鞭展開度:★★★★☆
ワクワク児童文学度:★★★★★
時間の定義:★★★★★
【あらすじ】時間どろぼうと、ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子モモのふしぎな物語。人間本来の生き方を忘れてしまっている現代の人々に〈時間〉の真の意味を問う、エンデの名作。
何だか最近名作を読んでいきたいな‼ と思いまして、手始めに家の本棚の奥に眠っていたこの『モモ』を引っ張り出しました。実は読めていなかった( ̄▽ ̄;)
そして腰を据えて読んでみると、まず海外の児童文学を浴びている……‼ 懐かしいこの感覚……‼‼ と楽しくなり(笑)、次いでこの作品での“時間”というものに感じ入りました。
50年以上前に出された本だけれど、ここに書かれていることは決して現代の我々にとって他人事ではなかった。
以下ネタバレあり↓
まず面白いのがこの“モモ”という存在。日本でモモという名は珍しくありませんが(現にこのブログで取り上げている『いみちぇん!』なる作品の主人公もモモちゃんです(笑))、海外では珍しい名前。
しかもモモは自分の年を訊かれて「百」と答えており、日本人としてはあぁ、だからモモなのかと。作者のミヒャエル・エンデはそのあたり知っていたんでしょうか……? 偶然だとしたらそれもそれですごい。とにかく、私はこの子は普通の人間ではなく、もしかして子どものまま永い時を生きてきたんじゃないだろうかと思ったりしました。
そんなモモちゃん、ある特別な才があるけれどそれがまたとっても不思議。聞き上手とはよく言ったものだけれど、これが真の聞き上手か……!!!
ただじっと話を聞いているだけでその人の答え、本質を引き出すというか。そんな黙って耳を傾けているところを想像するだけでもうかわいいです(。-_-。)
そして他にも面白かったのは、“灰色の男達”!!!
ずっとこの『モモ』という作品のことは知っていたけれど、どうやって人々から時間を盗むのかまったく想像できませんでした。だから「なるほどー!!!」とものすごく腑に落ちたし、こんなの思いつくなんて天才‼ とも思ったし、これは今の私達にもものすごく刺さるものだなと。
時間とは生活だからです。そして人間の生きる生活は、その人の心の中にあるからです。
もうこの言葉にじんとしてしまいました。そして、今の自分は生きている時間を過ごせているけれど、あの時はどうだったかとか、これから先心の通った時間を過ごせるだろうかと思いを馳せました。きっとそうやって考える時間も大事なんだと思いながら。
まぁ灰色の男達、要は効率厨にさせてくるというかね( ̄▽ ̄) タイムパフォーマンス、他の人より優れていることが大事、金を稼げ、無駄なものは排除‼‼ そう思わせて人間から時間を削り取るあくどいやり方、あまりにもお見事です。
海外の児童文学って子どもvs.大人が珍しくない気がします。海外ホラーゲームのリトルナイトメアなんかもその構図(`・ω・´)
さて、ここで話は聞き上手のモモに戻しますが、この子は前半はなんてことない、でも確かに大事なことをできるすごい子、って印象だったのですが、後半になると人間くささが出てくるのがまたいいなと。
マイスター・ホラのところに1日いただけで1年も経ってしまい、たくさんの友達とは離れ離れ、しかもモモにとっての1日で随分といろんなことが変わってしまいました。そうしたモモがそこで数ヶ月を孤独に過ごし、気持ちがすり減ってしまうのがかわいそうで、でもこの子もそうした人間なら普通に持っている気持ちがあるんだなと、少しうれしくもなり。
灰色の男たちに屈しそうになっていたモモが、ふいに気が付くのです。
モモは逃げる気がなくなりました。いままで逃げまわったのは、じぶんの身の安全をはかってのことです。ずっと彼女はじぶんのことばかりを考え、じぶんのよるべないさびしさや、じぶんの不安のことだけで頭をいっぱいにしてきたのです! ところがほんとうに危険にさらされているのは、友だちのほうではありませんか。あの人たちを助けることのできる人間がいるとすれば、それはモモをおいてほかにはないのです。友だちを自由の身にしてくれるよう灰色の男たちを説きふせられる見込みがほんのすこしでもあるなら、すくなくともやってみるだけはやらなければなりません。
自分本位な気持ちでいたことに気が付いて、やれることが小さいことかもしれなくても自分がやるしかないんだ、というのが、何だかとても格好よかったのです。そうしてたくさんの友達がモモのことを大好きなように、モモも彼らのことが大好きなんだとより一層伝わってじんときました。こうして奮い立つ少女のなんとかっこいいことか!!!
あの孤独に耐えられる人間なんかほとんどいないし、心が弱くなってしまうのも当然のことなんだけれど、それを「自分のことばかり考えていた」と厳しく、けれど心地良い気付きとして描き、本当に危険なのは友達で、立ち上がるべきは自分なんだと驕りではなく事実として受け入れるのがとても好きな描写でした。
そうしてまたマイスター・ホラと再会を果たすけれど、モモはたった1人……いやカシオペイアと2人(?)で立ち向かわなくてはなりません。カシオペイアがいてくれてよかったー(泣)
カシオペイアもめっちゃかわいいですよね。特に最初にマイスター・ホラとお別れした後にカシオペイアもモモと一緒に元の世界に行ってくれてたんだけど、最初モモが話しかけても甲羅は何も表示せず、これはカシオペイアじゃない普通の亀なのかと思ったら……やっぱりカシオペイアだった‼ というww 何で最初に応えてくれなかったのかといえば「ショクジチュウ!」とのことwww か、かわいいwwww
そんなカシオペイアとモモで挑む最後のミッションが最高でした。どっちも本当に、よくがんばった……!!!(泣)
あと私、道路掃除夫ベッポもお気に入りキャラなんですが、彼が過労死してなくて本当によかった(泣)。マジでおじいさんだから余計に心配しちゃったのよ(泣)(泣)。
モモも本当に大好きなんだね。灰色の男たちを追いかけないといけないのにベッポにようやく会えてそっちで頭いっぱいになっちゃったのが本当に。そして時間が止まっているので応えてくれないベッポじいさんに悲しくなっちゃっているのが本当に。
時間を解放した後真っ先に再会できて本当によかった。年齢を超えた友情って素敵ですね。
カシオペイアが大好きなのは先程話した通り、そしてマイスター・ホラもお気に入りです。賢者とはあのような人のことを言うんだなぁ……!!!
穏やかで優しく、考え深く、人間に何もかも手を貸すわけではない公平さのようなものも感じる。モモの「あなたは死なの?」が深過ぎる……!!!
年を取ったり若返ったりするのもまさに時を司る者という神秘性を感じて素敵でした。彼が眠ることで時間が止まるだとかもファンタジー好きとしては刺さる(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
そんなワケで、この『モモ』、……読んでみて本当によかった‼(笑)
実は何年も前に序章ぐらいだけ読みかけてたんですけど、そこで挫折しちゃったんですよね……。
これはモモに限らず他の海外文学でもそうなんだけど、私の中で海外文学って脱線に見えるところが多いというか、「思ってたんと違う‼」てなっちゃって、1回挫折しがち。ハリポタや星の王子さまなんかもそうです。冒頭あたりでいきなり主人公が出てこなかったり、「この説明そんなにいる?」ってところに文章をかなり割いているように見えてしまったり。
だから、何年も経ってから、そういう前情報がある状態で覚悟が決まってから改めて読みます。そして最後まで読み切る、というスタイル。モモもそうなりました( ̄▽ ̄)
でも、その『モモ』を読んでいて、今まで脱線だとかに見えていたところも、生きている時間なのかもしれないな、と思えました。子ども達の暴風雨ごっこだったり、ジジのほら話だったり(笑)。
そしてこの“暴風雨ごっこ”のところを読んでいて、「そうだ私、こういう“大冒険”の話が好きだったんだ……!!!」と思い出せました。ハラハラドキドキの大冒険、とんでもない怪物に追われてぎゃーってなったり、みんなで協力して困難に挑んだり、時には焚火を囲んで安らぎの時間を過ごしたり。
そういう、童心を思い出せました。『モモ』本当にありがとう……!!!✨T ^ T✨
そんなワケで、大事なことをたくさん思い出させてくれた作品でした。
是非これからも‼ 後世に語り継がれてほしいですね。
余談。
甲羅に「オワリ」って文字が出るの、とても良い(。-_-。)

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