧くよな、とも思ったのでした〜(笑)。とても強火でいいと思います🔥

もちろんここでキッパリ拒絶したのはアキの為でもあるけれど、↑のセリフは六花本人のかなり純度高めの怒りがほとんどを占めているんじゃないのかな、とか思ったり……www

逆ハーお断り主人公、それが六花ちゃんなのです(`・ω・´)

 

あとアキは特に卯美ちゃんのド正論パンチにやられまくってて面白かったですねwww 多分それが刺さる内はまだ引き返せるから、これからがんばれ、アキ……( ̄▽ ̄)

結局力の剥奪は今回しなかったけど、きっといつか本当にこの力が六花達を助ける時が来るんだろうな。その時が楽しみなような、アキがそれで傷付かないか心配なような……。そのぐらい、今回アキというキャラクターを大好きになりました(笑)。

 

◯片瀬六美の存在

「裏 片瀬六美、家出する。」

……ここで心臓ヒュッッッッッてなってしまったことをまずは謝罪したい!!!(汗)

 

いやでもコレはみんなもなったのでは!?!?(読者全員巻き込んでくスタイル)

1巻の時ホント何考えてるか分かんなくて怖かったし、ニコニコしながらお母さんの言いなりになっているのも怖かったし、かなり複雑な家族関係なのに普通に「また遊びに来るね!」みたいなこと言うし!!!!!(汗)

最後文也をチラッと見たのも忘れてない……アレ怖かった……絶対いつか文也を奪おうとしてくると思っていた……!!!_:(´ཀ`」 ∠):

 

けれどそうではなかったことが今回ようやっと判明。

六美がニコニコお母さんの言いなりになっていたのはお母さんの六花への怒り、いや憎悪を逸らす為のもので、そのあたりお父さんよりよほど上手く六花を守っていた、と。

そしてそれが六花への愛情故とは少し違い、天女の末裔の1人である六美は、「輝夜姫である六花を守らなくては」と本能で思っていたと。

 

けれど愛情がないワケではありません。

だからこそ今回いきなり水無月家を訪ねて、六花が幸せそうなのを見届けに来たのです。そして消えるつもりでいたのです。

 

六花には文也という優しい許嫁が迎えに来てくれたけれど、1人になった六美にお迎えなんて来なかった。

この、特別“じゃない”側をも掬い上げる描き方がたまらなく好きです。

普通は都合のいいお迎えなんて来ない。誰も助けてなんてくれない。そうして六美は、もうお母さんのかわいいかわいいお人形さんをやめたけれど、自分1人でどうにかするしかない。

 

それでいて、六花が六美に本家においでとは言えない気持ちも分かります。今まで母親によって積み上げられてきた“劣等感”、そしてもう取られたくない“居場所”ができてしまっている。

水無月家の恋に狂うさだめなんてなかったとしても、抵抗があるに決まっている。

だから今回の結論──六美は長浜一門に引き取られていく──は、ちょうどよい落としどころだったように思います。お互いに安否が分かり、しかし離れていて、でも会おうと思えばいつでも会える。

これからもっと仲良くなれるのか、それともこの距離のままお互いの安寧を守っていくのかは分かりません。それでも、ひとつ心地良い距離に居場所を見つけられたのは、お互いにとっていいことだったように思います。

 

にしても魔性の女だなぁ、六美!!!www

彼女なりの寂しさがあるのは理解できたんですが、あぁいった魔性ぶりはどういった心理から来るのか私には分からず……縁遠過ぎて……www

そのあたりもせめてロジカルに分析できたらいいなぁ。

 

◯“弥生”という女

そして描かれる、もう1人の“選ばれなかった”側の女の話。

この子もまたなかなかに恐ろしや〜なんですが(笑)、彼女が六花を明確に憎むのも正直納得できました。六花もまた彼女と同じような気持ちを先日抱えていた、という展開なのがまた巧い。

 

それでいて京丹後一門もまた恐ろしいですね……( ̄▽ ̄;) 一応その中でアキは味方になってくれたけれど、トップが五十六である以上京丹後一門そのものは間違いなく脅威となるでしょう。にしても子どもの利用の仕方がエグ過ぎる。

 

◯己を顧みない人間

弥生は正直まだ同情の余地があるのですが、六花の母親に六花の電話番号教えたのだけは許さんからな……!!!

1巻で1度は乗り越えたとはいえ、その傷は今も深く、例え離れて幸せな居場所を築けていても、更新されれば“あの頃”の自分に引きずり戻される。

『傷モノの花嫁』でも思ったけれど友麻先生、こういう自分を省みない同情の余地のない人間描くのウマ過ぎんか……( ̄▽ ̄;) そしてそれが主人公を引き立てる為にいるのではなく(例えそうであったとしてもあからさまにそうとはしない)、主人公に爪痕をくっきり残していて、彼女らには彼女らなりの“正当性”がある。……外から見りゃ全然正当じゃないんだけどね?ww

そして決して消えぬ傷の上に更に爪を立ててくる展開。何でしょう、本当に1人の人間として私はあの母親が大嫌いです。

そりゃ六美もまだ16歳で1人で生きていくしかなくても出て行くよな、と思います。

 

それでいて、いかに水無月家の最上位に君臨する輝夜姫である六花であっても、母親の呪詛は決して抜けない、何故かその引力に抗えない……という人間くささを描いているのがとても好きです。ただ本当にこれは六花がかわいそう……_:(´ཀ`」 ∠):

そしてただの人間であり最早人間じゃない人間でもある母親は、京丹後一門にとってある意味切り札ともなる。輝夜姫の最大の弱点なのだから。

正直、1巻でもうおしまい、これ以降出てこないと思っていた母親が今回出てきて本当に驚きました。一般人に過ぎないはずの彼女は、まだまだこれからも出てきそうですね……怖い……_:(´ཀ`」 ∠):

 

◯恋は綺麗事なんかじゃない

そして話は戻って、弥生の真意。

まぁこれは私以外もたくさんの人が考えていたとは思うんですが、やっぱり弥生は文也が好きだったかー……。恋に狂う一族ですもんね、好きな男に包丁差し向けるくらいそりゃありますよね(※感覚麻痺)。

 

それに対する文也と六花がいいですね‼︎

自分達の恋を正当化・美化しておらず、それが誰かの恋心を踏み躙ることをよく分かっているし、それこそ自分がやられたら彼らもまた水無月家らしく狂うのでしょう。

綺麗事じゃないと、身勝手な感情でしかないと自覚がある上でこの恋を貫くと決めた。そんな彼らが果たしてどこへ向かうのか、天女の墓場で果たして何が待っているのか、怖々楽しみにしていきたいと思います……(笑)。

 

◯卯美と信長

私の推しカプですねー!www

卯美ちゃんが信長を好きなのはもう間違いないとしてww、正直信長の方は分からないよな〜……と思っていたんだけど、おや、これは???(笑)

脈アリに見えたので、もうこの2人のやり取りが微笑ましくって仕方なかったです(。-_-。) 真理雄さんは若に引いておりましたが……www

 

それと、小噺の中で卯美と六花で乙女ゲームの話をしていた件について。

「この中で誰が好き?」みたいな話で、同じく乙女ゲーマーである私はウッキウキでございました(笑)。そして多分卯美ちゃんと好み一緒だわコレ……www

でも正直、「現実で好きな男と2次元で好きな男はまた別だよ〜ww」などと思っていました。それに乙女ゲームの攻略キャラって正直めんどくさ……いや厄介な男がめちゃくちゃ多いワケだし。

ですがここでふと気が付きました。

 

それは現実に乙女ゲームのような男がいないからで、しかし水無月家にはそれに相当する顔面と厄介な内面の男が実在するのだ、と……‼︎‼︎‼︎

 

水無月家というものになおさら震えた私でした。しかも恋に狂う性という恐ろしいオマケ付き(真顔)。

何かすっかり話が逸れてしまいましたが、文也にメロメロな六花も信長に素直じゃないながらも気になって気になって仕方ない卯美もかわいいというお話でした。。。( ̄▽ ̄)

 

 

というワケで、久々に読めて楽しかったです水無月家!

お次はまた怒涛の展開が来そうなので、覚悟を決めておこうと思います……www

 

余談。しももんがいつの間にかレンタルされてて笑うwwwwww

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました