『恋した人は、妹の代わりに死んでくれと言った。 妹と結婚した片思い相手がなぜ今さら私のもとに?と思ったら』(永野水貴/TOブックス)

TOブックス

鞭展開度:★★★★☆
忘れられない初恋度:★★★★★
鞘の脱げ度:★★☆☆☆

【あらすじ】
妹の代わりに、毒に満ちた異界の番人となった元令嬢・ウィステリア。
ある日、空から初恋の人に瓜二つの男が現れる。名はロイド。
なんと彼女の初恋の人の息子だった! 
王女へ求婚の証に、ウィステリアの相棒・言葉を解する聖剣【サルティス】を求めて来たという。
止まった時の中で生き延びてきた彼女は、独自の魔法でロイドを倒し、元の世界に帰れと諭すが――
「あなたを倒すため、弟子にしていただく!」と、説得も虚しく居座られることに。
見る間に魔法を習得する弟子に翻弄されつつ、一方的に始まった師弟関係。
果たして止まったままの彼女の時間は再び動き出すのか――? 
孤独な非戦闘系元令嬢×天才肌の傲慢系貴公子の師弟恋愛ファンタジー!
書き下ろし短編「高い、小さい」&キャラクター設定集収録!

 

『白竜の花嫁』の作者さんの待望の新作。結論から言うとめちゃくちゃ面白かったです!!!

永野先生節炸裂の理不尽極まりない心臓滅多刺し展開からの面白さがさらにアップグレードされた笑いや惹き込まれる世界観そしてやっぱりシリアスなのね〜〜〜〜〜な緩急。……何かもう……永野作品という悪い男に弄ばれてる感がすんごい……ゼェハァ_:(´ཀ`」 ∠):

待ち望んでた永野先生節がありつつ新たな世界を見せてくれました。恋愛もすんごくよかったなぁ……!!!

 

 

以下ネタバレあり↓

 

 

いやもう序章から永野先生節炸裂。

 

うん知ってたよ。永野先生が書いててタイトルがコレなんだからきっついのは知ってたよ。

しかしいざ目の当たりにすると想像以上のシリアスでブン殴ってくるのが永野水貴作品。

……つ、辛ェ……でもコレを待ってたんだ……‼︎‼︎‼︎ _:(´ཀ`」 ∠):

などと鞭展開大好き民は吐血しながらハァハァするという完全にヤバイ薬やってる状態に陥っていくワケです。コレが末路よ。

 

永野先生の文章は特に心がどのように挫けてどのような思考になって体にどんな症状が出るかまでをこっちの心を抉るほど丁寧に描写するんだよなぁ……_:(´ཀ`」 ∠):

 

そんなワケでウィステリア視点の第1章はとにかく辛かった。

自分に優しくしてくれるけれど、血の繋がっていない家族。
魔女や養い子と周囲から謗られ。

そんな中で自分の心を掬い上げてくれたブライトが何よりも心の支えになるのは自然なことなんだよなぁ。。。けれどそのブライトは妹のロザリーが好きというもう頭抱え案件よ。

 

確かにロザリーがすごくかわいいんよ!!!(泣)

お姉さんを当たり前に慕っていて本当に大好きなんだろうなって伝わってくるし、ブライトへの態度が本当にかわいらしくてそりゃブライトも好きになるよなって納得いってしまう。

姉の為に本気で怒れるロザリーは本当にかわいかった。

 

……で、このあたりで思ったのが、ウィステリアよりロザリーの方が主人公感あるよなと。

令嬢とは思えない溌剌としたいい子で、明るくて、10代の少女らしいかわいらしさがあって、そうして自然体のままでブライトを惹きつける。

 

しかしこれがウィステリアの立場から描かれているのが『恋した人は』の魅力的なところ。

 

ロザリーのような主人公にばかり慣れてきた私は、ウィステリアのブライトを諦められず密かに努力と研鑽を続ける姿や、ブライトがロザリーの前では自分が知らない顔をすると知った時のぶわりと溢れる醜い感情の嵐に胸を痛めつれられながらも新鮮さと面白さを感じずにはいられなかった………………………………………………………………。

本当にこれだけはウィステリアに言っておきたい。ツイッターで見かけた文言なんだけど本当に性格悪い人は自分の性格の悪さで悩んだりしないよ、と。

 

「妹がこのまま番人になればブライトは……」と思ってしまったウィステリア。

「私の方が好きなのに」と叫びたいほどの嫉妬に苦しむウィステリア。

そんな自分が醜くて許せないウィステリア。

醜い人間らしい感情が芽生え、人間なら当たり前の感情に苦しみ、それらを恥じる真っ当な人間でもあるウィステリアは、それこそ本当に「人間」としてそこに息づいているのが感じられました。……スゴイですよね、醜いだけで終わらせずお綺麗なだけにもしないこの容赦ない力量(笑)。

 

さてこっからは結構口悪くなると思うから気を付けてね〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜(いい笑顔)。

 

無論作品に対する悪口は一切ございませんとも( ̄▽ ̄)

あと『恋した人は』はなろうでかなり先まで読めるけど私はそちらをまったく読んでいなくてまったく事情を知りません。後々続き読んで「すいませんでしたァァァァ!!!!!!」とスライディング土下座することになるかもしれんこともここに記しておく👍 「彼ら」目線がこの先たくさん読めたらまた考え変わるかもだし。

 

先程「ロザリーの方が主人公っぽいよね」という話をしたワケなんだけど、この作品の主人公はそんな“主人公っぽい”ロザリーではなくウィステリア。TLでよく「咬ませ犬」なんて言われるポジションなワケで。

 

そんなウィステリア目線で見ると、ロザリーが番人に選ばれてからのロザリーとブライトの恋愛模様を鼻で笑ってる自分がいたんだよね。もうね、笑止よ。

「愛してるんだ」のシーンなんてロザリーが主人公ならすっごく胸がじんとなったんだろうけどなぁ……!!!

どシリアス乙女ゲーマーでもある私はこんな感じのシーンに何度も涙してきていた。こういうシーン大好きって思ってた。

 

でもコレがその後ウィステリアの心や命を踏み躙って手に入れる幸せへの序章だと思うとめちゃくちゃ冷めるんですよね。

あとコレが乙女ゲームの主人公だったら自分でも何かやれないか考えて行動起こすかんな!!!!ロザリーお前自分では打ちひしがれるだけで何もやってねぇじゃねぇかそうだったなお前は主人公じゃないんだもんな!!!!!(※乙女ゲームヒロイン大好き民の叫び)

好きな類のハズのシーンにここまで激冷めできる。あまりにも新鮮な体験。新たな視界を手に入れられたワックワク感たるやよ💪💪💪

 

このあたりからブライトにもムカムカしてきてましたね〜(いい笑顔)。

ロザリーとウィステリアの命を天秤にかける行為そのものがもう身勝手過ぎてこのあたりめちゃくちゃ腹立ちながら読んでました。人間はそういうもんなんだと頭で分かってても腹が立つ。

「ロザリーの代わりに行ってくれ」ってことについて謝るのももう腹立つ。謝るなよ。謝るんなら最初からやるなよ。

 

この時のウィステリアが、ロザリーを犠牲にしたところで自分に幸せなどない(ロザリーを失うからではなくて現実的に……というのがまた……)と分かってしまっているところが本当に……_:(´ཀ`」 ∠):

聡明故にそういうことが分かってしまうのが本当にやるせない。ブライトからの「死んでくれ」は確かに何よりも大きかったけれど、もしかしたらそれがなくても《未明の地》に行く決断を望まないまましていたのではないかとうっすら思いました。

養母の「あなたが代わりに」の時点で運命は決まっていたのかもしれない。そして養母許さないからな👍

養父がそれをちゃんと止めてくれる人だったのはまだマシな状況だったかな。。。

 

そして個人的には、ウィステリアの「1度だけ抱きしめて」は、本人はそれで自己嫌悪に陥るものの私はよかったんじゃないかなーと思ってます。

「最後に美しい思い出を……」なんてそんな理由じゃない。小さな呪いを植えつけられたからだ。ささやかな復讐となっているからだ。

「死ね」と言われたのだから、その程度やってもいいと思う。私はね。このあたりいろんな人の意見が聞けたら楽しそうだな。

 

……あーーーーー待ってくれ呪詛を吐き足りねぇ!!!!皆様もう少し付き合ってくれ!!!!!

 

私がブライトに1番、いちっっっっっばんムカついてるのはウィステリアを死なせておきながら(実際に生きているけれども)自分はのうのうと好きな女の結婚してることなんだよ💢💢💢💢💢💢💢

何自分は好きな女を手に入れてんだよ。何子ども3人も作ってんだよ。

 

そんな呪詛が!!!! 止まらない!!!!!

結果としてロイドが生まれてのちにウィステリアと出会うことになるとか今そんな話はしてねぇのよ💢💢💢

そこはせめて!!!! ロザリーとは結ばれるなよ!!!!! それがけじめだろ!!!!!!

『満月をさがして』某2人を見てるからそんな発想になっている我である。分かった人はエア握手しようか。←

 

悪口タイム終了でございます。お付き合いいただきありがとうございますm(_ _)m

 

 

めちゃくちゃ呪詛吐きまくったんだけどこっからが楽しくなるんだよな〜。……何故ならみんなお待ちかねサルティスが出てくるから!!www

『十二国記』が「ねずみが出るまで耐えろ」文学ならこちらは「剣が出てくるまで耐えろ」文学。……うーん文面だけだとあまりにも意味不明(※『十二国記』は0巻しか読めていない)。

 

でも本当にこのサルティスに!!!!!ウィステリアも私もどれだけ救われたことか!!!!!!(泣)

しかも実年齢43歳になったウィステリアがサルティスにすっかり感化されて、めちゃくちゃ面白くなっておられる……www 男口調カッコイイ面白い(。-_-。)

あとサルティス出てきてから割とすぐに「あ、じゃあ表紙イラストのアレはとんでもない破廉恥シーンなんか」と分かるというwww いや知らん知らん何も思わんてwwww

 

サルティスめっちゃ面白いからこれはアニメ化してほしいよなー( ̄▽ ̄) 鞘脱がされそうになった時の乙女声が気になり過ぎるwww(まさかのそれ目的)

『恋した人は』の推しキャラは今んところウィステリア・サルティスコンビだなー。掛け合いがめっちゃ楽しい(`・ω・´)

 

あと世界観とか登場人物の髪や瞳、服の色彩が本当に豊かだからアニメで見たい。絶対想像を絶する美しさだよ、これ。

 

そしてそしての声云々といえば突如《未明の地》に現れたブライトに瓜二つの青年ロイド。いや多分声優さん同じになるよねっていう。いや敢えて違う人同士で似せるとかもあるかも……🤔

 

それはさておき(笑)、彼がウィステリアに襲いかかってきた時の第一印象はとっても傲慢、だったかねぇ。。。

魔女だの化け物だの言ってくれちゃってこの野郎!!! とは思ったものの(笑)、彼には彼なりの事情があったし、すぐに思い込みから切り替えて自分なりのウィステリア像を深掘りしていくところは好感が持てました。

若造感がありつつ大物感もありつつ、というか。

 

そして何でしょうねぇ、ウィステリアのように急激に心を叩き壊されるワケではないけれど、どこかやり切れない、倦んだ何か、近くにあるものすら遠くのものと感じてしまうあの思い。

決定的な何かがあってすべてが覆るほどの大事ではない。けれどいつもそこにあって、日々何かが足りなくなるような。……うーん、表現ムズイ(笑)

 

ロイドのそうした思いは、どうも他人にはほとんど理解できないものなのかも……と思ってしまうなぁ。何というか、本人もイマイチ捉え切れてなくて、言葉にすればするほど逆に空虚になってしまいそう。

 

無論ロイドはそれを口になど出していないワケだけど、そんな彼を引っ張り上げてくれたのが師匠となったウィステリア。

ウィステリアのえらいなって思うところが、ロイドを「ブライト」と呼び間違えないところなんだよなぁ。最初のはさすがにノーカンで!www

あまりにもブライトと外見が似てて苦しめられるけれど、同一視することはなかったんじゃないかな、というのが1巻読んでての印象。自分でそう言い聞かせてたってのもあると思うけど、それでも立派だと思う。

今後重ねてしまわない保障はまだできないのでそうなる可能性も考えておきつつ……。

 

あとロイドへの教え方見ててこの人本当に頭いい人じゃん……とめちゃくちゃ感心してた(笑)

他人に教える経験はほとんどなさそうなのに、ロイドへの教え方がめちゃくちゃ分かりやすくて丁寧。ベンジャミン目線の番外編でも、すごく勉強熱心だったし。

それに、ウィステリアがそういった研究者としての視点を活かしつつ、《未明の地》のことを理解しようとしてきたからこその結果なんだよなぁ。努力の結晶よ。

そしてそんなウィステリアを守ってくれて、会話してくれるサルティスがいたからこその結果でもあり。そう考えるとこの仮主従、尚更推せる……_:(´ཀ`」 ∠):

 

話がめっちゃ逸れたけど(笑)、落ちていくロイドをウィステリアが引っ張り上げるという構図がめちゃくちゃ効いてたよなぁ……!!!

 

扉絵そういうことかーーーーーッてめっちゃスッキリ。あとサルティスも落下してて「サルティスーーーーー!!!!!!」てなってたwww

もうあまりにもニクイ演出で膝打ちましたよ(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾

師弟の恋愛モノと聞いてはいたものの、さすがに1巻じゃあお互い恋とかないんじゃないかなぁ……何かロイドはアイリーン王女に求婚しとるしな……とか思ってたらコレよ。待ってました純然たるときめき成分。

 

「一人で落ちようとするな。――ちゃんと、掴んでいるから」

 

ヤベェ私まで惚れてまう(真顔)。

ここでのロイドの、今まで感じたことのなかった気持ちが花開いていく様は惹き込まれました。

わたくし、「恋」とか「好き」とか「愛」とかって直接的な言葉を使わずにその気持ちを表現する文章ガチクソに好きでして(このあたり『らくだい魔女』の影響だったりする)。

ロイドはコレまだ無自覚なんだよねー、それが何か分かってないんだよねー……と思えば思うほどニマニマしてしまう(。-_-。) これは文字通り「落ち」ましたねと(`・ω・´)

 

実は(も何もそうに決まってるんだけど)初心なウィステリアがこれまたかわいいんよなぁ……!!!

魔女とか言われてたウィステリアだけど違うんです、魔性なだけなんですキャー(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾

 

ロイドの採寸のところはめちゃくちゃ笑ったわwwww もーウィステリアったらwwwww

ベンジャミンの番外編だとどうやら研究所の人にはおモテになっていたようだし……(ニヤニヤ)。あとベンジャミン目線の番外編を入れてくるところお目が高い👍(何様)

 

ベンジャミンが実はウィステリアのこと好きだったと分かった時は少し救われる思いがしたなぁ。。。

「ウィステリアの死」に対して純粋な悲しみを持ってくれる誰かが1人いるだけでも救われると思う。家族やブライトはそうとは言えないから。

例え本人にそれが届いていなくても、必ず意味があると思う。

 

そして魔性でありながら初心であるウィステリアに今後もニヤニヤさせられたい(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾

 

 

2巻発売がもう既に決まっているので(神か(真顔))、「続き出るかなぁ……出てくれるかなぁぁぁ……(泣)」という不安に駆られることもなく安心して冬を待つのみであります。無論こちらでもさらに続きが出る為の努力はしていく所存(`・ω・´)

ロイドとウィステリアの今後の恋模様が楽しみでありつつ、しかしどう考えても一筋縄ではいかない恋だよなと気を引き締めていかないとなんだよなぁ。

性格の悪いわたくしめはウィステリアの心と命を踏み躙って得たルイニング公爵夫妻の幸せがロイドとウィステリアの出会いを機に崩れる瞬間が来るのではないかとワクワクしております(暗黒微笑)。

他人を踏み躙った上にある幸せなんて必ず瓦解するのさなどとカッコつけてみる(`・ω・´) それ故の厄介な出来事もいろいろと巻き起こりそうだけどね( ̄▽ ̄)

 

そんな油断できない緊張感と堪え切れないワクワク感を胸にこうして書かせてもらいました。数時間前に読み終わったやつだからいっぱい書いたなぁ!!!www

あと美麗な挿絵がたくさんあってめっちゃうれしかった。1番好きなのはウィステリアが半眼でサルティスを吊るしてる(?)やつです。でも書き下ろしのやつも好きです。身長差万歳。

それと章ごとにタイトル欲しい民なのでそれがあって尚且つ章の中でも話が分割されてそれぞれにタイトルあったのもめちゃくちゃ助かった。読むモチベーションになるしあらすじだけ見て思いを巡らせるのも楽しい(。-_-。)

ウィステリアの《家》だとか服をどうやって作るのかといった《未明の地》での生活描写がこれまた好きでした。ワクワクだぁ✨

 

『白竜の花嫁』も大好きだったけど『恋した人は』も無事大好きになりました。早く冬よ来い〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾

 

余談。
ベンジャミンて出てきて「フランクリンか!?!?!?」て思ってたら全然違った(真顔)。

 

2巻感想はこちら

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