『椅子職人ヴィクトール&杏の怪奇録(7) 君のための、恋するアンティーク』(糸森環/ウィングス文庫)

ウィングス文庫

鞭展開度:★★★★☆
殺人の恐怖:★★★★★
恋は幸い:★★★★★

【あらすじ】
店の周辺で不審者に拘束されそうになった時、杏を助けてくれたのは青いサンダルの女幽霊。ヴィクトールから、幽霊の正体とともに語られたこととは……? 怖さも甘さもクライマックス、オカルティック・ラブコメ完結!

とうとう読みましたヴィクトール最終回!!! ……う~ん、最後まで恐怖とときめきが交互にやって来て感情がヤバかったwww

しかも今まで散り散りだったいろんな謎がここに来て一気に収束してくるんですね……いやホント鳥肌立った……。糸森先生の引き出しが無限大過ぎる(笑)。

 

以下ネタバレあり↓

 

 

 

 

 

ごめん、正直ヴィクトールから杏へのアプローチよりもあちこちに散りばめまくってる恐怖の方がいろいろ上回ってきた( ̄▽ ̄;)

ヴィクトールも恋愛的なこと言ってもそれを怖い打ち明け話の間でしてたりむしろ恋愛的な話をしているようで杏の深いところを抉っていたり……。もうホント何なんだ、ヴィクトールも幽霊も生きている人類も‼www

 

にしてもホントしれっとそーいうの混ぜてきますね~ヴィクトール。コーヒーの中に混ぜるミルクの如くです。いや色変わらない砂糖の方が近いか? まぁそれは良くて。

外国人はわざわざ「好きです」とか「付き合ってください」とか言わない、そんなの言わなくても分かるでしょ? ってやつなんでしょうか。どうやら日本のそれは海外で告白文化とまで言われているとか。

ヴィクトールがあまりにもしれっと混ぜてくるので、私はその次のページまで読んでから「……え⁉⁉」てなってもっかい戻って読み直しましたww ……杏ちゃんはその世界の住人なのでそれができないという……( ̄▽ ̄)

 

ただ正直、「意外と初めの頃から君に気が合った」については杏ちゃんとほぼ同意見です。

……いや分かるか‼‼www

こんだけ変人ムーブ見てきてたらそりゃ「は?」ってなりますって‼ クリスマスだって何の期待もせずに予定入れますって‼‼

正直私もヴィクトールが杏ちゃんを好きなのか全然分かっていなかったです。そこには「主人公だからこの人は主人公のことを恋愛的に好きだろう」という雑な驕りめいた気持ちでいて違ったら何か私が恥ずかしくなるから、という防衛も兼ねていましたが。でも本当に変人過ぎて分かんなかったというのが8割ですね( ̄▽ ̄)

 

そして今回それ以外でもいろいろあり過ぎたせいでさぁ(汗)(汗)(汗)

犯罪者、ポルターガイスト、過去の殺人事件、ポルターガイスト、何かヤバイ人……。

いや今回正直生きている人類の方がヤバ過ぎて「ポルターガイストじゃない」って語りで言われた時の絶望感がハンパなかったです(真顔)。

 

……っていうか杏ちゃんはまた椅子に縛りつけられるの(泣)。もうやめてあげて(泣)(泣)。

おぞましいバケモノやむごい身分制度、醜い権力闘争などなどが詰め込まれたファンタジー世界じゃないのに……やはり現代日本が舞台でも糸森環作品の主人公ということか……_:(´ཀ`) ∠):

 

ただコレ前回縛られた時も本当に思ったんだけど(前回縛られたて……(泣))、ただ“椅子に縛り付けられる”って行為に対してここまで恐怖を訴えてくれるの、すごく丁寧だなぁって。

正直物語として見ていると――これはマンガやドラマなんかでも――、椅子に縛り付けられた“だけ”って思っちゃう。でもこれって手足の自由を奪う行為で、これから何をされても自分には抵抗する手段が何もないってこと。これから何をされるかは全部相手次第。

……そう言葉を尽くしてくれて、あぁ、こんなの“だけ”でも何でもない、この後運良く何もされずに終わったとしても心の深いところに傷になって残るよなぁって。

 

そして杏ちゃんの心の傷は他にも。

まさかのお母さんが亡くなっていたということがここで初めて判明するんですが、ぶっちゃけ私これ、ツイッター(新X)でネタバレ見ちゃったんですよねぇ……( ̄▽ ̄;)

読んでいないのにわざわざ検索したりしません。勝手に流れてきたというか。それで、帯のヴィクトールのセリフ「君の母親に挨拶させてくれる?」がお母さん本当に生きてるかってことだったというのが目に入ってしまって、それで今までの杏の言動を顧みて、あー、これは生きてないなと。……本の中で初めてハッとしたかった……T ^ T

 

にしてもヴィクトール、本当に素敵ですね。

まだ夜7時前に杏ちゃんを家に帰すのは彼女が未成年なのをよぉく分かっているっていうのもあるし(もうこの時点で満点‼)、杏ちゃんがお母さんのことで、家族と向き合えていないのを心配してっていうのもあるし。

変人は変人なんですけど大人の恋人としてはもう満点をとうに超えています、本当にかっこいい‼

 

そしてこのあたりの地の文がもう好き過ぎる。

だが体中を満たす寂しさは杏だけのものだった。誰とも分かち合いたくないものだった。

恋をしていて、いろんなことを分かち合ってきているヴィクトール相手でも嫌だった、というのがとても好きです。人間は恋だけでは生きていけないし恋だけでは満たされない。

オズの靴は確かに効果を発揮したのでした。

 

糸森環先生のどの作品でも言葉にときめいて仕方ないのですが、今回も↑以外にも盛りだくさん。そのいくつかをご紹介しようかと。

 

ありふれた日々って、なんでこんなに目まぐるしいのだろう。

→ほんっっっっっとにそれ‼ 大人の行列にはみ出さずにいられるかっていうのも、大人って年齢だけどホント分かる。

 

けれども密かに思うのだ、これが通り雨のような恋じゃありませんようにと。いつまでも溺れて窒息するくらい好きでいたい。恥ずかしくなるほど真剣にそう願っている。

→もーーーーーぅ素敵‼‼(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾ そしてこれより前にこれから自分がどうなるか分からない、ヴィクトールのことも1年後にはそんなに好きじゃなくなってるかもって書いているのが好き。現代日本が舞台だと、フィクションであっても重たい恋をウソくさく思っちゃう時があって……。こういう後ろ向きな可能性も触れていて、その上でこうして願いを書いてくれているとグッときちゃう。

 

「私のこと、とても好きですね」

→本当にね‼‼(笑) これぞまさに重たい恋ですよ。そして主人公に知らぬ存ぜぬをさせるのではなく気付くところはちゃんと気付かせる、って流れなのがとても好き。雪路君の遠回しな告白に対してもそうでしたね。

 

恋をお聞かせしましょう、アンティークの令嬢たる私が。
なぜなら、私の恋はとびきり幸いだ。

→うわ―――――今までの巻で出てきたワードがいろいろ散りばめられてる(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾ 『お聞かせしましょう、カクトワールの令嬢たち』の感想で「出てくる幽霊ほぼおっさんじゃねーか」とツッコんでいたのですが、それを見事に回収してくれました。ご令嬢はクイーンアンでしたか……‼‼

 

大体において、思春期の子どもよりもいい大人のほうがみっともない恋愛をしてのぼせ上がる。純心に憧れる分、そうなると決まっている。

→杏ちゃんが未熟な恋にうんうん魘されている一方、杏ちゃん的には思いもよらない大人の本心(笑)。ヴィクトールのこじらせてる感じたまんないな( ̄▽ ̄)

 

ヴィクトールと杏はアレですね、恋人同士になっても何かお互い厄介な感じになってるのがいいですねww ベタ甘とはまた違う……キスシーンを敢えて描いていないのも好き(。-_-。)

雪路君も言っていたように杏ちゃんはヴィクトール化が進んでいる……そしてちっともうれしくない杏ちゃん……( ̄▽ ̄) でも本当、そんなどんどん洞察力が増している杏ちゃんだからこそヴィクトールとお似合いなんだよね。しかもまさか間違い電話の相手がヴィクトールだったとは‼‼

 

そんなワケで、今回本当に集大成という感じで楽しませてもらいました‼ てっきりあくまで日常の一部として終わるのかと思ったけど……いやそうではあるんだけど……こんなに今までのエピソードを収束する流れになると思っていませんでした。……いやぁ……生きている人類にも幽霊にも仲間が増えまくりだなぁ……www

杏ちゃんは絶対今後もあの世に手招きされるんで、境界を行き来する性なんだろうヴィクトールはがんばって杏ちゃんを連れ戻してください。よろしくお願いします。

 

そして、糸森環先生の恋にまつわる言葉たちにまたたくさんときめきました。糸森環先生の言葉に私こそ恋をしています。これからもまだ続いている『お狐様の異類婚姻譚』や続きが出てほしい『かくりよ神獣紀』、まだ見ぬ新作に出会えますように。

ありがとうございました!!!

 

余談。
杏ちゃん岩上さんをあのまま追いかけてたら、多分バッドエンドだったんだろうなぁ……_:(´ཀ`) ∠):

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