鞭展開度:★★★★☆
きらめく魔法:★★★★★
優しい言葉:★★★★★
【あらすじ】
『ちょー美女と野獣』(集英社刊)の著者が贈る
冒険恋愛ファンタジー!!
トーリンリマンという国には有名な逸話がある。
かつて数々の天災を受け、疫病にまみれたトーリンリマンは、使者を通して偉大な神リートリートに平和と豊かさを求めた。
リートリート神はその願いを聞き入れ、「頂の者が鐘を鳴らし岬の者と出会ったとき、トーリンリマンは整えられる」と約束をした──。
トーリンリマンのリッタ姫は、岬の者であるガンザによって幽閉されて育った。リッタ姫は16歳の成人の儀式の際、必死の想いでリートリートの鐘を鳴らし、その鐘の音は国の全土に響き渡った。
頂の者でないと響き渡らない鐘の音。リッタ姫は次代の頂の者だったのだ。
一方、孤児という理由でウイゲッシー魔法学園で虐げられて育ったルルは、ある日、自分は次代の岬の者ということに気づき、リートリートの鐘が鳴った直後、箒に乗ってリッタ姫のいる都へ飛び立った。
旅の途中で出会ったリッタ姫の兄、アンザハンと共に都を目指すルルの冒険物語。
ジャンルとしては少女小説かなと思いながら読み始めてみたら海外児童文学といった雰囲気で、読んでて懐かしさとワクワクでいっぱいでした✨
それでいて魔法などの不思議なことがたくさんあるハイファンタジー。……そうそう、私はこういう10代後半の女の子が頑張るハイファンタジーが読みたかったの……‼︎‼︎✨😭✨
ファンタジー設定グツグツ煮詰めた女性向けがまた1つ誕生したことに感謝を😇
以下ネタバレあり↓
ではまず、私がどうして海外児童文学みたいだなと思ったかから。
①語りやセリフが日本語訳された海外児童文学みたい!
……すいません、原書読めるような英語できる人ではないのではあくまで日本語訳されたものを基準としてます……www
それで、何て言えばいいんでしょう。まずセリフは、私達が現実で他人と話す時にならない言い回し? リズム? なんですよね。でもそれがまさしくファンタジーの世界って感じでワクワクする。この独特のリズムが読んでいて楽しい。韻を踏んでいるかのよう(この作品については、実際に踏んでるワケではないと思います)。
芝居がかっているとも言えるかもしれません。なので、すごく舞台化に向いてそうな作品だなと思いました。
あと「、」が多いのが、海外児童文学っぽく感じるのかも……?🤔
このやり取りとか海外児童文学み感じちゃうんですよね↓
「ドブに足を取られちゃって」
「ぬかったわね」
「ドブだけに」
「ぬかるみと、かけた?」
「フフッ、君センスある」
……すいませんちなみにルルは全然上手くないからねと言ってたんですが私は笑っちゃいましたwww
②誰もが格好良過ぎない
あくまで私が読んだ海外文学の範囲ですが、海外ってこの「格好良過ぎない」傾向にあるかなと勝手に思っています。
この作品だと、特にアンザハンとガンザあたりでしょうか。
アンザハンはこの作品のヒーローのようで顔が整っていて、ガンザは悪役ながら魅力的に思えます。どちらも少女小説においては間違いなくイケメン枠。
でもアンザハンはルルとの初対面で泥に突っ込んでて金も盗られてるし、ガンザはリッタに槌を投げつけられて顔面に激突してる(笑)。
こういうの、海外っぽいな〜と私は思っています。日本の作品に見られる“人間くささ”とはまた違うんですよね。誰だって痛い思いをすれば悲鳴ぐらい上げるし泣くし、怖い目に遭えば歯をガチガチ慣らして腰を抜かす。例えそれがカッコ良さそうなヒーローでも魅力的な悪役でも、そういう時はそうなる。
何ならルルやリッタも負けてません(笑)。かわいいだけのヒロインなんかじゃないよーだ! って、舌を出すような子達です。
ルルは学園長にギャンギャン言い返して生徒になる交渉を結構ズル賢く成立させるし、何なら学園から出てく時ちゃっかり約束は守らないしww、リッタはアンザハンに槌をブン投げるし鐘を鳴らすことができれば「ざまあみろ!」と声を上げるのです。可憐なばかりのヒロインではない。そういう子が主人公の作品も好きだけど(何せ私は乙女ゲームの主人公の女の子も好きなくらいなので💪)、ルルやリッタのようにこちらがタジタジになるほど(笑)勇ましい主人公もまたいい。
これが日本の作品とはまた違った魅力だなぁと思うし、あとそんな私的海外児童文学な作品を日本人(ですよね……?)が書かれてるの、すごいよなぁと!www
③迫害の仕方……?
特にルルが学園生活で味わった“虐待”に値する数々が、海外児童文学っぽい、と何か思いました。
いや、迫害の仕方というよりは、それによる主人公の生活面を細々描いてくれているところに、海外児童文学っぽさを感じたのかもしれません。ベッドはこうで〜とか、工夫してこれをこうマシにしている〜とか。ルルのその描写が、日本で、少女小説やライト文芸で、“シンデレラストーリー”と言われているものとはまた空気感や描写が違うといいますか。
……あと、私が読んできた数少ない中で海外児童文学と似てると思っただけで、もっとたくさん読んできてくわしい人からしたら「いやそうでもないよ?」案件だったらほんとすいません……( ̄▽ ̄;)
ではここからは本編について。
魔法がたくさん出てきてワクワクだったー(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾ 制服もかわいい‼ さらにはルルが死霊使いなのも面白い。幽霊達が怖い。それもまた楽しい。
それからやはり岬の者と頂の者、そしてその宿命を設けたリートリートが恐ろしくも興味深いですね。人外らしい視座の広さと(人からしたら)冷酷な在り方がたまりません。
……にしても岬の者と頂の者に次代が現れたら先代は赤いカエルにされてリートリートに喰われてしまうとは……_:(´ཀ`」 ∠):
ガンザがここまで往生際が悪かったのもとても納得がいきました。権力にしがみつきたかったのではない、目の当たりにしたおぞましい運命から逃げたかったのだと。
このあたり事情が分かるとガンザとラアダンテに同情してきますよね……。2人が自分が何者であるかを自覚してから出会うまでの10年の苦難だけでも相当なものなのに、やっと出会えて喜びに満ちていたのに、国の為に惨めに死んでね、みたいに言われたら。。。
ラアダンテが酒に依存するのもそりゃそうなるよなぁと思います。酒で頭をおかしくしてないと正気を保てない。いや、もう正気を失いたくて飲み続けているのかも……。
そんな2人が、最後はずっと来たかった海で戯れ合うシーンはとても美しく見えました。
端から見れば、いい年した大人2人が何してんだかって光景(笑)。しかもあのガンザがそんな風にはしゃぐなんて、前半しか読めていない頃の私だったら信じられない光景です。
そうしてラアダンテは赤いカエルにされ、海の中で、光に喰われて消えていく。
本当は、ガンザが治癒の魔法をかけなければ、ラアダンテはもっと生きることはできたのでしょう。でも、酒毒に蝕まれた体と心はもう、取り返しがつかないほどボロボロだったのでしょう。海に連れて行けたとしても、もう喜びなどとうに忘れていたんだろうと、簡単に想像がつきます。
けれどほんのわずかの寿命だけを残して治癒で癒された体と心で、海をガンザと共に楽しむラアダンテは、あの短い時間本当の意味で「生きている」と言えたのではないでしょうか。
そしてそんなラアダンテを見届けて毒薬を飲もうとするガンザに、あぁ、本当に欲しかったのはラアダンテと海で戯れ合うこの時間だったんだな……としんみりしました。
……けれどルルはそれを許さないっていうね!!!!!!www
ここ、まさかのルルの突撃にガンザが口に入れた毒薬3粒全部噴いてるのが笑ったよねwwwww 自死に誘う優しい悲しみごと全部ルルが吹っ飛ばしてくれましたよwwwww
そうして、ルルに連れられ王宮に戻るガンザは、声を上げて笑うのです。この、何と心地良い終わり方、いや新たなはじまりか。
あとここでのルルとガンザのやり取りのあたりの文章は海外児童文学というより少女小説だな、と思いました。なのでもし今後次が出るなら文章の雰囲気また変わったりするのかも……? と邪推してみています🤔 どっちにせよ楽しいことには違いありません。
私のお気に入りキャラクターはもちろんそんなルルです!www
キャラクタービジュアル見た時に「明るくて活発そうな女の子」だと思ったのですが、いざ読んでみると結構ちゃんと奴隷のような扱いを受けてきた子どもで、そこから賢さを身に付け賢さを駆使してきた子でした。強かで大胆で、同情する気持ち以上に「行けぇルル!!!」と、こっちも元気が出て応援したくなるような(笑)。
でも今まで受けてきた仕打ちに何も感じないワケがなかったんですよね。
他人が不機嫌なのが怖い。その不機嫌にふりまわされる自分が怖い。この気持ちは、ルルのような虐待を受けてきたワケではないですがすごく分かるなぁと思いました。あと子ども時代の描写でルルの傷付いた内面には触れず後から分かるのめっちゃ良いなぁって……!!! 当時ルルは心の傷を自覚していなかったから物語でも後から触れてきたのかな……なんて考えてみたりする(笑)。
やっぱり、誰かといるんじゃなかった。
他人と、旅なんかするんじゃなかった。
ずっと一人でいればよかった。
一人なら、こんな気持ちにならなくて済むのに。
この何だろう、ずっと賢くて勇敢で優秀だったルルの、急に拙く心細い、子どもらしい心の内が見えてきて、こっちまでジワジワと涙がこみ上げてきそうでした。
でもだからこそアンザハンの言葉が沁みるんですよね。
ルルが当たり前に無茶をするのがもどかしくて不機嫌みたいな態度を取ってしまったし、上手く言葉を伝えられないしとこちらも未成熟だけれど、それでもそのあたたかな思いやりは伝わってくるのです。物語の中でありながら上手く言語化できてないこの感じ、人間くささが感じられてこういうのもまた素敵だなぁと思いました。
「あたりまえに、ルルは、ルルを、安全に、大切に、扱わなきゃいけないの」
まだきっとルルには分からない。それでもこれは、大切な言葉だと思いました。
そんなアンザハンの優しさを育て上げるのにガンザが一役買っているというのがまた面白いというか、考えさせられるところ。
まずアンザハンの育て親のような村の人達がいい大人だったしね……!!! この物語、マジで名もなきキャラクターにも芯が通ってる。このあたり名言だらけで全部ここにも書きたいんだけど、そこまでやるとキリがないのでカット😭 でも本当に、大好きな言葉たちです。
ラアダンテがアンザハンのお母さんを殺したことは許されることじゃないし、ガンザもアンザハンにルルを殺すよう指示していたのは本当に良くないことなんだけど、何だろうね……憎しみだけでいっぱいにはできないんだよな、どっちも……。
そもそもこの物語、ものすごく優しさが光るお話なんですよね……!!!
例えば差別を抱えずルルと友達になるデルリナとアーケィティナ。ルルが自分が岬の魔女だと言っても笑ったりしないし、違ったとしても笑わない。ルルを下働きとして扱った大人達は何してたのって言うし、そんな中で努力してきたルルを尊敬する。ルルが旅立てば、彼女の無事を心から願う。
例えばルルが旅の道中を共にした人々。鐘が鳴り、こんな機会でもないと旅になんか出れないと言う。でもそろそろ移動が大変だから帰ろうかなぁと言う人がいる。それもいいんじゃないかと肯定する。畑が気になるなら、畑が大事って分かって良かったじゃないかと肯定する。笑われてもいいじゃないかと肯定する。ルルを狙う刺客をみんなでやっつけて(笑)、都へ向かうルルの背中を押してくれる。
例えばロアデル先輩。最初は単純なお嬢様でかわいいなぁ面白い人だなぁと思っていたけれど(笑)、まだ差別意識の根強いあの学園の生徒でありながらルルに声をかけてくれている。
「後輩が困っているのに、手を貸さない先輩などクソでしょうよ!」
……なんて言ってくれる(笑)。何て格好いいんだろう。そして、ルルが人を殺そうとしたのを毅然と止めてくれた。
例えばジャラクサ。
「別に親のことなんか、特に理由があってもなくても、子供は大っ嫌いでかまわないんですよ」
リッタにそんな風に、言ってくれる。私はガンザもラアダンテも憎み切れないけれど、リッタは憎んだっていいんだよと心から思う。
鐘が鳴ったことで自分こそが岬の者だと言う人々が都に押し寄せるワケですが、そのことひとつ取ってもこの物語は優しい。
さっき書いた、ルルが旅の途中同行した人達もそうです。一応自分が岬の者かもしれないからと都に向かうワケですが、本当はそんな機会でもなければ故郷を出て今まで見たことない景色を見て、今までしたことのない経験をしてみたいから。岬だ頂だというのは、あくまで自分の世界を広げる為の言い訳、なんですよね(笑)。
それで都まで行けなくたっていいんだよと言う人もいるし、都まで行って岬の者じゃなかったとしてもたくさんいろんな経験ができたからいいんだと。
ルルの友達は、ルルが岬の魔女じゃなくたって笑わないよと言ってくれていた(それもルルのいない、ルルの陰口を誘う学友の前で‼︎)。
ロアデル先輩はそのあたりについても素敵でしたよね。
「あたくしが岬の魔女でないとしても、そうだと信じていることを、あなたは笑うの?」
「誰にしろ、岬の者に選ばれたときのためにやってきた努力も研鑽も、たとえ選ばれなくても、なくならないということよ。あなたが努力していたことは知っているわ。あたくしも努力してきた。だから、いいのよ」
努力を描いた作品が本当に好きなのでこういうの言ってくれるのうれしいー!!!(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
実際に岬の魔女であるのはルルだけれど、そうじゃない、それでいて岬の者じゃない人達をせせら笑うことをしないんですよね、この作品自体が。努力してきたのなら選ばれなくたってその努力を誰も否定する権利なんてないし、自分が岬の者……かもしれないという言い分で故郷を出た人達には、故郷にも都にも門は開いている。
リッタ姫も優しいんですよね。たくさんの人が我こそは岬の者だと詰めかけて来て、その中にいないと首を横にふることに申し訳なさを感じている。本人も苦労しているとはいえ箱入りお嬢様だろうに、そんなところまで想像を働かせられる。もちろんその大勢の中には良くない人もいるだろうから、そのあたりはジャラクサがいい感じに調整してくれそうですね(笑)。
それから、この作品はおとぎ話のような表現が好きでした。
星が一つ欲しいな。 ルルの髪につけてあげたい。きっとよく似合うだろう。 あの赤いのがいいな。 一つ。二つ。いや、全部。
私が海外の児童文学っぽさを感じたのはここにもあるような気がします。どこか詩のようなんです。
飾らない言葉で、でもキラキラしたものを手渡してくれる。そんな言葉の魔法に魅了されました。
にしてもルルの中に入った良くない何かはリートリートだったんですね。……お恥ずかしながらまったく浮かばなかった……www
ルルが相当な寿命を削られたのが心配なんだけど(ロアデル先輩が生きてくれたのは本当に良かったんだけど😭)、そして岬の者と頂の者を最後は食べてしまうというのは恐ろしいんだけど、私は今のところあんまりリートリートに良くないものを感じないんですよね……。
何て言えばいいんでしょう、あんまり悪意を感じないっていうか。いや、ルルの寿命を喰らった時に浮かべた笑みは醜悪と言っても過言ではないし本当に油断はできないんだけど、その後“彼女”の記憶を見せてくれたり、それによってルルがどのように思ったかで何かを思考しているようだったり。人外ならではのむごい一面はあるものの、それだけではない知性体的な何かを感じるというか。。。「次代が現れた岬の者と頂の者は寿命を終えてから食べてはどうでしょうか」というルルの提案も、どういう意図があったかは分からないけれど受け入れていますしね。
にしてもルル、その提案頭良過ぎる……!!!
そんなワケで読んで参りました、『岬の魔女と頂の姫』!
ライト文芸あたりの作家さん方がざわついておられたのでwww、恐らくその先生方にとってこの作者さんは巨匠なんだろうな……と思いつつ、恥ずかしながら今回この先生の作品を初めて読ませてもらいました。そしたら何て面白さ!!!
10代後半の女の子が恋に友情に使命にと努力・葛藤し、ワクワクするファンタジーで彩ってくれる私にとって理想の作品がまた増えました✨
ルルは頂の者・リッタ姫と出会えたことで、どうやら忙しくも生き甲斐のある日々を送っているようですね。ルルがどんな風に過ごしていってるのか、是非見てみたいです。
他にも、結局あの学校は途中退学ってことになるの⁉︎ とか、ロアデル先輩とはその後会えたの⁉︎ 友達にもまた再会してほしいよ⁉⁉ とか、気になることがいっぱいです。死者が見えなくなったルルがその力を本当に失ったのかも気になるし(もちろんルルとしてはいいことなんだけど……ファンタジー好きとしてはルルのあの力やそれによる考え方も好きだったので惜しいところもあったり……‼︎‼︎www)、ルルとリッタがどんな風に絆を築いていくのかももちろん見たい。アンザハンがまたルルへの気持ちを恋だって気が付いてないのも愛おしいですよね……‼︎ この2人の今後だって見届けたい。
さっきは「もし今後が出たら」なんて控えめに書きましたが、絶対続き欲しいですよろしくお願いします(真顔)。←
そんなワケで、続き出ますように……!!!(笑)
余談。
「治癒魔法かけられるとめっちゃ痛い」っての、深くていいわ〜(笑)。

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