鞭展開度:★★★☆☆
歪さ増量中(真顔):★★★★★
何なら最後のSSのが怖い:★★★★★
【あらすじ】
杏が白猫を追った先で見つけたのは、壊れかけた椅子などの廃品が積み上げられた庭。そこには何匹もの猫と、幽霊を名乗る少女がいて……? オカルティック・ラブコメ、甘さ増量中の第5弾♡
今回も面白かったー……んだけど、最後の書き下ろしSSが本編を上回る怖さでまだ心臓に石を詰め込まれたような心地を味わっている今現在です( ̄▽ ̄;) ……いや本当に面白かったんだけどね!!!!!!
相変わらずあらすじラストの文言が詐欺だと思います。絶対コレ、ツッコミ待ち……www
甘さよりも事件の主要人物達の歪さ増量中♡ だと思います。ハイ。
以下ネタバレあり↓
ふぅっと猫町に迷い込んでしまった杏。……からはじまる物語。
糸森環先生というと異世界ファンタジー率が高い方ですが、現代日本らしき世界であるこの『ヴィクトール』でも(今更ですが私はこの作品を『ヴィクトール』と略しています)その手腕は健在。存分に振るっております。もはやフルスイング。
女優猫に誘われて冒険したくなる杏の気持ち、ほんのちょっとのこわさとでもワクワクと。猫町の何もかもが異世界めいていて魅力的で。やはりそういうところの描き方が糸森先生だなぁとくふふしていました(笑)。
それでいて、ふっと現実に引き戻される感じもまたリアル。一気に異世界が色あせていく。その何とも言えぬガッカリ感がまたリアルに感じました。
……いや、でもやっぱ杏が庭の土を掘って骨を見つけるシーンが1番真に迫るものがあったかな……(汗)。あのシーンマジで心臓がドクドクした。
ひなたあおいの執着がまた怖い。かわいそうではあるけれど杏にしたことは許せないなぁ。自分がかわいそうだからって関係ない人に何をやってもいいってもんじゃない。
しかしひなたあおいが好きな人に「幽霊」呼ばわりされたエピソードは、やはりリアルに胸に残るものがあって。
……何でしょう、これはやる側もしくはやられる側を誰しもが経験している気がするんだよな……。残酷だけれど理解もできてしまうような。
このあたりでちょっと思ったのが、「糸森環先生って、人間が好きだよな?」ということでした。
……いや実際どうなのかは無論分かりませんけどねwww 決めつけたいんじゃなくて、私がそう感じただけの話として受け取ってください。
先程も書いたように、糸森環先生の作品は異世界ファンタジーが多くて。その中で生きる人々は、その世界の人間らしい野望を持っていたり利己的だったり矜持があったりします。その世界の中で「リアル」なんです。その世界の人間らしい「嫌さ」を必ず描いている。
そして一応は現代日本らしいこの『ヴィクトール』。こちらは私達の生きる世界と共通しているだけあって、私達にとっての「リアル」な「嫌さ」が描かれている。……と私は感じている(笑)。
不審な人間への眉をひそめる感じとか。対岸の火事に無遠慮な興味を向ける感じとか。
でも、そういった「嫌さ」に、作者の皮肉めいたものを感じないんです。
何というか、「ほらね、人間ってホント醜いよね」って語りかけてくるんじゃなくて、誰か特定のキャラクターをものすごく悪者にしたい風にも見えなくて、ただ、「そういう人間が実は好きだったりする?」と、今回の『ヴィクトール』での「嫌さ」を見てふと思ったんです。
そうしたら、今までの異世界ファンタジーでの「嫌さ」もそう繋がるような気がしてきて。
全部私の思い込みだったり、ただの考え過ぎなだけかもしれないけど。そう思ったら、もっと糸森環先生の作品を大好きになったんです。
リアルな嫌さでいうと、「ちょっと」にまつわる話は確かに刺さりましたね……(苦笑)。
何だろうねぇ。「ちょっと」なくせに、その中に入り混じる悪意や嫌悪、拒絶めいた何か。それを浴びることへの恐れ。
そういう、ドキッとするところを糸森先生らしい表現で的確に伝えてくる感じが、やっぱりすごく好きなんだよなぁ。。。
にしても今回も杏のすり減り具合がヤバかった(真顔)。ひなたあおい、そこは許してないからな!!!
骨を掘り出すところもヤバかったけどストーカーされるところもヤバかった。あんなん病気になるって。
杏と雪路、徹と弓子のやり取りはめちゃくちゃ大好きだったんだけどなぁ……!!!
いかにも高校生達のワイワイって感じでめちゃくちゃ楽しかった。そしてめちゃくちゃ声出して笑った(笑)。
「ちょっと」が怖くて踏み込んだ相談ができなかった杏だけれど、触りぐらいでも愚痴れる――または巻き込める――同年代の友達ができたことはいいことなんじゃないかな、と思っております。
私の理解力が追いつかなかったんでまた読み返さなくちゃなんだけど、杏って(多分いい意味で)猫の霊に憑りつかれてたよね? 今回あの猫が助けてくれなかったのは何でだろう。いやどこかでいた?
女優猫と一緒にいた黒猫がそうだったんだろうか……ダメだ記憶力弱過ぎる。
にしても『ヴィクトール』も5巻まで来ると帯に書かれてる言葉がちっとも甘いセリフじゃないってすぐに分かりましたよ。
「もっと悪い子になってみようか? 今日は、俺と夜更かし(デート)しようよ」
……はいデートじゃない~~~~~~!!!!!!
他人ん家の庭に行って土掘って人骨見つけてる~~~~~!!!!!!(汗)
杏同様、ヴィクトールのこの手の発言に期待しなくなっていますね完全に。ハイ。
ときめきたいのにどーーーーーしても幽霊がセットになっちゃうんだもんなぁ……(遠い目)。
とりあえず杏ちゃん、君は今だからこそできる女子高生の格好を堪能しときなさい。
そしてそしての『お嬢さん、星はいかが?』。
……タイトルは素敵なのに!!!!! そして扉絵もめちゃくちゃかわいいのに!!!!!!
内容は恋愛蒐集家を上回る内容でした。こわいったらない。
この話バラエティのスペシャル観ながら(ちなみに〇メトーーク)少しずつ読んでたんですが(テレビ観ながらツイッター見る感覚)、にぎやかな中で読んでてよかったぁぁぁ……!!!!!!(汗)
部屋で静かに1人で読んでたら夜眠れなくなってたと思う。にぎやか、大事。ありがとう踊りたくない芸人のみなさん(真顔)。←
……にしても杏ちゃん、その話はさすがに幽霊じゃないなって私でも分かるよ……www
杏ちゃんヴィクトールには敵わないのに何故か何度も挑みにかかるよねぇ(笑)。本編でも椅子談義を自ら持ち出すとは。結果としてヴィクトールに完敗するのが微笑ましい( ̄▽ ̄) ヴィクトールは杏ちゃんの発想をめちゃくちゃ楽しんでるんだけど、杏ちゃんはそれに気付いてなさげ。そんなところも微笑ましい(笑)。
にしても未来の幽霊からのメッセージってことだったのかな、アレ。。。
あの時点でまだ死んでないのであれば助かってほしかった。でもそればっかりはどうにもできない、通報するだけで手一杯なのが『ヴィクトール』というもので。
杏ちゃんただでさえ幽霊につきまとわれたり、今回だと幽霊のふりをした生きた人間にまでつきまとわれたりしてるのに、今度は女子高生を狙った誘拐殺人事件とか。。。ヴィクトールさん、もう毎回必ず送迎してあげて。
星型のキャンディーは素直に食べたくなりました。
現在同時並行で刊行されている『お狐様の異類婚姻譚』もそうだけど、糸森先生、ラストに種明かしするスタイルにどんどん磨きがかかってるんだよなぁ……( ̄▽ ̄;) もう翻弄されるしかない。
しかもあとがきで「今回はホラー要素が薄かった」「もう少し強めに出したい」みたいなことを言っていて、我々読者の心臓の強度を試されている……(死んだ目)。
最後のページに次巻予告が載っててひゃっほうでした。糸森先生らしいサブタイトル……(。-_-。) どの本も次巻予告が欲しいものです。
余談。
杏と香代さんの女の結託が深まっていく。。。