鞭展開度:★★★★☆
空白、しかして激動の10年:★★★★★
なお続く初恋:★★★★★
【あらすじ】
イェスデン王国の北方。
険しい峰々と鬱蒼とした森に囲まれるリンドブロム領を治めるのは、その美しさから「辺境の真珠」と称される若き女公、リーサ・リンドブロムであった。貧乏領と呼ばれた地の経済を十年かけて立て直し、後継の養子エルガーに領主の座を譲るという段になって、突然、元婚約者の第四王子・ウルリクの率いる王領軍がリンドブロム領にやって来る。
その目的は、十年前に反逆を起こし国外に逃れていた王弟・ランヴァルドの再起を恐れた国王の密命により、かつて王家がリンドブロム家に預けた真の王の証「波濤の聖剣」を受け取ることだという。まさに同時期に、ランヴァルドが王都を急襲。国王崩御の報せが舞い込み――。
国の変事を前に、民を守るためリーサに残された道はひとつ。ウルリクに協力し、王の証を手にした彼を王座に就けること。
未だ燻るウルリクへの恋心はじめ様々な葛藤を抱えながら、リーサは嵐の中に身を投じ、未来を切り拓いてゆく。
喜咲冬子先生待望の新作!!やったね!!!(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
……ということで喜び勇んで読んだのですが、コレは……恋愛モノだ‼‼www いや、今まで読んできたのもそれぞれ恋愛要素はあったんだけど、これはその中で最も恋愛モノをしている……!!!
しかしながらベッタベタに甘いワケではなく、恋心を抱えながらも領主としての務めを果たそうとする主人公だったり何百万人、下手したらもっとたくさんの人の命がかかった国の変事があったりで、あぁ、やっぱり喜咲先生の作品だ……と今回もどっぷり浸らせてもらいました(。-_-。)
以下ネタバレあり↓
喜咲先生の作品だ……ウルリクの方もリーサを好きなままでいてくれるとは限らんぞ……!!! と身構えながら読んでいましたがちゃんと好きでした(笑)。よかったー( ̄▽ ̄)
2人がそれぞれ今の立場をわきまえたふるまいを心がける一方、どうしてもかき乱されてしまうのがたまりませんでした(。-_-。) リーサが「恋ですね」とエマにきっぱり言われてるのがオモロかったwww
そしてそして、お互い「見栄を張っている」というのがなんでしょう、人間くさいというかもしかしたらこれが人間の本質なのかなーと思うなど。
見栄を張るっていうと、自分を大きく見せるというか、ヘルマンの挙げた例がまさしくに思えますが(笑)、そうばかりではないんですね。ただ、何事もなくお別れしたい、なんてのも見栄だというのが、深いなー……としみじみしました。
そんな見栄をかなぐり捨てて「お金がないのよ!」とリーサが叫んじゃうのが好き過ぎるwwwwww しかも自らかなぐり捨てた見栄じゃなくて余裕のなさが吐き出させたというのが本人的にはまたハズいwww
そしてこれがラスト「国に、金がない」につながるとは……。いやどんな回収の仕方wwww
さて、そう考えるとエルガーもあれやこれやリーサに見栄を張ってたのかもなぁ……。いやお前の見栄は悪い張り方よ!?!?(汗)
リーサは家族としての情があるからどうしても捨て切れないところがあるけれど、読者である私としては何の情もなさ過ぎて「コイツは生きてるだけで悪では?(真顔)」とずっとなっていました。
いや~、それにしても喜咲先生って本当に独りよがりの愛情(と、本人が勘違いしているもの)を女に押しつける男とそれに対する嫌悪を完璧に言語化する女を描くのが上手過ぎる(笑)。
エルガーのアレやコレやを「愛じゃない‼」と言い切るリーサは本当に見事でした。うん、アレは愛じゃない。奴の言動はどこにもリーサへの思いやりがなかった。ただ自分の想いを押しつけて相手がそれに応えるのが当然だと言わんばかりだった。
完全に余談ですが大河ドラマ『光る君へ』を観てなかったらエルガーがリーサに何やら懸想するんじゃないかって予想できなかったな……光源氏のアレですね……(※源氏物語ほぼ通って来てなかった人)。
ウルリクの「貴女は、庶子を自分が死ぬまで放っておく夫を、愛せる人ではなかったな」というセリフもとても好きです。くぅ~、リーサとあまりにもお似合い過ぎる……!!!
これもまたリーサという女性の言語化が完璧でしたし、ウルリク自身の良さも感じられました。
あとリーサとキスしそうなタイミングで力み過ぎて聖剣バキッて折ってしまうのめっちゃ好きですwww
リーサ・カルロ・ヘルマンの3人組もめっちゃ好きです‼(笑)。いいトリオですよねー‼
男女3人組で恋愛まったくなく、言い合いしたり何やら画策したり(笑)、絆が見えて大変よかったです。ヘルマンはリーサがリンドブロム領に来てから本当に楽しかったんだな……。あと太っていたお陰で刺されても生きていられたので本当によかった‼www
そして喜咲先生はファンタジー要素の扱いが面白い。
『竜愛づる騎士の誓約』でも思ったことなんですが、いわゆる“魔法”というものがある種絶対的な法則の下にあるんですよね。それによって危うい真実すらも明らかにしてしまう。そのぞわっと感がたまらない、そして人間のえげつなさよ( ̄▽ ̄;)
夢のある、ワクワクしたものというよりはそういう怖い面を持っている。それが人を殺せる魔法だとかそういうことではなく、ただ当たり前にある“前提”によって、人間にとっては恐ろしいものと化してしまう。それが今までのファンタジーにはない要素でハッとさせられる。魔法そのものは何も悪くないのです。
戦争のところでまたひと波乱あるのではとハラハラしていたのですが、そこはむしろ戦いの描写をカットする描き方なのも面白いところ。
だってリーサもウルリクももう覚悟は決まっているのですから。ここに来るまで、それこそ10年前から、2人ともずっと、それぞれの嵐の中で戦ってきたのですから。
ウルリクが戦場で戦う一方、リーサには別の戦いがあるのがすごくいい。
自分だけ汚れ仕事をしないなんてことはしません。領主として、ウルリクと隣に在る者として、奪われた海の民としてオットー達を生きたまま焼き殺す。ちゃんと容赦がなかった‼‼
……まぁ、オットーはお仲間にとっとと殺されたのでむしろまだマシな死に方をできた方ですかねぇ……( ̄▽ ̄;) そのお仲間は生きたまま焼かれていってリーサはそれを彼らの最期まで見届ける。
女性の主人公にもきちんとこうした役割を担わせる展開、とても好きでした。
さて、そんなワケで今回も領主としての矜持を持った主人公に最初から最後まで魅せられっ放しでした(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾ 自分の民を守るべく「力が、欲しい」と立ち上がる少女。こんなの惹かれずにいられない(。-_-。)
さらにはそこにままならない恋心も加わり、格好よくも人間くさく、かわいらしい女性が出来上がってさらにたまらんかったです(笑)。
ウルリク一世、リーサ王妃万歳‼ とりあえずは空っぽの国庫が待っていることですが、2人の治世に幸あらんことを(笑)。
余談。
いやホントに「オカネガナイノヨ!!」がこだまする……www

コメント