198.『流浪の王女は神獣を駆る』(喜咲冬子/PHP文芸文庫)

PHP文芸文庫

鞭展開度:★★★★☆
差別と共存:★★★★★
あなたといたい:★★★★★

【あらすじ】
 これ以上、なにも奪わせてなるものか。
 中原に覇を唱える大国「枢」の第八王女・蘇璃は、父王の即位四十年を祝う宴の直前、弟と共に母から「逃亡」を指示される。訳も分からず蘇璃が城を出た直後、紫色の雷が閃き、威容を誇った王城が、跡形もなく消え失せて――。
 母の遺命に従い辺境に向かった蘇璃が出逢ったのは、記憶をなくした異民族の少年・イソル。献身的な侍従らと、高度な薬の知識を持つイソルに支えられ、ひとまずの安寧を得た蘇璃だが、やがて彼女のもとに、雷を逃れた大将軍・魏剛の魔の手が迫る。
 果たしてイソルは何者か。なぜ母は、雷を予見できたのか。叔父・魏剛の野望とは。そしてそもそも、あの雷の正体は……。数多の謎に囲まれながら、次第にイソルと惹かれ合い、民の希望を背負う王女へと成長していく王女の数奇な運命を描く、疾風怒濤の中華ロマンスファンタジー。

……この世にまたひとつ……大作が生まれてしまった……‼︎‼︎

と、今回も震えるぐらいたっぷりの読み応えと面白さにページをめくる手が止まりませんでした✨

喜咲先生って年に2冊は出してる印象なんだけどこのペースで毎度このハイクオリティを叩き出してるのスゴ過ぎん?(真顔)

 

以下ネタバレあり↓

 

 

 

 

 

本当に文字通り王城がなくなりました(真顔)。

喜咲先生も公式Xでそう言ってたけど本当に思ってた以上にちゃんと王城が消え失せてビビり散らかしたのがこの私です。マジで頭真っ白になる_:(´ཀ`」 ∠):

 

でもこの王女が城を追われて葛藤がありつつも王族として強くあろうとする物語好き過ぎるんだよな〜〜〜〜〜!!!!!!www

そんなワケで、今回の蘇璃も大好きでした。帝王学的なものをきちんと学んできているワケ……ではなさそうだけれど(でも緋虎あたりがそのあたりの知識も教えてた可能性あるか)、父王の言葉に耳を傾け緋虎の教えを胸に刻み王族として唯一残った王子である鹿治を守らねばと奮起し母が異民族だったからこそ自分もまた異民族を差別せず手を取り合う努力を怠らない。喜咲作品の主人公のなんとまぶしいことか。今回も惚れ惚れせずにはいられませんでした。

 

そしてイソルもとても好きなキャラクターでした‼︎

俗世離れしたような不思議な雰囲気がありつつ、その素朴な優しさや聡明さに魅力を感じずにはいられません。……いやマジで喜咲作品のヒーローも好き過ぎるんだな、私……‼︎‼︎‼︎

 

そんなワケで、蘇璃とイソルの関係性が好きだったし、李のところのやり取りがもう……かわいかったー……!!!/////

それでいて、とある喜咲作品を思い出して懐かしい気持ちにもなりました。何の作品かは伏せておきましょう(笑)。ヒントは、このブログに掲載している作品のどれか、です。

喜咲作品マジでこういうキュンとくるやり取りもいいんですよね……(。-_-。) 本筋は国を揺るがす大事なのですが、だからこそその間にあるこういうやり取りに癒される💕

 

そう、だからこの物語も中心となるのは恋愛ではなく、蘇璃が民の希望として何を成し遂げるのか、なのです。

けれど華人と林海内の異民族の溝は深い。林海の民は華人にむごく奪われ、憎悪がしっかりと焼きついている。

そしてそれを蘇璃もまた味わう、というのがとても印象的でした。ただしその相手は林海内の異民族ではなく、親類であるハズの魏剛。……男も食料も何もかも奪い、女達は乱暴をされ捨て置かれる。自分の命も鹿治の命もどうでもいい。いや死んでおけと言わんばかり。こんなの憎むに決まってます。それに丹王に燕々の死体が蹴られた時も「自分に榮徹を落とす力があれば殺してやれるのに」と思わずにはいられなかった。自分の命をなげうってでも、こいつを殺してやりたい。それほどの思いまで味わっている。

こういう、きちんと憎むことができる少女というのがまたいいんだよなぁ。。。憎悪するのもめっちゃ理解できるしね‼‼

 

自分が蛾山砦に着いたらインチェを落として、とイソルに頼むのも覚悟ガン決まってて好きでした。自分の命を有益に使いたい。丹王と刺し違えると。

もちろん、この決断は最後まで読むとベストな決断ではなかったと思うのですが……。でも、間違っていたとしても王族としての覚悟が決まってるところにやっぱり惹かれずにはいられないんですよね。

そして無意味な死にむなしさを感じずにはいられないのもまた生々しい。

 

そんな無意味な死を招きかねなかったのがイソルなワケですが、憎しみってのがイソルにもあるんですよね。華人に。そして蘇璃に。

記憶を取り戻したシーンで本当に話が通じなくて絶望しましたよね……_:(´ཀ`」 ∠): でもそれだけ憎むのものちに死ぬほど分かる。典資曹は本物の地獄だった。ホラン達が俎柵の兵士全員を殺したのも理解できてしまう。

 

ていうか天の裁きだと思われていたあの雷がそうではなく人が憎しみによって起こしていたものだったってのがまた……うわぁ……!!!

しかもそれが魏剛が意図したものだったってのがまた……うわぁぁぁぁぁ……!!!!!

もうね、真相が分かれば分かるほど頭抱えっ放しですよwww

麓姫が何故王城に戻ったのかといえば皆を避難させる為ではなく、インチェを落とさんとするイソルの妹にここに魏剛はいないから今はまだだめだと伝えようとしていたというのがまた大納得。

 

 

読み始めてみて今回やらかしそうな奴が私の中では白羽と鹿治だったのですが、白羽は意外と頼りになりましたね……‼︎‼︎ 最初こそ蛮と林海の民を罵っていましたが、だんだんと彼らと馴染んでいってたし、蘇璃にとって頼りになる兵士でした。

鹿治は予想通りやってくれたね〜〜〜〜〜www

もっと対話していれば、と蘇璃は悔いていたけれど、こちらの話に耳を傾けずに頑なな態度の彼との対話を避けるようになってしまうのは正直分かります。疲弊しますもんね。。。

私にとっては母親に依存しておきながら異民族の痛みは無視し自分にとって都合のいいことだけを信じる愚者ですが、ずっと家族として、それこそたった3人だけの家族として過ごしてきた蘇璃からすれば、彼を喪った痛みは相当なものでしょう。馬に引きずられる彼を蘇璃だけでなく白羽も追いかけていました。白羽にとっても鹿治は捨て置けない存在だったのでしょう。それは決して、鹿治がただ1人の王子だったからではなく。そう思うとやり切れない思いがあります。

 

それから緋虎の死がまた辛かった。

ここまで本当に頼もしく蘇璃を支え、彼女に大事なことを教えてくれていた存在なだけに、そして死に方も死に方だけに本当に辛かった。……喜咲作品にやはり生首はつきものなのね……_:(´ཀ`) ∠):

麓姫の命で蘇璃と鹿治を王城から連れ出したということは、麓姫に対しても差別なく誠実に仕えていたんだろうことは察せるところで、そういうところも含めて本当に格好いい人でした。

 

もちろん小獅も大好きです! これからも蘇璃達を支えつつ、彼自身の幸せも掴んでいけたらいいな。もちろんそれは、蘇璃とイソル、彼女達の仲間達全員に思っているのですが!www

 

 

他に印象的だったシーンとしては、ボルドがイソルを巻き込んででもインチェを落とさんとするシーン。そこでの蘇璃とイソルのやり取りがまたいいのよ……!!!✨😭✨

立場からも解放されて、2人で死ねるなら、鳥になれるなら、ってのが美しいし、これから死ぬのに喜びで満たされるのもまた強く感情移入できました。

 

でも2人は生き延びる。

 

つい先ほどまで、あれほど美しく見えていた死が、触れ合った途端に色褪せた。

もうこの文章が好き過ぎてさぁ……!!! やっぱり生きることに希望や喜びがある方が断然美しい。

 

 

そんな2人を守ってくれた雷獣──榮徹ってやつが結構かわいいという(笑)。

めっちゃ蘇璃のこと助けてくれるし言うこと聞いてくれるし、どころかこの魏剛との戦いの間しかいないと思っていたらこれからもずっと一緒にいてくれそうですね!?!?www

まさかのかわいい枠に収まってくれました、榮徹が。。。( ̄▽ ̄)

器に興味を示すワケではないってのがまた興味深いし、器の伴侶を守るってことはもしやイソルと榮徹、好きになるタイプが同じ……?www あとは蘇璃が榮徹を私利私欲に使わないことを理解して認めていそうな感じなんですかね。真偽はどうあれ、榮徹に対する蘇璃の接し方がとても好きでした。

 

あと丹王お前永安崗にいたんかいwwwwwwwwwwww

その後のみんな見てて「ん、あれ??? 私の思い違いかな???」てなったけど何度見ても「丹王」って書いてあるというwwwww

まさかの「めっちゃプロポーズしてくるだけの無害な人」になっててビックリwww 確かに燕々の死体を蹴ったことはマジで許し難しなんだけど──蘇璃を陵辱するつもりだったのもマジで許せねぇんだけど──一応、蘇璃の大切な人達を殺してはいない、んだよね。あくまで結果論でしかないんだけど。

いやそれがこんな面白枠になるとは……喜咲作品には何度も驚かされてきたけどこれはまったく別方向のビックリ過ぎたわ……www そしてお前は仕掛け人じゃないんかーいwwww

 

この最後のシーンは蘇璃がまたかわいいんですよね!www

李をいつイソルに渡そうかとソワソワしてて、でも踏み出せなくて3つ目の李になっていたという……(笑)。

ホランが今ではすっかり仲間になっているのも素敵です。

 

それから、これほど重く過酷な物語が、最後は蘇璃と一緒にあははと笑えるような、カラリとした風が吹き抜けていくような終わり方をしたことが、読み始めた頃を思うと意外でありでもストンと腑に落ちる気持ちでもあり。蘇璃と一緒に満たされた気持ちになるようでした。

蘇璃とイソルが、手を取り合えて良かった。この永安崗が、たくさんの民族が手を取り合える場所になれて良かった。そんな思いで胸がいっぱいです。

本当に、ありがとう‼︎‼︎

 

余談。
イソルが榮徹に乗ると具合悪いの、乗り物酔い的なことなのかな……?www

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