鞭展開度:★★★★☆
期待と落胆:★★★★★
100年の。。。:★★★★★
【あらすじ】
「ぼくはあなただけを守る魔物なんですから」
神魔を使役し《名もなき悪魔》の名を書に記す朔使(さくし)。人と獣の姿を持つ美しき神魔アガルと契約したレジナは、朔使となる試験を兼ねた調査のため、雪に閉ざされた小国ユピルスに向かうことに…。悪魔の調査のはずが、宮廷を探索中についた嘘から、王女の身代わりをすることになってしまい——!?
一途な魔物とその主となった乙女&未来の幻魔王が織りなす、悪魔召喚ラブファンタジー第二弾!
表紙の卿の顔がいい(真顔)。
結構前に読み返し始めて途中でストップしていた……のを、最近になってもう1度最初から読み返しました。感想書きたいなって思ってたけど結構忘れてそうだったから( ̄▽ ̄;)
そしたらまだ2巻の時点でめちゃくちゃ伏線あったから震えたよね………………………………………………………………。
1番好きな巻は4,5巻ですが2巻でのテーマ的なのが1番印象に残ってるかもです。レジナが卿に投げかけた言葉が特に。
以下ネタバレあり↓
……いやぁ、こんな2巻の時点でかなりの伏線を忍ばせてるなんて糸森環先生、ホント恐れ入るね……( ̄▽ ̄;)
とはいえあくまで2巻の感想、ということでそのあたりについては書かないことにします。でもホント震えた。
前回最後に見事朔使の地位を手に入れたレジナ……と言いたいところなんだけど、ここからが本番。面白くなってきた~て感じ(。-_-。)
一応試験みたいな感じでユピルスの悪魔調査に行くワケなんだけど、あくまで案件はシミュレーションでも何でもなくホンマモン。……いやぁ、ホント厳しい世界( ̄▽ ̄;)
とはいえ卿がいてくれるので実力的に安心だしムードメーカーでもあるんだよなぁ。しかしその卿もリウも同じ神魔を扱う者として厳しい面があり。。。
リウを愛するあまり足を動けなくして、視力も奪って、時を止めて永く生きる身体とさせているリウの神魔達。このあたりに、レジナの死後の魂にうっとりと思いを馳せるアガルとはまた違った怖さを感じますよね。人ならざるモノに魅入られた代償が詰まっている。
しかしその一方で、冷静沈着で神魔に対して一線引いているリウに尊敬も覚えたり。
「なぜ行動を起こす前に自分の可能性を閉じようとする?」
「わからぬことがあるのなら、わかるまで幾度も繰り返す。何事もそれが肝要ではないか」
……レジナはいい上司を得たのだと分かった。そしてこうした言葉は私の中にも重く降り積もった。
当たり前のことなのかもしれない。でも改めて胸に刻んでおきたくなった。
そうしてユピルスにいざ行かん!!! ……な、レジナ一行。いやぁ、黒ラクダかわいいですねぇ(。-_-。)
しかし希土石を用いて人工的にとは。。。うーん、少し怖い。
そこからの不可思議なアレコレは、何というか説明しがたい違和感が降り積もるばかりで、なかなか決定的な核心にはつながらない。。。でもそこからの後半の回収具合がさすがでしたね。
そして何というか、この世界での教会の人間浅ましいヤツ多過ぎんか……?( ̄▽ ̄;) まさかレジナに無理のあるお姫様代理をやらせた理由が後々全部罪を押しつけて殺す為だったとは。うーんむごい。
本当に、腹が立つし心に泥を押し込められるような嫌な気持ちになる。そうした人間のずるさも当たり前のように描くのが糸森環作品というもの。
ロアス王子は見た目めちゃくちゃ好きなんだけど(笑)、こんなに物分かりが悪かったっけ!?!?!?www
宰相達に比べればまだ理が通っているんだけどレジナに対する嫌疑も捨てない。レジナの方も、秘されし存在である朔使や神魔のことを話していいのかと足踏み。お陰でどんどん溝が深まっていく。この歯がゆさといったらなかったなぁ……!!!
しかもアガルが変な恥じらいを見せるせいでさらにレジナの心が叩き割られるし。……アガル、お前なぁ……www
「いやいやいや、好きでしょ」と端から見てれば思うものの、レジナからすれば何度も期待して傷付くばかり。
……「生きたまま臓物を喰らわれ続ける」はさすがにむごいが過ぎますよ……_:(´ཀ`」 ∠): ここは本気でゾッとした。レジナはそういう意味で問いかけたんじゃないのに。
そんな時に恥じらい、時に傷付けられな主従の恋の一方、こんな恋もあるんだという恋もあり。。。
今回のサブタイトルに”100年の虚無”ってあるけれど、本当は虚無じゃなかったんだ、彼女にとっては”100年の恋”だったんだ、って分かる展開が何ともニクイ。
「悪魔の愛も、年月と同じだけ積もってゆく。私のなかに」
「夢のような百年だった。守護天使の私が、ただびとのように激しい憎悪と愛を手に入れ、名を変え続けて生きてきた」
「恋とはなんて罪深い。守護天使さえも身勝手な幸福のなかに堕としてしまう。同胞よ、おまえも私のように、恋をするだろうか? あぁ、するがいいよ。きっと一生が変わる。生きる喜び、触れ合うことの素晴らしさ、惜しみない思いやり……心は動く。迸るように、動き出すだろう……」
悪魔への恋を語るヘネミアの言葉があまりにもきれい過ぎた。。。
そしてこれがレジナの心を激しく揺るがすんだよね。
ずっと憎んでいた悪魔がって。その価値観を覆す100年の恋物語は、レジナにとって恐ろしいものでもあって。
けれどヴィネトの価値観から100年の恋を掬い上げるのがレジナなんだよなぁ。。。
「試したことはある? 百年の愛が本当に重いのか。試してないのに、どうして重いってわかるの?」
「素敵かもしれないよ。今、灰が雪に変わったように。卿、だから新しい一歩! 知る前に切り捨てないで、愛してみようよ!」
……そりゃ卿も口づけしそうになるって!!!!!
「100年の恋」というものは、人にはとても追いつけなくて、人にとっては重いものだと思っていた。けれどそうかどうかなんて、試してみないと分からない。卿の言うように、重くて恐ろしいものなのかもしれない。でもレジナの言うように、重いなんて一言で切り捨てられるようなものではなく。ヘネミアの言ったように、幸福なものなのかもしれない……。
レジナの言葉に怯えのようなものを見せるのがこれまた卿の魅力だよね。そんなところも愛おしいなぁ。
何か本当にすごいね、レジナは。「書の王女」というのは本当にその通りで、ただただ書にのめり込むだけの少女ではなくて、それだけ煌めく言葉を持っている。
「『優しい』。こんなにきれいな言葉はないと思う。喜びを知り、与える表現の王様だよ」
この言葉も本当に好きでした。
散りばめられた謎やこうした恋の数々、複雑に絡んだ思惑や相変わらず魅力的な世界観。静謐で空っぽなユピルスの中でも本当に楽しめました。
糸森環先生の恋の表現が本当に好きだなぁ。
今は別の本を読み返してるんですが、またいつか3巻を読み返して感想を書こうと思います!
次巻も私の好みにどストライクなキャラがいるんですよ……ふふふ(。-_-。)
余談。
バレクがマジで好き過ぎる……………………………………(笑)。